元陸上選手で、世界選手権銅メダルを獲得した為末大氏は、被爆三世です。
子どものころ、育った広島で、原爆は怖い、原爆は悪い、戦争をしてはならないと聞かされてきました。広島で原爆反対は当たり前、戦争はやってはならないことに疑いを持つ人なんていなかったと言われます。それは、ヒロシマの空気のようだったと述懐されます。
為末大氏自身が、戦争はよくない、間違いだと気づいたのは、フランスのある絵本を読んだときだとされます。そこには、ある国が、茶色の猫しか飼ってはならないと決まりを設けた。そのときか、なんでそうなのか誰も考えなかった。別に困らないと言う空気があった。そのうちこの国は、いろんな制約や決め事を設けた。そして戦争になった。そのとき誰もおかしいと思わなかった、誰も反対とは言わなかった……。
恐ろしい!
これが戦争に至る空気だと感じたと述べられました。
広島出身の彼をしても、否そうだからこそ、原爆反対、戦争反対に疑問を持たなかった、それは空気だと言われるものです。
つまり、自分で考える必要性を訴えられたのです。空気に対しては、反対しにくくなる、と言うよりも、そんな空気に疑問を持つことは無くなるのだそうです。こんな例も挙げられました。 今、どこぞのトップの一声で、白紙撤回された新国立競技場の建設には、為末氏は、当初より一貫して反対していた、そのころ、反対する声なんて聞かれなかった、少なくともアスリートたちからは、そんな声はなかった、反対する人なんて居ない、あり得ない前提があった、計画案とおり建設されて当然の空気があった、有る意味、『反対』を言えたのは、自分が既にこの業界の人間でなくなったからかもしれない、自分の意見を言える状況にあったのだろうとのことです。
さらに為末氏は続けます。東日本大震災のとき、現役選手たちに、練習を休んではならないと言葉を贈った。すると即300件を越える批判が殺到してブログは炎上した。不謹慎だと言う。
ところが、なでしこジャパンがサッカーワールドカップを制した。彼女たちは、震災があっても練習を休まなかったからだと述べた。かつて為末大氏を批判した人、評論家その他有名ところが挙って彼女らを讃えた。『震災に負けず練習を続けた成果』だと言う。
これは8月6日を前にした為末大氏のお話です。当たり前、疑問なんてない、反対する空気になり得ない、これがいちばん怖いのです。そして、『なぜ?』がなくなる、すなわち、「どうしてそうなんだ?」の自分で考えることの大切さを仰るのでした。 昨日も、参議院の特別委員会で、安全保障関連法案に関する質疑等がなされておりました。かつて安倍晋三内閣総理大臣が、「唯一の例」と言われたホルムズ海峡の機雷掃海の件は、非現実的とされたからでしょうか、日本目掛けて飛んできたミサイル等を除去しようとする密接関連国が、日本近海で攻撃された場面なんか例示され、「もっともだ」の空気を醸し出しています。 でも、髭の隊長に教えてあげたあかりちゃんではありませんが、公式に政府与党があげる例は、これまでとおり個別的自衛権で対応できます。
むしろ自衛隊の内部資料として発覚した攻撃を受けた密接関連国のため、非戦闘地への後方支援として、その艦船に武器を補給することは、なぜ集団的自衛権で許されるのかーーと政府与党与党は実は考えているーーことが問題でしょう。その艦船から飛び立った搭載機は、日本からの爆弾その他を保持して戦地に向かうのです。
私は、何処かの政党の支持者ではありませんが、コレって戦争そのものに参加したことになるのは、子どもでもわかるのでは?と思います。政府側からは、「戦争ではないか、戦争に巻き込まれたと思わないのか?」の質問に対して、例によって「個列具体的に考える……。」なんてはぐらかした答弁がありましたが。
今、「一国では平和は守れない」「国際貢献が必要」「時代、国際情勢の変化に対応」なんて言葉だけが並び、実は「おかしいな」と声を上げた側に対しては、「レッテル貼り」と言って、相手にしない状態が続いていると感じます。国民ひとりひとりが、「なぜ?」と考え、声をあげるべきときです。空気に飲み込まれて考えない態度がいちばん怖いのです。おそらく為末大氏は、発信し続けるでしょう。