報道の公平中立なる要請によりメディアの自粛が懸念される以上に、メディアがスポンサーに買い取られる現実の恐怖。

2017年1月16日
マスメディアの役割はなんでしょう。最近NHKの受信料取立請求訴訟が話題になっています。家にテレビがあれば、NHKと契約していなくても、たとえNHK番組を見なくても受信料の支払いを免れないとの判例が続出しています。今日は、NHK問題を書くのではありません。

民主主義とは相対主義。様々な意見を出し合い、自由闊達な議論をして、国民自らがより良い社会を構築し、共存していくことです。今日の少数意見は、明日の多数意見となるかもしれません。そのためには、国民にあらゆる情報が提供されなければなりません。国民の『知る権利』に奉仕することで、メディアは民主主義社会を支える役割があるのです。

あえてNHK問題を語るのをやめたのは、いっぽうでメディアもひとつの企業、生き抜く必要があることを理解しなければならない点です。テレビ局が放映する番組には、スポンサーが付きます。よく、コマーシャルと言われるやつですね。私は、あるテレビ番組が木に気に入らないから、そのスポンサーに対する批判、その延長上に起こる『不買運動』には強く反対します。こんなことをすればメディアは萎縮し、生き残るためには沈黙するか、ときの多数意見のように見える声が大きい側の様子を伺う番組作りになる危惧を覚えます。マステディアは、その存在自体が公共性があるのです。

ところで、新年のある番組が、事実に反する報道、取材をしないで放映し、レポーターあるいはコメンテーターと言われる方々が、あたかもこれが真実であるかの前提で、自身の主義主張を述べていたと指摘されました。沖縄県国頭村東村のいわゆる『高江ヘリパッド』問題で、現地で反対運動をしている人の中には、東京で日当5万円と書かれたビラを見て参加した人がいる、沖縄県民はこの反対派が怖くて迷惑している、危険極まりなりない『反対運動』であり、これが『真実』と放映したものです。

日当のビラを配布するなどして、この『反対運動』を行なっていると名指しされたグループは、事実に反するとして番組に抗議するとともに、9つの質問をし、その回答を求めました。日当5万円のビラを都内等で配布していない、現地に来て様子を取材をし、tweet等する人には5万円を出すと言うことのようで、、、。


番組側は、状況確認ができていない、回答の可否を含めて結論が出ていない等と対応していなかったところ、2週間経過したところで、『沖縄リポートは、いろいろなメディアの沖縄基地問題の一環として報道いたしました。今後とも様々な立場の方々のご意見を公平公正に取り上げてまいります』と15秒間のメッセージをナレーションしたのでした。

これは明らかに問題点をはぐらかしています。報道の公正公平は当たり前、この番組が事実を検証せず、関係者に取材もしないコメンテーターを沖縄県に送り込んで、明らかに『現地』で行われていないことを、このコメンテーターがあたかも存在するかにレポートしたことが 問題点川なのです。コメンテーターの主義主張と合う『事実』を作り上げているのです。

後でわかったことですが、このテレビ局、単に電波を貸すだけのようです。つまり放映する権利を買い取った企業が番組を創る、テレビ局側はその内容にタッチしないのだそうです。これは金がある者が、自由に電波を使って自己の好きなように情報を発信できることを意味します。これは、国民の知る権利に奉仕する姿勢はありません。メディアを押さえた勢力が、国民をして、自己に迎合するように操作できることを可能にするものです。メディアを利用した民主主義の危機と言うべきです。

それにしてもこのテレビ局、様々な意見を公平公正にとは、よく言うなと思います。金を出してくれる者かお客様であることはわかります。でもテレビ局を名乗る以上、職業倫理と言うか、最低限度のプライドはあるでしょう。

公平公正な報道を心がけている、それはこの電波を買った企業に言うべきです。報道の自粛が言われて久しいですが、それよりも恐ろしいメディアコントロールがありました。