福本悟がご案内する初夏の福岡三大珍味です。

2015年6月18日
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世の中には、珍味と言われるモノがあります。世界三大珍味と言われるのは、フォアグラ、トリフ、キャビアですね。宍道湖の七珍は、私は全部言えませんが、美味しそうです。どこそこに行けば、その場所での珍味と言われるものはありますね。福本悟なりの珍味もあるのです。

北部九州では、この時期しか食べられないモノがあります。この時期外せないのは、剣先いか(ヤリイカ)と唐津のうにですが、それに勝るとも劣らない三大珍味は、コレです。だいたい6月から7月の博多祇園山笠のころまで、福岡市内の柳橋連合市場や天神岩田屋さんでは見られます。

『あぶってかも』『まじゃく』『あげまき』です。

あぶってかもは、私が福岡で暮らした30年前には、博多湾でたくさん獲れました。スズメダイのことで、漁師さんが獲れすぎて困るので、船上で炙って食べたところ、小さな魚なのに骨が多く、頭は硬いので、バリバリ噛むしかなかったことから、『あぶってかも』の名が付いたとされます。手のひらサイズで、確かに骨が多くて食べられるところは少ないですが、これが脂が乗って美味しいのです。現在は、ほとんど獲れなくなり、柳橋連合市場の常連料亭では、高級食材として仕入れていると聞きました。主として熊本県、福岡県で食されています。

まじゃくは、有明海の泥の中に生息するエビでもないカニでもない、外形はシャコに似た甲殻類です。有明海は、長崎県、佐賀県、福岡県、熊本県に跨がる九州最大の湾であり、現れる干潟の面積は、日本最大とされる海であります。この干潟には、むつごろうをはじめ希少生物が多く生息し、珍しいここにしか居ない生物たちを目にする(食する)ことができます。

まじゃくは、泥の中にいるので、名人が筆(割り箸でも可能かも?)を泥地に突っ込むと、これにまじゃくがくっ付いていて、そのまま引き上げて捕獲する漁法であります。

有明海の中でも、福岡県大牟田市から南、熊本県で良く捕獲されると聞きます。唐揚げで食べるのですが、食いつく場所によって違った味がするので面白いです。一見ザリガニかと勘違いする、山笠のころにしか目にしない珍味かつ美味です。

あげまきは、『揚巻貝』のことです。古くは瀬戸内海、九州、韓国と中国東側で獲れたところ、日本国内では、長く有明海にしかいないと言われた時期があったのです。二枚貝で、マテ貝と勘違いされます。あげまきの名は、古くは日本の子どもたちが、髪を左右に分けて角状に巻き上げた髪型をしていたことから付けられたとされます。基本的には、焼いて食べますが、ちょっと茹でて冷やせば、寿司ネタとしても使われます。

あげまきは、司法修習生だった30年前に初めて食べて以来、毎年初夏の福岡では食べられたものです。しかし、例の有明海水門閉めにより、有明海からは死滅したのです。有明海の生態系を完全に変えてしまった水門閉の映像の中で、海底に沈んだあげまきの死骸を見たときは、唖然といたしました。同じく私が大好きだったタイラギ(平貝)も、有明海からほとんど姿を消してしまいました。

あげまきは、現在全てが韓国産となっています。しかも、年によって違いはありますが、こちらもかなり値が張ります。ただし、福岡市内には、当然生きたまま入ってきますから、新鮮そのものです。考えてみれば、博多湾その後ろの玄界灘で獲れた魚介が、築地に運ばれると考えれば、釜山から博多は近いものです。

今年のあげまきは、良いようです。岩田屋さんで848円で買ったあげまきは、翌日でも生きていて、玄界の匂いを醸し出しながら、美味しく焼けて食べられました。

これらが、福本悟の初夏の福岡三大珍味です。これが冬になるとどうなるか……。

日本の四季を感じ、また、四方が海に囲まれ(福岡県は、玄界灘、周防灘、有明海と三方が海に囲まれ)た地形が齎し出したしあわせを感じるときであります。珍味と言われますが、こうして毎年同じ楽しみをくれるのは、日常生活そのものに入り込んでいるとも言えましょうか?珍味もまた妙味です。皆さんにも、きっと生活に溶け込んだ珍味があると思います。