熊本地震後になされたある大分県の方の小さな声に思いを寄せて。

2016年4月25日
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東京あたりにいると、北海道も九州もまとめてひとつの感覚があって、熊本県に深刻な被害を発生させ、今なお止まることがない一連の地震は、九州そのものが危険のイメージを持たれるような感じがあります。確かに東京に居て、初めて北海道あるいは九州を観光しようとツアーを組むと、だいたい旅行会社は、2泊3日とか3泊4日で、道内また、九州各県をぐるっと回る行程を組むので、そんな感じを持たれるのかもしれません。

そこが、実際その地で生活する方々との認識の違いでしょう。

昔鉄道少年だった私は、地理に明るいと自負していて、九州は、全県行き来したことがありますし、今も地図を見たり、時刻表を読むのは好きです。熊本県が甚大な被害を受け、交通インフラが危うくなると、九州内ではどのような影響が出るのか、また、九州外からのイメージとの違いを考えてみました。

こんなことを書いても、被災者にはなんの励ましにもなりません。ただ、被災された方も、熊本が、そして九州全体が、いつまでも暗く沈んだ状況にあることを決して望んでおられないと思います。ですから、少しでも九州を知っていただき、日常を取り戻せるよう、遠くにいる私たちができることを行いたいと思うものです。

そこで今日は、主として地理面からの案内により、九州を知っていただき、一連の地震で、九州へ足を踏み入れることを躊躇している方がおられるのでしたら、是非九州に行って欲しい、そこで暮らす方々に、日常を取り戻していただきたい、加えてその地にお金を落として欲しいと思い、これを書いています。これはいわば九州観光へのヒントであり、震災支援活動のために九州、そして熊本には入られる方のための案内ではございません。


物資の搬送受け入れや、ボランティアの活動の場所等に関しましては、それぞれの公式案内をご覧ください。

決して熊本県の被災者を軽んじる意図はありません。ただ、数日前、大分県のある地域にお住まいの方から、大分だって、亡くなった方こそいませんが、ライフラインが止まり、人が来なくなり、厳しい状況に陥っていると遠慮がちの声が上がったことが、とても気になりました。


実際大分県別府市は震度6、由布市は震度5の地震に見舞われ、熊本県阿蘇地方と接する竹田市では、震度5クラスの地震が引き続き起きたと報じられました。それで北海道と並ぶ温泉県、九州随一の温泉地をいくつも持つ大分県にも、外からの人足は、ピッタリ止まったと言うのです。

現状で、熊本県に観光に行ってお金を落としなさいなんて言う人はいないと思います。映し出されるあの熊本城の様子が、現地の状況を物語っています。熊本県は、九州の真ん中、ここの交通機能が停止などすると、東西にも南北にも行き来するのは難しくなります。


4月20日現在の交通機能の状況ですが、九州新幹線は、博多から新八代まで運休です。また、九州自動車道も、熊本の手前植木インターから先の熊本県内は不通です。従って、福岡から熊本に行くには、在来線の鹿児島本線を乗り継ぐしかなく、たとえ熊本まで行っても、結局鹿児島までは行くことは至難の業です。でも、福岡鹿児島間には、航空機の利用ができます。同じく福岡、宮崎も、航空機が利用できます。被災地熊本は通過となりますが、福岡からなら、鹿児島と宮崎、なんとか行き来可能です。これが南北への行き方です。

次に東西ですが、熊本から阿蘇を通って大分に通じる豊肥本線は、阿蘇付近の土砂崩れで肥後大津と豊後竹田間が不通で、通称豊後街道と言われる国道57号線は、壊滅的被害を受け、ともにいつ復旧するか全く未定の状況です。


東西は、分断されたと言わざるを得ません。もっとも熊本大分間がダメなのであって、大分県には、福岡からでも鹿児島からでも、普通に行くことはできるでしょう。意外にも知られていないのは、大分県内での『困った状況』です。今日のお話のメインは、これです。

大分県には、日本を代表する2大温泉地があります。言わずと知れた別府と湯布院です。九州外から、温泉目当てで大分県に来る観光客は、別府と湯布院にそれぞれ1泊する慣わしだそうです。


ところが、別府と湯布院の間の大分自動車道が不通になっているのです。従って、福岡から大分まで、高速道路での行き来はできなくなっております。別府では7割くらい、湯布院でも半数以上の温泉宿は、通常営業しているとのことですが、別府湯布院は、2つで1つの感があって、九州外からの旅行客は、激減する予想なのだそうです。別府は湯布院を、湯布院は別府を共に案じる姿が放映されていて、心を動かされました。この際九州外のみなさん、まとめて2つではなく、どちらか1つでも行って差し上げませんかと提案いたします。

湯布院には、福岡から高速バスまたは久大本線が通っています。別府市には、小倉から特急電車が30分間隔で運行されています。例えば首都圏からなら、大分空港から別府、福岡空港から湯布院へ入ることができます。別府も湯布院も素晴らしい街です。

別府市内ならどこからでも目にするあのけむり、由布岳の美しさは、いずれも『日本の風景』であり、心が洗われます。別府と湯布院は、交通機能は分断されても、互いに互いを気にかけておられます。どちらかにでも行ってお金を落とせば、他方にも安心感が持たれるかと思います。そしてこんなことから少しずつ、九州が元気を取り戻し、今苦しんでいる熊本県の方々に、多少なりとも将来への希望となりうるのでしたら、嬉しい限りです。

私は、本田圭佑選手が言われたように、人から批判されることを恐れて普通のことをしないことはおかしと思います。積極的に活動することで、その中から、結果的であっても自分ができること、あるいは役に立ったなと思える事柄が見つかったなら、これも間接的な支援になるのではとも思います。


温泉地に行くことが不謹慎だなんて言われたら、温泉地で暮らす方々は、なんと思われるでしょうか。大分県の方の小さなほとんど取り上げられていない声から、思うところを書きました。近いところで大分県に、足を踏み入れたいと思っています。