これも鯛? あれも鯛? 皆よかたい

2010年5月22日
テーマ 

初めて九州で生活した際、動く魚を食べました。

これが活き造りで、九州では当り前,全然驚くに値しないことは、その後のいろいろな魚と知り合って、納得できました。

白身の代表『鯛』は、基本中の基本ということです。

ツボ鯛(つぼだい)をご存知ですか。九州,特に、福岡の居酒屋では定番です。

ツボ鯛を初めて食べたのは、十数年前、藤崎の『磯貝』でした。ツボ鯛みそ焼きは、あれから、あっという間にポピュラーな食べ物となったようです。福岡市内の定食屋では、ツボ鯛西京焼定食が、ランチタイムに出ています。

『鯛』と言えば、めでたいお魚で、尾頭付き,特に、活き造りに慣れてくると、「ツボ鯛は、何で顔がないの?」と思ってしまいます。

ツボ鯛は、深海に生息する希少な魚であって、市場に出るまでに鮮度を保つ必要から、漁師さんが、内臓や頭を落して、塩漬けにするのだというのが、柳橋連合市場で聞いた話です。

それからツボ鯛は、実は『鯛』ではなく、スズキ目カワビシャ科に属するのだそうです。

お頭が付くと、『鯛』と誤解されるからという説もあります。

ツボ鯛は、千葉県から南で獲れますが、最近は、南太平洋,ミッドウェイ沖に漁場が発見されたそうで、日本国のあちらこちらの市場に入るようです。
新千歳空港の土産物店に出ていたのは、さすがに驚きましたが…。

「『磯貝』で初めて見た」からと言って、九州,福岡の産物と、断定してはならないようです。

ツボ鯛とは反対に、その名前からして、とても『鯛』とは思えない『鯛』があります。それが、『あぶってかも』です。

『あぶってかも』は、スズメダイ科の10センチくらいの小さな魚で、これを食べる地域は、北部九州,おそらく福岡県民だけではないかと思われます。

『あぶってかも』は、産卵に入るこれから夏までが旬です。そのまま塩を振って、焼いて食べます。

なぜ『あぶってかも』なのか。

昔、博多湾にスズメダイの大群が押し寄せ、出漁に困った漁師さんが、すくっては塩漬けにし、炙って食べたのが始まりで、博多では、『バリバリかもう』を『かも』と、短く発言することから、『あぶってかも』の名が付いたと言われます。

また、スズメダイを焼く(炙る)と、鴨の味がしたからという説もあります。

『あぶってかも』は、昔話が嘘のように、今では大量には獲れない高級魚です。

鱗も骨も、そのまま焼くので、とても硬く、もともと小さい魚ですから、ほとんど食べるところはありません。

ところが、これが脂が乗って、実に美味しいのです。

近時は、博多の高級料亭御用達と聞きますが、櫛田神社近くの『馳走屋 黒川』では、山笠のころ、食べることができます。

今年もまた、『あぶってかも』の入荷を期待して、柳橋連合市場に出向くことになりそうです。

九州,特に、福岡の『鯛』は、皆よかたい!!