ネット社会が決定づけた五輪エンブレム使用中止

2015年9月10日
テーマ 
東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会が、渦中の大会エンブレムについて、これを使用中止にする方針を固めたと、一部メディアが報道しています。この件では、数日前、組織委員会は、このエンブレムの原案を示し、デザイナー佐野研二郎氏の盗用疑惑を否定したばかりでした。

東京五輪エンブレムは、『東京』『チーム』『トゥモロー』を表す『T』の字を基本に据え、赤い円が心臓の鼓動を伝えるデザインになっているとの説明でありました。ところが、これが発表された直後に、ベルギーの劇場のロゴに酷似しているとして、デザイナーオリビエドビ氏が、佐野氏らが、これの盗用疑惑を否定したことにより、差し止めを求める訴訟を提起しておりました。その後も、日本国内では、佐野氏のデザインは、あちらこちらに似た物があるとネット上の騒ぎとなり、ある企業の販売促進キャンペーンには、自分の事務所のスタッフが、デザインを写していたことを佐野氏自らが認め、さらに『似た物探し』が流行って、疑惑解消のため組織委員会が示した『原案』が、さらにそっくりなデザインがあったことが判明、ここに組織委員会も庇いきれないと判断したようです。

組織委員会が、使用中止に舵を切った決定的な事情は、佐野氏が、エンブレム盗用疑惑を否定する場などで使用したエンブレムのイメージ画像の活用例が、インターネット上に公開されている他人のサイトから無断転用したのではないかとの疑惑まで出てきたからだと推測されています。このイメージ画像は、羽田空港や渋谷駅等で、いずれも観光等で日本を訪れた外国人のサイトに出ていたとされるものでした。

デザインや美術には門外漢の私は、似ていると判断されるべきか、盗用かどうかはわかりかねます。でも、たまたま日本を訪れた観光客の写メを使ったのだとしたら、情けないですね。五輪エンブレムとは、日本を東京を、日本からおもてなしの気持ちで各国に案内するのものではないのですか。そして、盗用かどうかはともかく、ここまで五輪エンブレムの使用撤回をしなかった組織委員会の責任は大きいと言わざるを得ません。『原案』を発表したときの誇らしげな顔といったら……。

さらに気に入らないご発言があります。安倍晋三内閣総理大臣は、「組織委員会が、さまざまな状況を判断したと思う。国民から祝福される五輪でなければならない」と述べたと伝えられています。あの東京誘致の最終メッセージを贈ったのは、安倍晋三氏です。原発収拾を表明してまで。なんか他人事のように聞こえます。舛添要一東京都知事に至っては、「佐野氏に裏切られた気持ち」と述べたそうです。

佐野氏が盗用したと決まったのでしょうか。盗用であろうがなかろうが、国民から散々疑問が提起されているのに、組織委員会の森喜朗会長、遠藤利明五輪相、舛添要一東京都知事らは、これまでいったい何をしていたのでしょうか。結局誰も責任を取らない、「佐野氏に裏切られた」で終わりの模様です。ここまで引っ張ってきて、随分無駄な経費がかかったのではと思います。

東京オリンピックパラリンピック、大丈夫でしょうか。以前この『ひとりごと』で不安を申したように、『東京都民として3度泣く』は嫌ですよ。それこそ非国民!と言われるかもしれませんが、東京オリンピックパラリンピックを、そうまでして東京で、日本で行う必要性があるのでしょうか?アスリートは、何処で行われても努力を惜しまず、国民は、一生懸命応援するはずですから。