明太子が福岡博多の最高傑作と言われるのはなぜでしょう?

2015年12月22日

 
ピリッと辛くてコクのある、暖かいご飯にピッタリの『明太子』、福岡博多土産の定番から、今や全国区の味となりました。

 

昔は、『からしめんたい』と呼ばれていた記憶があり、かなり唐辛子がきつかった印象でした。明太子は、日本の新しい『食』となった感がありますが、なぜ福岡博多が明太子の発祥の地となったのかご存知ですか?

 

福岡は、本当に魚が美味しい街です。玄界灘、有明海、周防灘と三方が海であり、中央区天神から徒歩圏内に博多湾があります。長浜市場は、九州そして全国また、世界中からの魚が水揚げされます。そんな福岡市にわずか1年住んだだけで完全にはまってしまい、福岡をあちらこちらで宣伝している私は、最近まで、福岡博多と言えば『明太子』がほぼ真っ先に出てくることには、違和感があったのです。

なぜなら、明太子の原料となるスケトウダラは、福岡県近海では獲れず、北海道近海の物が最高とされ、ロシアやアラスカあたりの物も入ってきているからです。つまり、福岡は、あんなに魚が豊富で美味いのに、なんでわざわざ遠くまで獲りに行き、地元ではない魚を使った食品を作るのかであります。 これは、福岡市博多区中州が創業の地で、ここに本店を構える株式会社ふくやさんの歴史、すなわち、『ふくやと博多と明太子』を知ると、その感動とともに、「やはり福岡博多のものだ」と納得できるのです。

以前少しこの『ひとりごと』でも触れたことがあったかもしれませんが、『アビスパ福岡J1昇格』が決まったこの機会にお話しさせてください。 福岡博多に明太子が登場したのは昭和24年1月10日です。現在は、1月10日が『明太子の日』とされています。昭和24年1月10日、ふくやの創業者川原俊夫氏が、中州の小さな店舗に、明太子を並べたのでした。川原氏は、戦前朝鮮半島釜山に住んでいて、戦後この地に引き上げてきました。このころの中州は、博多出身者以外を受け容れるおおらかさがあったのだそうです。川原氏は、この地で生活のためいろいろな食品を販売したそうですが、なかなかうまくいきません。

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それで川原氏、釜山に居たころに食べていた韓国風に味付けされたたらこの味が忘れられず、あの美味しいたらこを博多の人に食べてもらおう!と考え、原料を手配して昭和24年1月10日、店舗に『明太子』を並べたのです。 『明太子』とは、『明太』すなわち、朝鮮語では『ミョンテ』と言われるスケトウダラの子を意味するそうです。キムチで知られるとおり朝鮮半島韓国では、唐辛子を使う料理が有名ですね。川原氏、釜山ではスケトウダラに唐辛子等を混ぜたこの食品を食べていて、これは博多の人にもぜひ味わって欲しいとの願いから、販売開始から味の追求を続け、何度も作り直し、納得のいく味にたどり着くまで10年、博多の街に『明太子』が広まったのでした。 つまり明太子は、朝鮮半島韓国釜山を源流とし、川原氏が博多の人に、そして日本の食卓に馴染んでもらいたくて製造したまさに『博多の味』なのです。

 

明太子が広まるに従い、川原氏のもとに明太子の作り方を教えて欲しいとの申し出が多くあり、川原氏は丁寧に教えてあげたのです。また、周囲からは、製法特許を取ることを勧められたときも、川原氏は、「特許なんていらん。いろいろな明太子があったほうがお客さんに喜ばれる」と言って、明太子の普及に務めたと言われます。川原氏の根底には、自分を受け入れてくれた福岡博多に恩返ししたい、博多の人に明太子で喜んでもらいたいの思いがあったのです。

 

ふくやは、『元祖』を名乗らないことで有名ですね。ふくやの明太子が『味の明太子』と称するのは、ふくやを育んでくれた博多に、ずっと選んでもらえる『いつもの味』であるため、『味の明太子』と言われるのだそうです。博多なくしてふくやなしの思いなのでしょう。 そんな川原俊夫氏の思いが面々と受け継がれた明太子を通して博多に貢献すること、ふくやさんは、様々な活動をされています。そのふくやさんの思いが繋がったのが、2015年アビスパ福岡J1昇格でしょう。

 

数年前、アビスパ福岡が債務超過でJリーグのライセンサ剥奪の危機に至ったとき、ふくやさんは、アビスパ福岡を救うため、博多の街からプロサッカーの灯りを絶やさぬため、販売した明太子の代金を、全額アビスパ福岡に寄付されました。

 

これには全国のサッカーファンが感動し、アビスパ福岡は生き返ることができました。

 

そして2015年12月6日、『大阪冬の長居の歓喜』の後、ふくやさんは、『祝アビスパ福岡J1昇格、おめでとかんかん』となる明太子ツナを特別に販売されています。 こうしてみると、『明太子』は、福岡博多の歴史、発展とともに人々に溶け込み、この地に息づいた食品であり、文化だと思います。

 

なにも博多湾そして玄界灘の鮮魚だけが福岡の魚ではないと言うことです。アビスパ福岡のJ1昇格を受けて、ふくやさんからのメッセージがありました。「ふくやがあるのも博多のおかげ。

 

博多のために尽くしたい。」「これからも歩み続けます。博多の味、博多の人とともに」。

 

これぞ福岡博多の味です。泣けますね。なお、ふくやさんは、福岡空港には出店されていません。ANAFESTの土産物店にて、全日空商事のパッケージに入った『ふくや』マークの小型明太子はありますが。ふくやは、福岡県内には30店舗以上あります。都内にも2店舗あります。元祖を名乗らない福岡博多の味の明太子、どうぞお召しあがりください。