事例 破産・債務整理 事例 不動産の問題

私は、アパートで一人暮らしをする70歳の女性です。私が約5年前に入居したこのアパートは、築30年くらいの木造建物ですが、最近家主さんは、この建物が老朽化したので取壊したい、次の契約は更新しないので、期間終了したら出て行って欲しいと言われました。私としては、急にそんなことを言われても、行く所もありませんし、引越しするにも手持金がありません。私はどうすればよいのでしょうか。

(2013/02/12)

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建物の賃貸借契約は、賃貸人において、契約期間が満了する6ヶ月より前に、「次の更新はしない」という通知を出さない限り、契約期間が経過しても、賃借人が、これまでとおり家賃を支払い、居住していれば、法律上、当然契約は更新されたものとみなされますので、もちろん、出て行く必要はありません。

 そして、重要なことは、この賃貸人(家主)の更新拒絶の通知は、いわゆる正当な事由があると認められなければならないという点にあります。

 この『正当事由』とは何かが、これまで幾多の裁判で争われてきたのですが、家主側の自己居住の必要性、老朽化、建替え、有効利用など、要は、事実認定の問題とはいえ、借地借家法第28条では、「賃貸人が、建物の明渡しの条件として、又は建物の明渡しと引換えに、賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して…」と明記し、いわゆる立退料の支払いが、正当事由を認定する際の重要な要件とされているのです。

 もちろん、事情によっては、立退料の支払いなく、明渡しをすべき場合もあるでしょうし、反対に、いくら立退料を支払っても、明渡しを認めない場合もあるのは事実です。

 特に、ご高齢で、転居先確保が困難な方については、容易に明渡しは認められるべきではありません。これは、国の社会政策、福祉の問題でもありますから、まずは、役所の福祉課に、本件事情をお話するとよいと思います。

 なお、契約期間が経過後、家主側が、家賃の支払いを拒んだ場合は、「供託」という方法を執る必要があります。

 いずれにしても、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
大切なことは、ご自身には落ち度がないのですから、決して慌てず、ご自分の立場を強く主張していくことです。