事例 破産・債務整理 事例 刑事・少年事件、犯罪被害

私の父が親族に殺害されました。突然父を失った悲しみに加え、父を殺害した親族のことが許せず、心落ち着かない日々を過ごしています。そんな中、加害者である親族の弁護人から、手紙が届きました。加害者は、反省をし、償いをしたいと言っている,弁護人としてお詫びを申し上げたいので、私に会いたいと書かれております。謝罪をすれば、全て許されるようなことではないという怒りと悲しみの中、加害者の弁護人と話をするのはとても辛く、苦しいです。このような場合、私はどうしたらよいのでしょうか。

(2011/04/05)

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たいへんお苦しいお気持ちの中で、ご自身で判断し、行動することは止めましょう。どうしたらよいかわからないとき、あなたをサポートする人が必要です。

 犯罪が発生した場合、それがいかに凶悪なものであっても、私人が取り締まりをすることや、処罰をすることはできません。近代司法は、復讐を禁止しております。

 罪を犯した者,これを『被疑者』と言いますが、被疑者について、いかに処罰を求めるかの権限は、社会秩序の維持・観点から、公益の代表者である検察官の専権です。

 ところが日本は、犯罪被害者の支援が不十分な状況下で、警察の捜査や検察の事件処理が行なわれるため、被害者に対する取扱いの酷さが指摘されてきました。そして、これが『二次的被害』と受け止められるようにもなり、犯罪被害者も、刑事司法に参加する制度が生まれました。

 すなわち、検察官は、犯罪被害者の応報感情の充足をすることを職責にしないので、検察官と異なる立場で、公判において意見を述べることが、犯罪被害者参加制度なのです(刑事訴訟法316条の33以下)。

 つまり、あなたが犯罪被害者参加制度を利用すると、ご自身の立場で、積極的に意思を表明し、犯人(被疑者が起訴された場合、『被告人』と言います)に対する量刑について、公判で述べることが可能となります。

 しかし、現状では、そのような確固たる意思にまでは至らず、被告人の弁護人からの連絡に当惑し、混乱しているというのが実情ではないでしょうか。

 そのような状況にある場合は、犯罪被害者として、弁護士のサポートを受けてください。あなたの依頼を受けた弁護士が、あなたに代わって、被告人の弁護人の話を聞き、やり取りをしてくれますし、犯罪被害者の心情を十分理解し、この先経験するであろう諸々の手続等にも精通した弁護士が側にいてくれるだけでも、不安が解消されるのではないでしょうか。

 やがて気持ちが落ち着きましたら、弁護士を介して、被告人の弁護人に対して言いたいこと,思うところを伝えてもらいます。

 もし、公判に、犯罪被害者として参加したいと考えられたのでしたら、弁護士と一緒に出頭しましょう。検察官との交渉も担当するので、論告求刑にも、犯罪者の主張を量刑の一事由として考慮されることがあるでしょう。

 加害者被告人の弁護人からの連絡に対し、返答しないことと、返答できないことは、意味が違います。「今は答えられる状況にない」と言うだけでも、弁護士を通じて回答しておけば、弁護人も、犯罪被害者に対するアプローチの仕方を気に掛けると思います。

 あなたに弁護士が就くということは、「被害者を蔑ろにすることは許されない」と、被告人が気付く可能性もあります。気持ちが整理できる状況になりましたら、あなたの弁護士を介して、被告人の状況,公判の進行等が報告され、あなた自身で監視していくこととなるでしょう。ご検討ください。