事例 会社・商取引に関する問題一覧

ご質問者は、請負業に従事する個人事業主と思われます。ご指摘の町工場から給与を受ける関係にあれば、従業員なので、仕事の成立とか、元請の対応に関わりなく、取り決めした月給(又は日給・時給)を支払われるべきことは当然です。

 ご質問者とA工場(町工場)とは、請負契約を締結したことになります。

 請負人は、請負った仕事を完成して、注文主に引渡すことにより、請負代金の請求ができます。完成さえすれば、約束した日時に、代金は支払われます。A工場と元請会社との関係は、問題になりません。支払日を約束していなかった場合には、完成して納品した段階で、A工場に対して請求できます。ご質問に対する回答は、このようになります。

 請負の場合、「そんな契約はしていない」とか、「人工の単価(配置した職人の日当額)が高い」など、注文主から指摘を受けて、トラブルになるケースが実に多いと思います。

 これは、確かに契約内容を書面にしていなかったことが原因ではあります。しかし、通常仕事を受注する前に、見積書を交付するでしょう。注文主として、この工事・仕事で幾らかかるのか、無関心ではいられないからです。

 後日のトラブル防止策として、当該見積りのとおりでよい、――仕事を発注する――のであれば、「このとおりでOKです」とか、「了解しました(承認します)」などのサインを注文主からもらい、折返しこの見積書をFAXなりされるよう、申し出ておくことが有効です。

 これすらできない事情があるときには、せめて業務日誌,日報の類に、「○○氏へ見積書No.・・・を送付,特段異議なく仕事受注」などのメモを残しておきましょう。裁判などでは、請負契約成立の有力な証拠になります。

ご質問の趣旨は、良質の商品を安売りすることは、消費者にとって利益であるから、不当廉売として禁止されるはずはないということだと思います。

 しかし、貴社とA社が、継続的に、『安売り合戦』を繰り返していれば、貴社らの市場に、同業他社が参入することは、事実上不可能となってしまうでしょう。

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)は、市場における公正かつ自由な競争を維持・促進することにより、消費者の利益を確保しつつ、経済の健全な発達を確保する目的を有します。

 従って、貴社とA社のみが、市場を独占する状態は、長い目でみた場合、消費者の利益とはなりません。公正な競争を確保する必要があるのです。

 不当廉売として問題となるのは、価格そのものと、その影響といわれております。
たとえば、仕入価格を大幅に下回る価格で、相当長期かつ、大量に販売を継続するのは問題です。

 また、その影響については、不当廉売ガイドラインによれば、同業他社が、当該市場で、実際に事業活動が困難となるまでに至らなくても、規模や態様・商品の数量・期間等を考えれば、将来そのような結果になる可能性が高い販売(安売り)は、ガイドラインに抵触するとされております。

 要は、ケースバイケースですが、鮮魚のように、その性質上、品質低下を避けるために、安くしてでも販売しなければならないか、販売行為に公益性があるかなど、正当性も考慮されることはいうまでもありません。

 質問に対する回答としては、とりあえず、消費者や同業他社の動向を知るため、試験的に行うのは良いとしても、長期にわたり大量にこれを続けることは、避けるべきということです。

 貴社も企業である以上、利益確保は必要であるところ、万一品質が低下して、昨今聞く産地偽装や、作り置きの疑いをかけられたら不本意でしょう。

取締役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について、必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。

 これは、会社の所有者である株主が、名実ともに総会に参与したことを保障する制度で、取締役の説明義務と言われます。

 この説明義務を負うのは、取締役会を構成する取締役であり、その内容は、質問に対して説明を尽くすことにあるので、特定の取締役に対し、直接、株主が質問する権利が与えられているものではありません。総会の議事運営をはかる議長が、適宜、取締役を指名して、答弁・説明させればよいのです。

 株主の質問の対象は、株主総会の目的たる事項、すなわち、議案に関係する事項に限られます。従って、取締役の私的行為,たとえば、醜聞や犯罪は、それ自体としては、質問の対象とはなりえず、取締役は、このような質問に答える必要はありません。議長の判断で、質問は却下されることが多いでしょう。

 ただし、貴社は、A氏を次期取締役候補者として、議題に上程し、総会で選任決議を経る必要がありますので、A氏自身は、答弁する義務はないものの、一応他の取締役、たとえば議長である代表取締役が、A氏が適任である理由を簡潔に述べるのが穏当と思われます。

 A氏を含め、取締役候補者の略歴,地位,担当等は、予め総会招集通知に記載されており、総会に出席した株主には、賛否の判断材料は提供されております。そこで、会社業務に関係のない私行の点に触れることなく、総会招集通知に関連する範囲で、説明をすれば良いでしょう。