NHK『貧困女子高生』報道へのバッシングについて、福本悟は意見します。

2016年8月30日
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『強く国より優しい国』。これは私が繰り返し願いを込めて日頃声をあげているところです。

 

先日NHKがニュース番組で紹介した女子高校生に、ネット上で批判が殺到して、生徒のツイッターが炎上したと報じられました。

 

それはNHKが、『貧困女子高生』と報じられたのに、生活に余裕がある、『捏造』と言う内容であります。NHKは、『子どもの貧困』を問題提起したかったのだろうと直ぐに気づくのは、この種問題に関心を持つ私くらいかもしれません。そして私が、このバッシングに関する具体的な情報を知る前に、ある自民党の女性国会議員が、NHKの報道に問題はなかったのかと疑問を呈したことで、さらに騒ぎが大きくなったとされます。 まず、件の国会議員の弁です。

 

「拝見した限り自宅の暮らし向きはつましい御様子ではありましたが、チケットやグッズ、ランチ節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょうからあれっと思う方も当然いらっしゃるでしょう。経済的理由で進学できないなら奨学金等各種政策で支援可能では」とのことです。 私は、政府与党の本音と言うか、国民に向けたメッセージが端的に現れた見解だと思います。今日は、与党議員の報道機関への批判、物申すところは、言うのは止めましょう。国会議員につましいかどうか、生活向きに関して意見されることも、決して上から目線ではなく、国民全体の生活向上を願っての研究検討だとしておきましょう。

 

しかし、『中古のパソコン』を買うために、ランチやチケットを節約しなさいは、この人、お金がない人は、パソコンは中古で良いと決めつけていますね。そもそも日本の政治家に、奨学金を語る資格ってあるんですか。この『ひとりごと』で繰り返し指摘してきたとおり、子育て支援に関する予算は、GDP比率で1%、教育予算が3.5%と先進国では最低です。奨学金を給付制にしなのは、先進国中日本くらいです。奨学金等でなんとかしろとは、自分たちの無策を置いてなんだ!と思います。 NHKの報道は、『相対的貧困』と『貧困の連鎖』をテーマにしたものです。

 

戦災孤児だとか難民とか、ホント食べるものも住む家もない、『絶対的貧困』を指しているのではありません。つまり、その社会の中で、平均的な暮らしをすることができない状態はおかしいのではないかの視点です。周りの友人たちは進学する、その前提として進学塾に行く、余暇はディズニーランドにも行く、貧困家庭の子どもは、これらフツーのことをなぜ諦めなければならないのか、まして1.000円のランチを食べ、コンサートに行ってはならないのか、もし、これを経験できる子どもが一般的であるなら、貧困を理由にできないのは、その子どもたちの自己責任だとなるのでしょうか。相対的に貧しい家庭に生まれたからって、友だちと遊び、たまには美味しい食事をし、ディズニーランドに行く楽しみに、夢を持ってはいけないのでしょうか。

 

中古のパソコンを買うために、つましい生活をしてるから奨学金を貰えるねって言われるために、我慢すべきですか……。

 

声をあげたこの女子高生を非難した人は、彼女より、『相対的貧困』だったのでしょうか。そんなことはないでしょう。以前この『ひとりごと』でも書きましたが、人間は弱いとき、苦しいとき、辛いとき、そして落ち込んでいるときこそ、人に優しくできるものだと信じます。この女子高生のツイートのアカウントを暴いて炎上させた人、おそらく不自由なく、まして『貧困』とは無縁の人が、弱い者いじめをしているのだと思います。特に『永遠の与党』が誕生して、今の政治、生活や社会に批判的な言動をすると、ムキになって、意地になって、意見を表明した人をこれでもか!って叩き、追い込む傾向が顕著になったと思います。

 

また、匿名性が問題にされますが、自分より弱い、あるいは下と思える人に対しては、この人たちは、激しい憎悪を剥き出して、バッシングする例です。強い者には何も言わない言えない、ましてそれに巻かれて迎合するくせに……。 貧困の連鎖は、この国にとって抜き差しならぬ深刻な問題であることに、ほとんどの人が気づいておりません。

 

親が貧乏であれば、進学は諦めなければならないのでしょうか。

 

コレって、流行りの『自己責任』でもありませんよ。そもそも貧困は、当人が努力しないからそうなったとの風潮があります。しかし子どもは親を選べません。貧困が連鎖すると、学校行事に参加できない、病院に行けない、まして友だちと遊べない、社会から疎外される生活を余儀なくされると、社会の労働力活力の点からも損失です。

 

社会からの離脱を回避するため、貧困を言わないし、先の例ではありませんが、周囲とは見劣りしない生活をさせようと親が無理をしているのかもしれません。『相対的貧困』とは、まさしく見えない気づきにくいことが問題です。 炎上してしまった女子高生、大きなショックを受け、精神的にも立ち直れない状況と言われました。勇気を出して、実名を出したのに。

 

これでは誰も声をあげれなくなる、貧困の問題は、世に現れなくなる危惧を覚えます。まして、匿名で卑劣なツイートに便乗したのか火に油だったのか、政治家が、バッシングとも取れるあんな発言をするなんて酷すぎます。あれは、本当に弱い者いじめでね。

 

日本の子どもの貧困率は、300万人から400万人、6人に1人は、貧困家庭の子どもです。そして貧困率は年々最高を更新し、1人親世帯に関して言えば、54.6%と先進国最悪の数字です。

 

経済的理由で学校に通えない『就学援助』を受ける小・中学生も、過去最高水準の160万人と言われます。この貧困家庭の子どもたちがそのまま大人になると、年金や社会保険料が支払えない、また生活保護世帯になるかもしれません。社会的にさらに『コスト』を生み出す結果、連鎖になりかねないです。

今の政府与党の政策では、相対的貧困は酷くなるばかりだと思います。貧困の連鎖、貧困の固定も深刻です。

 

特にネットを利用した匿名の攻撃、これが続くでしょう。

 

コンサートに行き、きちんとしたパソコンを買い、ランチを普通に食べ、ディズニーランドにも、大学にも行くことができる人、そんな人たちが、自分には関係ない世界であるはずの『相対的貧困』を認めようとせず、バッシングするのですから。私は、『優しい』より『強さ』を全面に出すここ数年の流れが少なからず影響していると考えます。

 

貧困者とてまた納税者です。今、富を分配することで、子どもたちは平等公平に成長していける、そして将来納税者となって、昔の子どもたちには、安定的に社会を豊かにしてもらうことができます。

 

とても気になる『貧困女子高生』報道へのバッシングです。