9月27日は、『中秋の名月』です。その翌日28日は、スーパームーンすなわち、今年いちばん大きな月が見られる日でした。 中秋の名月には、お月見と団子が定番です。そして、こどものころ、お父さんお母さんに、月の中にはうさぎがいて、お餅つきをしていると聞かされたものだと思います。今日は、このお話をします。 秋は、月の位置が高くもなく低くもなく、見上げるにはちょうど良い位置にあり、秋は空気が澄みきっていて、特に月が綺麗に見えると言われます。この秋の中でも、『中秋の名月』のお月見は、日本の伝統、風物詩でもあります。 中秋の名月、十五夜とも言われますが、まさに秋の中ば、これは日本古来からの季節感、そして天文学から来たものです。 古来から日本で読まれた詩の世界では季語があり、秋は7月から9月までとされます。ちょうど8月15日は、その真ん中にあたること、そして旧暦では、月は新月となる日から1日と数え、15日めの夜が『中秋の名月』となります。当時は旧暦が使われておりますから、新暦では9月のこのころが、『中秋の名月』となるわけです。 いっぽう、月と太陽が正反対の位置になったとき、満月に見えます。暦と月の満ち欠けがほぼ一致するとき、満月の中秋の名月を見ることができます。 旧暦の8月15日ころは、収穫の時期であり、東アジアや中国では、サトイモを食べる習慣があったそうです。これが江戸時代に日本にも入り、サトイモを食べながら月を眺める、やがて芋団子ができたと言われます。そして、日本の秋の収穫の代表はお米、米を使って団子を作るようになったのです。 日本各地で、中秋の名月、十五夜の月見団子はそれぞれですが、芋やもち米を使った団子が多いですね。収穫の時期ですから、夜遅くまで、仕事をする人々を照らす月明かりにありがとうの気持ちを込めて、団子にすすき、萩を備えて月を敬い、団子を食べるのだそうです。すすきは、収穫された稲穂を意味し、萩は、箸の意味があり、神仏に対して、萩を備えて、箸に見たてて団子を食べると言うものでしょう。 さて、月見団子には、うさぎの形をしたものが含まれていることがありますね。「あぁ。月にはうさぎが居て、餅つきしているからだ 」と思われるでしょう。 でも、中秋の名月とうさぎ、どうして月にうさぎが居るとのお話になったのかを理解している人は、意外と少ないのではと思います。 これは、インドの神仏からの伝説とされます。昔サルとキツネとウサギがいて、人間になれなかったのは、自分が、前世に悪いことをしたからだと思い、そのため獣の姿になってしまった、だから、これから人間様に対して良いことをすれば、来世は、人間に生まれ変われるだろうと話し合ったそうです。 こらを聞きた帝釈天は、窶れた老人の姿になり、サル、キツネ、ウサギの前に現れ、お腹が空いて死にそうだと言ったのです。 さて、いつかこの『ひとりごと』で申したかもしれませんが、日本の昔話とされるものは、悲しい結末が多いのです。 窶れた老人を見て、3頭は、必死に食物を探しました。サルは、木に登って木の実を集め、キツネは、川に入って魚を採ってきました。しかし、ウサギは、何も採れません。それで、ウサギは、再度 食物を探してくるから、それまでに、火を炊いて準備して欲しいと、サルとキツネに頼みました。しかし、やはりウサギは、食物を持って来ることができません。それでウサギは、みんなに対して、どうぞ自分を焼いて食べてくださいと言って、火の中に飛び込んだのでした。 これを見た老人は、帝釈天の姿となって、可哀想なことをした、みんなの優しさはよくわかったから、来世では、人間にしてしんぜようと言いましたが、それにしてもウサギの哀れを思い、黒焦げとなったウサギを、月の明かりに映し出して貰ったと言われます。それ以来、月の中に、うさぎの姿が残ることになったのです。 それからです。中秋の名月には、月の中にうさぎが餅つきをしていると言われるようになったのは。 平安時代、権利と富を築いた藤原氏は、「この世をば、我が世と思う望月の、…」と満月を読みました。この『もちづき』から、餅つきが発祥したとも言われますが、先の昔話のうさぎを憐れみ、また、感謝の気持ちを持って、月の中のうさぎの餅つきを説明されることが多いですね。あのとき、お腹が空いた老人を助けるため、うさぎは、命を捧げました。飢えることがない世界でありたい、そのために帝釈天により、月に遣わされたと信じたうさぎは、月の中で、世界の人々が、飢えることがないように、ずっと餅つきをしているのだと言うものです。 うさぎさんのこんな悲しい話、みなさんご存知でしたか? 昔話でも、人間を飢えさせてはならないとサルキツネそしてウサギは必死でした。しかしながら、世界の中では、まだ飢えに苦しむ人たちがいます。また、地球上では、新しい『戦争被害』が起きています。 ぞれは、他国の紛争に介入し、反発を受けた人たちをテロと呼び、また、生来の地を奪われて、難民となっていくかたちです。 果たして、月から人間たちのために餅つきをするウサギさん、今の世界の現実と、つい最近、日本が選択した平和社会なるものを、遠いところから、どんな思いで見ていらっしゃるのでしょうか。