アメリカ合衆国のある州にある刑務所で、殺人罪で有罪判決が確定して服役中の既決囚2名が脱走したとのニュースが入ってきました。
この脱走は、何らかの機器または道具を用いたことが明らかと言われており、数日後、この刑務所内の洋服を仕立てる作業場に勤務していた女性が、ドリル等を服役囚らに渡した嫌疑で逮捕されたと報じられております。
日本の刑務所は、外部の業者が立ち入って作業等することは、基本的にないと思っています。
よく、刑務所内の刑務作業により作られた家具等が、販売される機会がありますね。
また、国家試験の問題は、刑務所内で作成されていることが多いです。これは、日本の刑務所が閉鎖的、すなわち、中で何が行われているか外部からは掴みにくいことによって、実現できることであります。 有罪判決が確定して受刑中の人も、やはり『逃げたい!』と思う気持ちがあるわけです。
まだ起訴されず、有罪判決を受けていない段階の被疑者は、なおさら『逃げたい!』と思っている人は、少なからず存在するのだと思います。逃げたいとは、逃走するのではなく、他人に罪を被ってもらいたいとの『卑怯な』『厚かましい』思いに繋がるようでもあります。
先日福岡県内の警察署に勾留中の覚せい剤取締法違反の被疑者が、留置管理係の警察官に対し、同じ署内の留置場に勾留中の知人に、この件の罪も引き受けてくれるよう『伝言』を依したこと、そしてこの警察官は、実際『伝言』したことが、この知人の供述により判明したと報じられております。
どうやら、伝言を依頼した被疑者が、福岡県警あげて撲滅を目指している指定暴力団の組員だったことから表面化したようで、とんでもないことだと思います。
何がとんでもないかって、『逃げたい!』と思うのは、本人のある意味自然な感情、しかし、他人は違うはず、『逃がしたい!』と思うのは自然な感情だと言えますか?
私たち弁護士は、刑事弁護人として被疑者と接見することが、とても重要な職務です。
接見交通権と言われるものがこれです。ときに録音機を持参した、写メで撮影したなんてことで、検察庁等から、弁護士会に担当弁護士の懲戒請求などなされることがあります。
中には、被疑者から聴取した事実を確認するため関係者と接触しただけで、証拠隠滅なんて疑いをかけられることもあります。
留置管理室、業界用語で『看守さん』は、ストレスが溜まるお仕事だと思います。
でも、『真実』を曲げる行為を、しかも職務に絡んで行うのは、いったいなんの意味があるのでしょうか?現段階では、金銭授受はないそうです。
報道では、この警察官は、「信頼関係が築け、業務が円滑に遂行されると思った」と供述したそうです。
誰と誰の信頼関係なのか、なんの業務がスムーズに進めばよいと考えたのか、報道の限りでは明らかではありません。
『伝言』を聞いた『知人』は、「自分がやった」と供述し、その後警察官からの『伝言』のとおり対応したと訂正したそうです。
この警察官には、暴力団員とされる被疑者を逃がす意図まではなかったでしょう。暴力団との信頼関係なんて『まさか』ですから。弁護士としてとても気になるのは、単に犯人を逃がす手伝いをした、つまり犯人隠避の罪が成立することが問題ではなく、『業務の円滑』とは、要は、犯罪が起きたら犯人を挙げることが重要、『犯人』が誰かは関係ないなんてこの警察官が考え、教えられていたのではないかと言うことです。
もし、件の暴力団組員が否認するなど捜査が困難を極めていたら、折良く『犯人』になってくれる者がいたら……の思いに至ることはなかったのかの疑いであります。留置管理室の手柄で捜査は一件落着?そんなことがあろうはずがありません。これは一福岡県の特別なケースだなんて終わらせず、警察組織の問題として、『真実追求』をして欲しいと願います。