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調停は、必ず弁護士に依頼して臨みましょう

(2010/02/22)

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『調停』とは、裁判所での『話し合い』です。よく『互譲の精神』と言われることがあります。

 裁判官が主催しますが、実際は、民間から選ばれた2人の調停委員が、申立人・相手方から事情を聞いて間に入り、円満・妥当な解決案に至るよう手続を進めます。

 調停委員は、40歳以上の学識経験者であることが要件ですが、弁護士の他、家事調停委員の場合は、心理学・児童福祉学等の専攻者,民生委員,保護司など、民事調停委員の場合は、事案の性質に応じ、一級建築士,不動産鑑定士,医師,税理士などの職にあり、また、あった人が選任されております(調停委員)。

 さて、よく、「調停は自分で申立てできる」「弁護士に頼まなくてもよい」と言われることがあります。

 法律的な回答としては、そのとおりです。しかし、これは、調停の現実を無視した解決とはならない回答です。

 調停を経験した方から、しばしば、「調停委員は話を聞いてくれなかった」「無理だから、取下げしなさいと言われた」「『このとおりしなさい、認めて調停をまとめなさい』と言われた」などの不満を聞くことがあります。

 中には、「調停委員から怒られた」とか、「何を言っているのか全然わからなかった」ように述べられる方もおられます。

 実際、調停の途中から、きさらぎ法律事務所に相談に見えられて、代理人として事件受任をするケースは、少なくありません。

 上記のような経験をされ、調停成立等により、事件が解決した方は、「弁護士が入る前と入った後では、調停委員の対応が(良い方に)変わった」「自分の言いたいことが理解してもらえ、問題点がわかった」などの感想を述べられます。

 また、このまま自分一人で調停を続けていたら、このような結果(解決)にはならなかった」と、はっきり述べられる方が多いのです。

 弁護士の仕事の重要な部分に、『人に対して説明し、また説得する』ことがあると思っています。

 これは、事件の相手方、そして、自分の依頼者に対する場合に限らず、裁判所や、ときには社会・世間に対して、必要となることがあります。

 調停委員も、また人間です。確かに調停は、お互い譲り合うことが必要です。

 ただ、これを主催する調停委員会に、仲裁しやすいような事情・材料を提供しなければ、当事者の満足する方向には、事態は動きません。

 つまり、弁護士が代理人となって、調停委員会に対し、依頼者のため、説得をしなければなりません。

 調停委員をその気にさせることも肝要です。言葉は悪いですが、調停委員を持ち上げ、こちらの主張を提示し、これを他方に通すときにも、「調停委員のお陰である」(仮にそう思っていなくても!)と、態度で示しましょう。

 ただし、いかに人格・識見に優れると言っても、残念ながら、法律を理解していないか、おろそかにされているケースも、ないではありません。

 そのような場合は、依頼者の代理人として、弁護士が毅然と対応し、意見しなければなりません。これは、特に家事調停の場合、重要です。

 私自身も、調停委員と、『けんか』したことはあります。けんかは、その先を見据えているからできることであり、「調停委員を怒らせたら、不利になるのではないか」などと考える必要は、全くないのです。

 それから、民事調停委員を経験した立場、すなわち、主催する裁判所の側に立ってみますと、「この当事者は、説明と説得力が足りない」と感じることがあります。極端な場合、「何を言っているのかわからない」ケースも、ないではありません。

 もちろん、裁判所でありますから、法律的に、不可能・不相当な主張・要求を容れたり、調整・提案することはありません。弁護士調停委員であれば、法律からあまりにそれる、あるいは合致しない場合には、修正・導きをかけます。

 ただし、裁判所は、中立・公平な立場です。一方の当事者に教えることはできません。代弁者であり、援助者であるべきは、当事者の代理人弁護士です。

 調停が成立した場合、特に民事調停の場合は、ほとんど合意・約束されたとおり履行されるでしょう。別の機会に申しますが、裁判の判決は、現実的な解決になり得ないことが多いのです。

 調停は、互譲の精神で、当事者双方、ぎりぎりまで、実現可能性を考えて合意します。

 特に、弁護士が入っている場合は、決めたこと、合意したことは守らせる責務があり、履行可能性は高まります。

 最後に、弁護士が関与する重要な役割として、調停案の策定、すり合わせがあります。調停委員が、良い案を出してくれると思われたら、それは重大な勘違いです。

 調停は、ある程度、機が熟してきますと、当事者双方の説明・説得のうえ出された『調停案』をベースに、進行が計られるのです。

 それは、法律的・現実的・社会的な妥当性と、判断を要します。

 弁護士の関与のない調停は、決してお勧めいたしません。