先月行われた参議院議員選挙で、野党候補を支援した労働組合が使用する建物に出入りする人々を、警察が、数日間密かに撮影していたことについて、一部報道機関で報じられています。
まず、これがほとんど問題視されないことが、とても恐ろしいと思います。
選挙後この事実が明らかにされ、県警は、無断で私有地に立ち入ったことはお詫びしたと発表したそうですが、問題の本質は、そんなところにはありませんね。
政治活動に使われる可能性がある場所を、公権力が何のために、誰のために監視するのでしょうか?思想や信条に基づいて、市民それぞれが活動している姿が密かに監視されていた、これが何を意味するのか、県警のお偉方が知らぬわけがありません。
事の発端は、『被害』を受けた労組の関係者から、私有地に設置され、この労組の建物への出入りの状況を撮影している箱型の隠しカメラを発見したことが、最寄りの警察署に被害の申告がなされたことにありました。このカメラ、建物に出入りする人物が、はっきり判別される映像だったわけですが、なんと『犯人』は、被害を申告された当の警察署だったというシャレにもならない結末です。
被害者は、選挙の応援が、いずれかの陣営に監視されているのでは?と県警に相談したわけですが、やった張本人に相談していたわけです。 県警は、個別の被疑事案で、特定の対象者の動向を把握するためと答えたらしいですが、何の捜査で、何でこんなところ!に被疑者?が出入りする可能性があると判断されたのでしょう。
でも、実際は、建物に出入りする全ての人々の姿が、制限なく記録されていたわけで、全く県警の説明は説得力ないですね。しかも、カメラをどこにどう設置するか、県警の担当者が打ち合わせしているところもちゃっかり収録されていたとかで、お笑いのネタにでもなるのではとも思われます。
先の参議院議員選挙、この県は、僅か数千票や差で、現職の野党議員が当選しました。
また、比例代表に立候補したある野党党首のお膝元の県でもあり、この政党は、当の党首が落選して議席を失いましたが、いずれも野党側にとってはとても大切な選挙区、県であり、これは半面与党としては。何としても切れ崩したい牙城だったはずです。
私は、たまたま参議院議員選挙の投票日の前日にこの県に入って1泊し、投票日に出発した経験をしました。この地は、投票日前日には、今回改造された安倍内閣の閣僚を固辞した自民党有力者や、来月の党の代表選に立候補を表明した野党第1党の女性議員等が、選挙戦最後の訴えを行った激選区です。
県警の狙い、直接誰が指示したわけではないとしても、ある方向を向いてなされたことは、隠しようがないです。 ある県やある市の首長を務めた安倍晋三自民党総裁とは、たいへん仲が良いことで知られている政界を引退した御方は、首長に在任中から、公務員批判の世論受けを背景に、徹底的に労働組合を敵視しました。
そのやり過ぎは、司法の場でも指摘されましたが、公務員批判を利用した自己に対する批判者を徹底的に排撃する、要は反対者を抹殺し、好きなように政権運営を行う意図があるのです。独裁は悪いことではないなんて、堂々と公言していますし。 簡単な言葉で反対勢力を作って大衆受けするやり方は、いつの世でも行われます。この点労働組合は、世論から敵視されやすい存在だと思います。
労働者は仕事をしないで、政治活動を行うのか!とわかりやすいキャッチフレーズを作れば、多くの人は賛同するでしょう。 確かに単なる圧力団体となって、自分たちの利権目当てに動いている団体がないとは言いません。労組組合という団体が、主義信条を認めれ、一定の範囲で政治活動を行うことは、憲法で認められることです。
これを敵視する、ダメだというならば、多くの企業が政治献金をするのはどうなのでしょう。献金する目的ははっきりしていますね。裁判所は、企業法人の政党への政治献金は、法人の思想信条の自由であり、選挙権がないとは言え、法人団体の政治活動の自由を認めています。お金で政治を動かす、金で社会を支配するなんて批判をしてはいけないのです。
それからすれば、金がない?労組が集まって会議を行い、その後例えば街頭に出て、ビラを撒いて選挙戦の手伝いをするなんて、ライオンに蚊がとまる程度の可愛いもんじゃありませんか。 どんな政党を指示する、選挙のときどんな応援をするかは、全く自由です。
選挙権のある個人は、投票について、私的にも公的にも責任を問われないことは、日本国憲法に明記されています。与党を応援するいくつもの団体がありますが、そこに隠しカメラが設置されたことはあるのでしょうか。日本国憲法をなし崩し的に変えてしまおうという流れができているというか、そんな流れや風に乗り遅れないようにとの空気が、至るところで感じられます。
本当に恐ろしいことだと思います。
こんな意見も封じられるかもしれない世の中に進んでいるのは誰の登場、誰の責任なんでしょう。そんなことを言えるのも、今だけかもしれません。国民は、気づかなければりません。
天皇陛下の生前退位のお気持ちの表明さえ、批判する大きな団体の会長に就任されている方は、実にくだらない声であっても、気に入らない言動は許さない姿勢なのですから。マスコミの役割も、考えて欲しいです。