刑務所も、幼稚園保育園も近くにあると困りますと言われたら。

2015年6月4日
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司法修習生のとき、刑務所を見学しました。検察庁のマイクロバスで行きましたが、市街地を抜け、山を登ったいちばん高い場所にありました。刑務所の前にバス停があり、ここが街への始発停留所となると聞きました。刑期を終えた元服役囚の方々は、ここからバスで街に向かいます。まさに、社会復帰に出発するバスであります。

なんで刑務所の前にバス停があるかと言えば、もともと人里離れた小高い山の上、『何もない場所』だったところ、市街化の波が押し寄せ、どんどん山を切り開いてニュータウンさながら住宅地になっていったからなのだそうです。確かに、ここは静かで眺望も良いでしょう。バスは、毎日の通勤通学の貴重な足であります。

でも、刑務所職員の方が、コソッと教えてくれたことがあります。刑務所と周辺住宅地の方々とは、『あまり良い関係』ではないそうです。要するに、家の近くに『こんなもの』があるのはイヤだと言うことのようなのです。ですから、刑務所職員の家族が、バスを利用しても、なんか良い空気ではないと感じられるそうです。まさしく、あの塀の中は別世界と思われているのでしょう。

最近、保育園幼稚園と地域住民の関係が、よく取り上げられます。住宅地に幼稚園保育園ができると「うるさい」と言うのです。そのように言われる方々は、ようやく余生?を静かに送れると思って永住の地を確したのに騒がしい……と感じられるのでしょう。中には、周りに『騒音』があると、資産価値が下がると言った声もありました。

私の家から徒歩1分ともかからない場所に、認可保育園があります。幸い、ほとんど待機児童問題は発生していないとのことです。いつも園児の元気な声が聞かれます。まず、子どもが伸び伸びすくすく元気いっぱいが大切ですね。誰もが子ども時代があり、やがて大人になり、『高齢者』になるのです。

地域との関係は、子どもの成育にとっても大切です。まして、地域住民と軋轢なんかあるのは辛いことです。園側も、いろいろ工夫しています。例えば、自宅近くの件の保育園では、施設を増築して、この場所に地域の方々を招いてお茶の会など始めました。この機会に、子どもたちの様子などお話し、みんなで子どもを育てよう!の考えがあるのかもしれません。

この保育園だけではありませんが、このような地域住民と触れ合う機会にお手伝いする『ボランティア』を求めているとの情報を受けました。

確かに時間内は、保育士の皆さんは、子ども相手で精一杯でしょう。そこで、それこそ地域住民にボランティアを募るわけです。このようなボランティアに応募される方は、理屈も計算もなく、ただ地域のために役に立ちたいとお考えなのでしょう。でも、これを『ボランティア』と園側が呼称するのはなんか変だなと感じます。園がボランティア活動をすると言われるのは収まりますが、園のためにーーひいては地域のためですがーーボランティアをしてくださいと言う形態は違うように思います。

もちろん、主体となる園を批判するのではありません。園と地域の良好な関係を確保すること、これは、子どもの健全な成長と高齢化する住民の平穏を確保すべき自治体の責務なのではないでしょうか?⚪️⚪️市が、認可保育園で、これこれのお手伝いをする方を募集するとのシステムが正論と思います。

なんでこんなことを申すかと言いますと、私が暮らす自治体は、都内でもまだ人口増加が見込まれる街であると市自体が言っているにも関わらず、この10年間で、特別養護老人ホームも、認可保育園も、ひとつも新規開設されていないからです。次々にマンション戸建が建設され、市には住民税固定資産税が入るのに、またしても予算は減りました。いったいどこにお金を回しているのでしょう。

国民の命を守るのは国の責任、住民の暮らしを守るのは自治体の責任です。土地を造成開発して、人を招く政策をするのであれば、地域住民どおし仲良く共存共生できる政策が採られてしかるべきでありましょう。地域の皆さんと上手くやってよと保育園に任せ、保育園は、ボランティアと称して地域住民のサポートを得て、住民サービスと言うか、地域住民との軋轢を無くす努力をすると言うのは、ちょっとやり方が違うのではと思いました。

この時期、自宅近くの小川あたりにホタルの姿が見られます。人と自然の共存も難しいですが、人と人の共存はさらに難しくなったようです。人に優しい世の中が望まれます。