司法試験考査委員の試験問題等漏洩問題に寄せて

2015年9月17日
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今年も、司法試験の合格者が発表されました。8.016人受験して、1.850人合格したので、合格率は、23.1%だそうです。司法試験受験には、原則として法科大学院で、2年または3年履修することが要件になっていて、要は、お金がなければ法曹になれないと揶揄されています。

 

ただし、法科大学院に通うことなく、司法試験受験資格取得できる『予備試験』合格者のうち186人が合格し、合格率は61.8%で、どの法科大学院よりも、高率だったと結果が発表されております。

 

いっぽうでは、予備試験からの合格は、『抜け道』なんて言う方もいて、いずれにしても法曹資格を得ることは、世間的には、あまり好感を持たれていない感があります。

 

こんな司法試験で、考査委員が、受験生に対して、試験問題を漏らしたとして、今大問題になっております。漏洩を認めたとされる考査委員は、ある法科大学院の教授の職にあって、この大学院の女子学生に、司法試験の論文式試験の問題と、回答の仕方を教えたと報じられています。

 

また、論文式試験の前に行われる短答式試験の憲法に関しても、漏洩が疑われているのだそうです。 試験に不正があってはならないことは当然です。

 

私が大学2年のとき、在学校の当年の入試で、教授が、複数の受験生に、試験問題を漏らした事件が発生し、自治会を中心に、抗議した学生により、大学構内がロックアウトされ、2週間くらい、大学が閉鎖されたことがありました。

この前年に、ロッキード事件が発覚し、その関係者が関わっているとの疑いがあったことも、騒ぎが大きくなった原因でした。なんとも情けなかったですね。

 

前年入学した自分まで、なんかおかしく思われるのではなんて考えたりしました。 今回の司法試験問題漏洩事件は、当の教授は、教え子の女子学生に、個人的な思慕の念があったからと述べたとされます。これが事実であれば、全く個人的な動機による不正であり、他の学生、合格者には、なんの関係もないことではあります。合格発表とほぼ同時に発覚したことから、この教授が教鞭をとる法科大学院出身の合格者は、肩身が狭いとの感想を述べていました。

そして、合格者も、合格できなかった受験生も、怒りは尋常ではないでしょう。 世の中の不正を正し、権利を守り、社会正義を実現する要である法曹になるための登竜門に、インチキがあっては、国民は、何を信じれば良いのかと言わざるを得ません。漏洩の責任は重いです。ただ、ネットの論調は、違った方向に進んでいるようで、これは、罪があるなと思います。すなわち、この教授の専攻が憲法であったことから、現在審議中の安全保障関連法案に反対する人、これを違憲と言う憲法学者がおかしいのだと言う意見です。

 

『個人的事情』であっても、憲法学者なんて、どれもおかしな人ばかりだなんて、ツイートがなされているようです。 これは思わぬところから、安全保障関連法案を推し通そうとする方々にとっては、サービス?になりました。ある新聞ではありませんが、反対派の『オウンゴール』かもしれません。

 

私が司法試験受験生のころには、法務省司法試験管理委員会が、試験を管理していて、私が卒業した大学の教授も、考査委員をされていました。実際口述試験の折、3人が試験官でした。誰が考査委員だなんて、あまり意識しませんでしたが。

 

もっとも、そのころは、法科大学院なんてなく、大学を卒業した受験生は、何処かに篭って、コツコツと勉強していた時代でした。

 

漏洩した教授の思慕の念とか個人的事情が、下世話な世界で、一人歩きするのはどうってことありませんが、安全保障関連法案の採決に、影響することは認められません。遥か33年前に、法務省の掲示板に、自分の名前を発見した古き法曹のひとりごとであります。