先の東日本大震災では、海の近くに立地する仙台空港も津波が押し寄せ、甚大な被害を受けました。
空港は、環境保護等の観点から、市街地を離れた海岸近く,または、山中に開港されているところがほとんどです。
九州にあって、否,世界広しと言えども、最も中心地に近いと言われる福岡空港は、例外中の例外です。
北九州空港と長崎空港は、いずれも海を埋め立てて開港したもので、宮崎空港も、海岸近くに立地します。
他方、山間部に目を転じれば、阿蘇山近くの阿蘇くまもと空港,霧島山系の近くの鹿児島空港があります。
ところで、佐賀県に空港が存在することは、あまり知られていないのではないでしょうか。
『有明佐賀空港』がそれです。
佐賀県が管理する有明海の干拓地を活用した標高2m程度に位置する中型ジェット機の離着陸が可能な第三種空港です。
有明佐賀空港には、現在全日本空輸の定期便が、東京羽田を1日4往復就航しています。
以前は、大阪や名古屋を結ぶ航空便があり、空港へのアクセスも、JR佐賀駅以外,たとえば、福岡県柳川市からの路線バスもありました。
有明佐賀空港もまた、地方空港の悲哀を味わっているようであります。
しかし、そんな地方空港の特色を、見事に有効活用したのが、有明佐賀空港でもあるのです。
有明海に面し、周囲に住宅がないこの空港は、夜間の離発着が可能であり、旅客機の貨物スペースを利用した夜間貨物便の就航を可能としたのです。
すなわち、午後8時過ぎに到着する東京便が、深夜貨物専用便となって、羽田を往復し、翌朝6時台の有明佐賀空港発,東京羽田空港行き定期旅客便として、出発するというからくりです。
平成22年10月に、羽田空港の滑走路拡張と、国際便の本格的運行により、さらに九州から中国,アジア,北米,欧州等への国際貨物の出荷がスムーズになったのです。
北部九州にある福岡空港は、夜間使用ができないうえ、通常の旅客機には、貨物スペースが十分に確保できません。
まして、陸上輸送は、時間・距離を有するうえ、荷物の損傷のリスクがありました。
九州内の事業所で生産された荷物が、夜間の貨物便として、有明佐賀空港から、世界に向けて発送されています。
九州では初となる旅客機の貨物スペースを利用した夜間貨物便の就航,活用は、有明佐賀空港が、アジア,世界に向けた九州発物流の拠点たることを意味するものでしょう。
海に近い,周囲に何もない地域だからこそできる,世界に向けた空港として、意義深いものがあります。