アメリカタイム誌の『今年の顔』選出に寄せて。

2015年12月18日
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アメリカ合衆国のタイム誌は、今月年末恒例の『今年の人』に、ドイツのメルケル首相を選んだと発表しました。欧州の債務危機や中東などからの難民受け入れに対する行動力を評価し、『多くの政治家であれば恐ることをも自国にも求め、暴政と安易な便宜主義の双方に立ち向かい、確固たる倫理的指導力が不足がちの世界に、それをもたらした』ことが選出理由だそうです。

今年の顔には、アメリカ合衆国共和党の次期大統領候補として有力視されるドナルド・トランプ氏も『候補』だったそうです。女性が選出されたのは、1952年の英国エリザベス女王、1986年のフィリピンコラソン・アキノ大統領らがおられるそうです。トランプ氏は、アメリカ共和党でも右派として知られ、その主張する強硬的政策は、これまで物議をかもしてきました。最近では、イスラム教徒の全面的アメリカ合衆国への入国禁止を言って、支持を集めているようです。

タイム誌が紹介するメルケル首相選出の理由と、トランプ氏の主張は、わかりやすいです。かたや難民等を自国で受け入れる、かたや異教徒、自国に害をなすおそれがあると判断される者を排除する趣旨だからです。ちなみに、先月起きたフランスでの同時多発テロ以降、米国内では、トランプ氏支持が増えているそうです。トランプ氏は、イスラム教徒排除は、先の大戦中、民主党ルーズベルト大統領が、米国内にいる日本人を隔離したことを挙げ、違憲ではないと述べたと伝えらています。

『危機』が発生すると、ターゲットを作って徹底的に排撃するやり方は、かつてのナチスドイツが典型的ですが、相変わらず一定の支持があるようです。危機を煽る、そして政治に求めれるところをごまかすには、大衆の感情に入り込むやり方が効くのです。自分自国にとって何がいけないのか、なにをすべきかを冷静に訴え続けるやり方は、なかなか理解共感を得られないですね。

メルケル首相が今年日本に来たとき、『ドイツは、過去に学んだ』旨述べました。これにより、敗戦国でありながら、ヨーロッパ諸国から許しを得られ、国際社会に復帰したと言われました。ところが、『メルケル首相、ナチスドイツと日本軍を混同』なんて論評する新聞社はともかく、日本国民の多くは、ピンとこないのではないでしょうか。

私は、過去とは単に先の大戦だけを指すものではないと思っています。東日本大震災による福島第一原発の事故が起きました。未だ避難所暮らしの方がおられ、廃棄物の最終処理場は、完全確保には至らず、問題賠償も解決していないのに、なんで再稼働に踏み切るのでしょう。

でもまあ、日本には、自国の原発事故による避難民がおられるので、他国の難民まで、受け入れることはできないとなるのでしょうか。また、歴史に学べとか、『謝罪』とか言われるが、『強制連行』されたのは日本人だって同じ……。いや、戦時中アメリカ合衆国は、現地日本人に対して、人種差別的な酷いことをしたから謝まれ!なんて声は聞かれません。たぶん、日本だって、アメリカに対して謝れ!なんて言っていないから、アジアのある国々はしつこいなとなるのでしょうか?

メルケル首相は、どんなふうに思われるでしょうか。