大阪都構想の可否を巡る住民投票は、17日に行われます。
現在の大阪市を解体し、5つの特別区を設けて大阪府を『都』とみなす構想で、これまでの大阪府大阪市の二重行政の無駄を省くことを目的とするものと言われます。
2012年に、『大都市地域特別区設置法』が制定され、人口200万人以上の政令市などが、住民投票を経て特別区に移行する仕組みができました。
地方自治の重要性から、国と離れて住民投票がなされる仕組みそのものは、悪いことではないでしょう。 さて、東京都民の私は、大阪都構想についてよくわからないところが多く、『地方自治』の観点から、この是非について、コメントは差し控えます。
私が関心を持ったのは、政府と与党、特に官邸と与党の地方支部との間の温度差であります。
大阪都構想が、橋下徹氏が提唱したが故の『混乱』であったと映ります。 当初大阪維新の党は、自由民主党を離党した議員も多く党員となって、この構想に賛成しました。
大阪府では力を持つと言われる公明党も、基本的に橋下氏に賛同しました。
橋下徹氏は、安倍晋三内閣総理大臣や菅義偉内閣官房長官と親しい間柄と言われ、政府与党も、少なくとも反対はしていなかったと思います。政府特に自民党は、橋下徹氏が憲法改正に理解があり、維新の党には改憲派が多いことから、橋下氏と共同歩調を取る姿勢だったことは明らかです。
ところが、自民党が巨大与党となり、安倍内閣の支持率が高状況が続くいっぽうで、維新の党の支持率が低下するようになり、政府与党態度が、微妙に変わりつつあったのです。
大阪では、維新橋下氏の影響力を無視出来ないと言う以上に、これに叛旗を翻したらやっていけない雰囲気があったのかもしれません。
ところが国政選挙や地方選挙の都度、自民党が圧勝する過程で、大阪でも、これまで不満を抱えていた自民党そして公明党の中で、本音が表われたのだと思います。
もう、国政与党の地方支部として、正々堂々対応する基盤ができたと言うことです。
こうして大阪では、自民党から共産党まで、『反維新』網ができ、大阪都構想の賛否は、投票直前の段階では拮抗していたと報道されました。 この動向に政府側から、個人的意見として、官邸の菅義偉官房長官が、「理解できない」と意見しました。地元の自民党が、共産党と一緒に反対集会なり開いたことを指すようです。
他方、前自民党総裁で、現在の自民党幹事長谷垣禎一氏は、大阪の自民党の活動を、同志が必死の活動をしているとして、シンパシーを送ると述べました。 安倍内閣としては、集団的自衛権に関する法案の審議が重要な折、橋下徹氏と袂を分かつようなあり方には、躊躇するといったところでしょう。
いっぽう党幹事長が、地元大阪の自民党員に対してエールを送るように、もう、安倍自民党の看板があれば、自由民主党であること自体で、ときに官邸すなわち安倍晋三内総理大臣の意向を気にしなくてもやっていけるようになったと言うことでしょうか。
これは、巨大与党が生んだ矛盾、あるいはブーメランかもしれません。
でも、安倍晋三氏には心配にはおよびません。たとえ橋下氏氏が失速しても、もう公明党とは全ての擦り合わせがなり、政府は、この国会に、安全保障法制関連法案を提出できるようになりました。
公明党と言えば、平和と福祉の党として政界デビューを果たしました。
護憲でありながら、『加憲』を主張して久しいです。先に安倍晋三内閣総理大臣が訪米して、日本国民ではなく、アメリカ合衆国政府に約束してきた急ぎ成立をさせると言うこれら法案ーーある国会議員は、これを戦争法案と称しましたが、ーーは、明らかに専守防衛と言う日本の安全保障政策を、根底から転換する憲法上の議論を要する内容を含んでいます。
憲法改正の布石ともなりうると認識せざるを得ません。
憲法改正が現実化したとき、与党公明党は、これは憲法の改正ではなく憲法に書き加えたとでも言うのでしょうか。
そうだとすると、安倍内閣、官邸は、今回の大阪都構想の結果がどうであつても、橋下徹氏が破れて政界を引退しても、何の影響もないことになるのでしょう。
やはり巨大与党は強いですね。あの橋下徹さえ、飲み込もうとしているのですから。安倍晋三氏そして巨大与党には、ドローンはともかく、ブーメランなんてあり得ないと言ったところです。