再びアビスパ福岡の試合から

2015年8月28日
日本サッカー協会が推し進める『リスペクトの精神』に関しては、この『ひとりごと』でも、何回かお話したことがあります。サッカーができることに感謝すること、対戦相手や審判、用具、競技場、そしてサポーターやチームメイト、親、指導者等仲間たちに対して敬意を持ち、そしてありがとうを伝えることが大切です。

私は、福岡市をホームタウンとする『アビスパ福岡』を応援していて、きさらぎ法律事務所は、アビスパ福岡の法人後援会に登録されております。そのアビスパ福岡の試合で、「これはリスペクトに欠けるな」と思えたシーンがありました。いずれも、強豪『ジュビロ磐田戦』での一コマでした。ジュビロ磐田がJ2に降格したのは昨年ですから、最近の経験です。

一つめは、昨年ヤマハスタジアムで起きました。アビスパ福岡の選手が、ペナルティーエリア内で反則をして、ジュビロにペナルティーキックが与えられたシーンです。勝負事の世界、どのチームも、PKは誰が蹴るか決めているのです。ところがジュビロの日本代表を経験した二人の選手が、そこでいきなり『ジャンケン』を始め、ジャンケンで勝った選手が、PKを蹴ることになったのです。彼ら、ニヤニヤしてたのは言うまでもありません。

これは、万年J2にいる弱小チームを応援する者の僻みなのかもしれません。初めてJ2に降格したジュビロ磐田にしてみれば、アビスパ福岡なんか目じゃない、練習感覚なのでしょう。でも、精一杯やってこの程度の弱いチームからすれば、屈辱ですね。また、どちらを応援するしないに関わりなく、サッカーファンからみれば、どう映るでしょうか。サッカーそのものに、真摯に取り組んでいるとは、私には思えなかったです。

二つめは、最近アビスパ福岡のホームタウンであるレベルファイブスタジアムで目にしたシーンです。ジュビロ磐田の選手が、そのプレーに関して、イエローカードが出されました。選手本人にしてみれば、たとえ反則とされても、イエローカードは納得できなかったのでしょう。イエローカードをかざした審判に、『文句』を言ったようです。と言うよりも、審判の判定に対して侮辱的態度をとったのか知れません。審判は、もつ一つイエローカードを示し、その瞬間にこの選手は、1試合にイエローカード2枚もらったことになり、レッドカードすなわち、退場となりました。

そのときです。アビスパ福岡のサポーターの一部から、この選手に向けて、「帰れ帰れ!」コールが起きたのです。実はこの退場となった選手、かつてアビスパ福岡が1年間J1に居たとき、ジュビロ磐田から『期限付き移籍』して来たのでした。すなわち、かつて共に同じチームで闘った仲なのです。私は、単純に、『酷い!』と思いました。でも、いろいろな意見があるのですね。

帰れ帰れコールを肯定する意見としては、真剣勝負の場であって、潔くあるべき、酷い反則を受けて倒れたアビスパの選手が負傷でもして良いのか、これは愛の鞭とでも言うべきもので、この選手も、かつてこんなことがあったとこれをバネにして成長するはず等等です。反対の意見は、やはりかつてこの場で共に闘った仲間だろう、アビスパ福岡は、彼に助けてもらった、サポーターは歓喜したこともあっただろう、恩を感じろとまでは言わないが、あれは情も品も無さ過ぎると言うものです。

双方の意見を聞いた現時点で、私は、やはり『帰れ帰れコール』には同意できません。ただ、かつての仲間云々で酷いとの意見は、反対にプロであること、選手は何をなすべきで、サッカーとはなんだとの観点から、単純に賛成はできないと思い直しました。私が思うのは、結局のところ、やはり『リスペクト』なのです。レッドカードとなったこの選手は、もう、この日ピッチに立つことはできません。試合場から離れるのです。すなわち、闘いの場から降りる、リングから降ろされるのです。そんな状況で、『これでもか!』とさらなるパンチを見舞わせてよいのでしょうか。

ピッチ内で、まだ真剣勝負の場では、かつての仲間であっても、批判することは良いと考えます。まさにプロなのです。ひとたび勝負の世界に入ったら、情は無用です。しかし、それは勝負が続いている間に限られるのであり、勝負の場から離れたら、あるいは勝負の場から降ろされたら、『追い打ち』はやめるべきだと考えます。

ラグビーで言われるノーサイドです。私は、例えば厳しい証人尋問、特に反対尋問の後には、依頼者の反対の立場の側に対しても、労いを申します。また、常日頃、依頼者の相手方を、徹底して追い詰めることはしないと申しております。まして、リングから降りた者に対して、もはや勝負は終わったところで、『これでもか!』は、絶対に行ってはならないと思っています。

さて、ジャンケンでPKに決めたお二人、その後日本代表に復帰しておりません。また、ジュビロ磐田は、今年もまたJ2に所属して、リーグ戦を闘っております。私は、レッドカードで『帰れ帰れコール』を受けたかつてのアビスパ戦士の今後の活躍を期待しますし、我がアビスパ福岡には、いつの日にか、実力で、ジュビロ磐田を超えて欲しいと願っています。『リスペクト』って、難しく大切ですね。