コンビニで売れ残った弁当を、貧困家庭子どもたちに与える政策について、福本悟は意見します。

2016年4月5日

これこれ今から10年以上前になると思いますが、福岡県内のある養豚農家で起きた出来事を思い出しました。

 

これは、『食品添加物まみれの毒物を食べさせられた豚たちの悲劇』として、食品添加物の恐ろしさを世に知らしめた『事件』です。簡単に言うと、母豚が死産を繰り返し、産まれた子豚もすぐ死んだり、奇形だったりしたので、農場主には思い当たることがありました、賞味期間が切れたコンビニ弁当を、回収業者が、処分費用を負担するよりも、タダで豚のエサとして引き取ってもらった方がよい、別に腐っているわけではないからと言って、この農場主のもとに持ち込んだのです。

 

そうです。件のコンビニ弁当には腐らせないために、食品添加物が入っていたのです。

 

もともとコンビニ弁当は、高脂質、濃いめの味付けと言われますね。この農場主、業者の話に乗せられて、月20万円のエサ代を浮かすために、25頭の母豚に健康被害を齎し、産まれるべき250頭の子豚を亡くしたと言われました。豚と人間の体は似ていて、この農場主は、3食全てコンビニ弁当にしたのと同じ、栄養バランスを崩したことは明らかとの当時の福岡県栄養士会会長のコメントが、発表されてもおりました。

 

さて、先ころ福岡県で、子どもの貧困対策の一環として、コンビニエンスストアで販売しなくなった賞味期間直前のパンや弁当を無償提供してもらい、NPO法人等を通して、貧困世帯の子どもたちに届ける仕組みを創設することが発表されました。それに加えて福岡県は、食べられのに廃棄される食品を企業から提供してもらい、生活保護世帯や児童養護施設に届ける『フードバンク活動』事業の支援に乗り出すとも、報じられています。

 

具体的には、コンビニエンスストアを経営する大手チェーンに対して、販売期間は過ぎたが、賞味期間は過ぎていない弁当等を提供してもらい、自治体の委託等により、生活困窮世帯の児童に学習支援等をしている民間団体や社会福祉士協議会のスタッフが店舗まで品物を受け取りに行き、学習支援等の会場で、対象となる子どもたちにこれを配るのだそうです。

 

はじめにお断りしておきますが、私は、コンビニが悪だとか、不健康な物ばかり扱っているとか、コンビニエンスストアを陥れる意図を持つものではありません。また、本来国の責務である貧困対策を、福岡県が、都道府県初の試みとして、こうした支援の場1箇所につき20万円、平成16年度の予算260万円を盛り込んだことは、一定の評価をされるものとも思います。

 

しかし、ショックですね。 極論を言います。貧乏人の子どもは豚以下なのですか?福岡県は、例の豚たちの悲劇を直に経験し、消費者団体等と連携して、全国にいち早く添加物の人体への危険性を警鐘した自治体です。良く言えば、食べ物を粗末にしない、無駄を無くして困っている子どもたちが助かるのだとの見方もあるでしょう。

 

こんな政策を立案した人は、単純に善意だったのだと思いたいです。しかし、添加物等が入っていて、賞味期間ギリギリの食品を捨てるのがもったいないとして、貧困児童がこれの引き受け手になることを意味します。放射性物質や食品添加物等の安全性が考慮されていないのに、貧乏人ならこれでも喰らえと言うことなのでしょうか。

 

もはや『無いよりはまし』の議論は次元を異にします。 それと、このような人が食わない、『売れ残り』の物をタダで、こうして公的機関の介添えにより与えられたとして、困窮家庭の子どもたちは、偏見をもたれ、あるいはイジメに逢うかもしれません。

 

ある新聞社が大好きな『レッテル貼り』なる現象です。格差貧困問題に関しては、この『ひとりごと』でも、しばしば指摘してきました。貧困の連鎖を断ち切ることが重要なのです。困っている人に、不要な物を与えて埋め合わせをするのでは、貧困そのものを断ち切ることにはなり得ません。 豚が食べて異常が出た食品を、貧困家庭の子どもたちならーー逞しく、打たれ強くできているから?ーー継続して食べても大丈夫だと言えますか。

 

その検証がなされていないなら、食を粗末にしない運動の一環として、福岡県民全員が、賞味期間ギリギリのコンビニ弁当を購入して食べ、こうして集まった代金を、『貧困家庭の子ども基金』に充てれば良いでしょう。

 

貧困家庭の子どもたちは、ただでさえ偏見や差別を受けていると報告されることが多いです。こんな食事を与えられたら、学校にだって行きたくなくなるのではないでしょうか。人間の尊厳を踏みにじるトンデモナイ政策であると、私は言わせていただきます。

写真 1 写真 2

私は、今、大好きな福岡、私の心のふるさと福岡に来ています。福岡県が、悪意を持っていたとは思えません。そもそも子どもの貧困問題は、公的支援、すなわち税金の投入が著しく低いことに根があります。日本の貧困率は、経済協力開発機構、いわゆるOECD加盟国34ヶ国中10番めに高く、大人1人世帯について言えば、その貧困率は50%を超えていて、なんと堂々第1位であります。

 

これも『ひとりごと』で述べました。こんな国の無策に怒りを持った福岡県が、「何がアベノミクスだ!」と立ち上がったのだと信じましょう。福岡県は、数々の意見に対して、「支援する大人が手渡して見守ることで、心もおなかも膨ら効果がらあると考えている」と答えたそうです。みなさんどのように考えますか?