「ソーリ、ソーリーはもう言わない」

2015年6月5日
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いわゆる安全保障関連法案に関する実質審議が行われるべき衆議院平和安全法制特別委員会で、機雷掃海の危険性に関する指摘をし、この件に関して防衛大臣に対して質問をしようとした野党議員に対し、安倍晋三内閣総理大臣が、「早く質問しろよ!」とヤジを飛ばしたことが、あちらこちらで議論を呼んでいます。

言うまでもなく内閣は、国会から指名を受けた内閣総理大臣が組織し、国会に対して責任を負う立場にあります。これは議院内閣制ですが、国会は、国民のために法律の制定等を行う国民の代表が選出された場です。

内閣は、国会に求められて法案の説明等を行うため出席しているのであって、国会議員に対してヤジを飛ばすなんて、国民を愚弄したに等しいことであります。安倍首相のあのヤジに関しては、流石に自由民主党副総裁や公明党委員長からも、苦言が呈されておりました。

それから、野党にも言いたいことがあります。それは、その翌日、形の上では、安倍晋三内閣総理大臣は、審議の妨害ともなるヤジを飛ばしたことの非を認めて、遺憾の意を表明したのですから、真剣に質疑を行うべきであります。

それが、今度は、外務大臣が曖昧な答弁に終始したとして、委員会を退席して審議を拒否、結局この日の委員会は、散会となってしまったことであります。ある新聞社によると、この日は、委員会のテレビ中継がないので、野党は、始めからボイコットする作戦だったなんて皮肉られていました。こんなこと、『不偏不党』のマスコミに言われて、『弱小野党』の先生方は、悔しくないのでしょうか?

野党が問題にしたのは、安倍晋三内閣総理大臣が、「唯一自衛隊の集団的自衛権行使例として考えられる」としたホルムズ海峡機雷掃海に絡む質問でした。例えば、ホルムズ海峡が何らかの理由により閉鎖され、日本に石油が入らなくなった場合でも、これまでの政府答弁を踏襲する限り、それは『軍事的波及のない事態』に過ぎず、集団的自衛権の行使の対象にはならないのだと言う当たり前のことを問うたわけで、これに対して外務大臣の答弁が明確ではないなんて、おかしなことを言うものだと思います。

野党議員曰く、「平成10年の『軍事的な波及のない事態は、周辺事態に該当しない』と言う外務省局長の答弁でよろしいでしょうか?」これに対して外務大臣は、「平成11年に、政府見解が示され、それを今日まで維持していると言うご説明をさせていただきます」と繰り返し答弁しました。

野党が言う平成10年の政府見解を踏襲していないとは、外務大臣は、一言も言っておりません。私は、大臣が言われる平成11年の政府見解とやらは知りませんが、もし、それが前年平成10年の政府見解とは、真っ向から異なる見解だったのであれば、16年間も、こんな大事な事柄が、国会で取り上げられることがなかったはずはなく、ダメ出ししなくても良いのにと思います。

まして、審議拒否とは。野党は、自信を持って、「ただいま外務大臣から、単に石油が国内に入らなくなって困窮したからと言って、ホルムズ海峡に機雷が置かれてもいない場合には、自衛隊は派遣されないとの平成10年以来の政府見解は、当然維持されておりますのと確認を得られました」と声高々に言ってやればよかったのです。

アメリカ合衆国では、大統領演説や連邦議会では、ヤジは聞かれないと言われますね。これは民主主義の先進国と言われるアメリカでは、これらに対するヤジは、国民を愚弄したものとの考えがあるからだとされます。このあたりこそ、アメリカのマネをして欲しいですね。

内閣、その長たる内閣総理大臣はもとより、国会議員もまた、国民から選ばれた、国内のために仕事をしていると言う自覚を持っていただきたいものです。