「勝手に出て行った者に、なんで生活費を支払わなければならないの?」 そんな考えのあなたへ。
(2013/10/11)>> 一覧に戻る
「妻は勝手に出て行ったのだから、生活費は支払わない。」
よく聞く言葉です。私からお尋ねします。
「あなたとは一緒に暮らせない。別居させていただきます。」
あなたは、「はい、わかりました。」と同意しますか?
同意できない,認められない,イコール「勝手に…」ではありませんか。
夫婦は同居する義務があり、互いに生活を保持するよう求められます。
生活費の支払い,これを実務上、『婚姻費用の分担』といいますが、婚姻関係が継続する限り、基礎収入が多い配偶者が、少ない配偶者に対して不足した生活費,すなわち、婚姻費用の支払いをするのです。
さて、勝手に妻に別居された夫は、何を希望しているのでしょうか。
別居は、婚姻関係が正常を欠く大きな要因です。ほとんどの場合、別居を敢行した妻は、夫に対する離婚を希望しているでしょう。
ここで夫が、妻が求める離婚に応じれば、婚姻関係は解消され、従って、もはや生活費を支払う必要はありません。
つまり、「勝手に出て行った…」と不満をいう夫であるあなたは、離婚には応じていないのです。
離婚したくない,それを言うあなたは、妻を愛しているのでしょうか。本当に愛しているなら、奥さん,子どもさんの生活は心配ではないのでしょうか。
なんらかの理由,事情があって、ちょっとした行き違いで、妻がとっさに出て行ったと思うのならば、生活費を送り、あなたが家族を心配している姿を見せましょう。信頼を取り戻すことです。
もっとも、「勝手に出て行った…」と非難するほとんどのケースは、ただ妻が、夫である自分の意思を無視した,反旗を翻したこと自体が気にくわない心境から発せられる実態にあります。
このような夫の真意を理解せず、単に「勝手に出て行った」から、妻への非難を繰り返す夫の主張を鵜呑みにして、間違った対応,すなわち、決して夫のためにならない対応をする弁護士が見受けられることは、誠に残念です。
別居に至った理由が、専ら又は主に婚姻費用の未払いを請求する側にある場合には、分担額は、現に監護している未成年の子の養育費部分は別として、請求する側(妻)の分については、支払いをしなくてよいという判例(東京高決昭和40年7月16日等)があります。勝手に出て行った妻が悪いと言い張る夫の側から、しばしばこの趣旨の判例が、引用されるのです。
しかし、裁判所(調停委員会および家事審判官)が取り上げることはまずありません。別居もしくは婚姻関係破綻の原因は、婚姻費用の調停・審判では、考慮しないのが実務であり、実際、審判書の中に記載されてもおります。
婚姻費用は、調停申立て等により、請求を受けたときから、支払いを命じられます。意味なく長く争っていては、支払額が加算されるだけです。
妻の態度,主張がどうしても納得できない方,どうかその不満を、生活費の支払いはしない――これがこうじて、離婚後の養育費を値切る――ような対応はしないでください。その不満は何なのか、どうすればよいのか、それをあなたと一緒に考え、解決していくのが弁護士であります。
妻が別居を敢行した,そのことが気にくわない,あるいは、どうしてよいかわからない夫であるあなた、ぜひ、きさらぎ法律事務所にお越しください。
万一にも、「生活ができなくなって帰ってくるだろう,しばらく放っておこう」などとお考えであれば、失うものが大きくなるだけです。
何もしないのに、現状が変わることはありません。配偶者が別居を敢行したらすぐ、弁護士に相談すべきです。