無料相談の理由-(中略)部分

 なぜ、面談して、相談することが求められるのでしょうか。

まず第一に、「法律相談をしたい」と考えている人は、当然ですが、心配事、不安を抱えておられますし、もちろん、法律については素人です。
電話ガイドや、行政が行う無料相談等へ行き、弁護士と面談できたとしても、相談できる時間は、せいぜい30分程度でしょう。

その限られた時間の中で相談を受けた弁護士は、相談に来られた方に対し、時間内で聞き取った相談内容から、YES,NOという、ご相談者が一番分かりやすい回答をします。つまり、ご相談者から受けた質問だけに回答します。

たとえば、「夫の不倫相手に慰謝料を請求できるか」、「過去に破産したので、もはや破産できない」、とのお尋ねに対しては、前者にはYES、後者にはNOと述べます。

しかし、この回答だけでは、問題は解決したことにはなりません。なぜなら、

  • ① そもそも30分という短い時間で弁護士が結論、つまり解決策を出せるような事案はほとんど存在しない
  • ② 短い時間の中で、「弁護士に自分の悩みや問題をうまく伝えなければ」という気持ちばかりが焦ってしまい、結果、伝えたい相談内容の半分も伝えることができない
  • ③ 質問者から見た事実関係だけを弁護士に伝えることが、必ずしも問題解決の糸口になるとは限らない。逆に、本当の問題点を見えにくくしていることがある

からです。
ご相談者から受けた質問だけの回答とならざるをえない短い時間での対応では、ご相談者の抱える問題の解決にはなりません。むしろ「弁護士が『YES』と答えた」の回答部分のみが、ご相談者の記憶に残ってしまったら、解決を困難にすることさえあるのです。

さて、ここで上記に挙げた「夫の不倫相手に慰謝料を請求できるか」という質問についてですが、なぜ不倫に至ったのか、相談者とその夫は、その後どうなったのかなど、細かい事実の認定により、判断を要します。
弁護士が事件処理の依頼を受ける(これを『受任』といいます)場合、社会正義の実現の見地から、依頼者の利益を守るべく、職務遂行します。しばしば『落着き』とか、『筋』などの言葉で語られる部分です。

ご相談者にとって、何を目的とし、何を得たいのか、そのためにはどうするべきなのか、弁護士は、相談の先にある依頼者となった方を擁護する観点から、対応を助言するのです。

次に、「過去に破産した人は、もう破産できない」については、支払不能となった以上、いつでも、何回でも、破産は認定されます。ですから、ご質問者に対する回答はNO、つまり、破産は認められるということです。
しかし、ご質問者の真の意図は、「借金の支払いをしなくて済むのか」という点にあるはずです。その場合、「免責」=「借金を法的に免れる」ためには、いくつかクリア―しなければならない要件があるのです。そして、さらに申せば、弁護士に対し、事件処理を依頼し、受任弁護士の助言・指導とおり対処すれば、必ず免責されるのです。これが『正解』、つまり結論です。

ここで例示したように、YES,NOで簡単に片付けられるような問題は少ないので、「なぜそのような結論になるのか」、「どうすれば解決できるのか」といったことを、ご相談者は、時間をかけて弁護士に尋ね、解決への手掛かりとするべきです。

また、「金を貸した相手に請求するため内容証明を出したい。これの書き方を教えて欲しい」との相談を、よく電話で受けることがあります。

しかし、文書を出しただけで、お金が返ってくるのでしょうか。
相手方の支払能力や、抗弁・主張によっては、かかる文書を出したことが、反対に解決を難しくすることがあります。

たとえば、ご相談者が、

内容証明郵便を出した

相手方は支払わない(支払えない)

そしてご相談者は、「内容証明を出した=お金が返ってくる」と考え、

裁判その他の手続をしない

請求された相手方は安心 (「お金を返さなくても大丈夫」と判断)する

という結果に終わってしまいます。

つまり、請求を受けた相手方からみると、内容証明が届いたが、送り主はそれ以上の督促や、裁判所へ調停等の手続を執らないので、「内容証明が届いただけなら、このまま放っておいても大丈夫」と、安心してしまうのです。

これに関連する勘違いとして、「内容証明を出して請求しておけば、消滅時効は中断する(時効にかからない)」というものがあります。

内容証明とは、「このような内容が書かれた文書をいつ発信した」という限度で、『証拠』となるだけです。つまり、内容証明を送ったからといって、ご相談者が期待するような効果=「お金が返ってくる」ことは、ほとんどないのです。
これ一つとっても、弁護士と面談して法律相談をする必要があるのです。

そして、ご相談者が法律事務所へ訪れ、弁護士と面談することにより、詳細にご相談内容をお伺いした弁護士から、金を支払わない相手方から現実に回収するにはどのようなやり方がよいのかなど、良い助言が得られるはずです。