かなり前のことですが、小田原に行く用事があり、新宿駅から小田急ロマンスカーに乗車したとき、お気の毒な乗客を見ました。 私の隣は空席でしたが、通路を挟んだ席には、元気なおばちゃん3名が、前の座席を回転させて向かい合わせにしたところ、発車寸前に、会社員風の女性が、向かい合わせで本来空席となっている1席にやってきたのです。おばちゃんたちはもう、ピーチクパーチクで大騒ぎなのは仕方ありませんが、空いていると勝手に信じた件の1席には、山ほどの荷物を置いてあり、女性は座ることは難しいようです。 私は、「どうぞこちらへ」と私の隣の席を指す合図をしましたが、この女性、軽い会釈をして、おばちゃんたちが荷物を退かすまでずーと立っていました。 私のこと、胡散臭い奴だと思われたのかもしれません。ようやく指定された座席に座ることができたようですが、おばちゃんたちは、回転した座席を元に戻すことはありません。 しかも、相変わらずアーでもないコーでもないと騒いでいて、ノートの類を出して、なにやら作業している女性は、さぞ落ち着かなかったと思います。小田急ロマンスカーは、箱根、御殿場、江ノ島に向かいますが、途中町田、相模大野、本厚木等にも停車しますから、全員が観光客ではないのです。最近では、JR特急等の空いていた自由席車両に乗車した際、車内アナウンスで、途中お客様がたくさん乗車されるので、前後の座席を回転させないように、また、横の座席に荷物を置かないようにと言ったお願いがなされることがままありますね。 航空機ではどうでしょう。 私は国際線には乗車しないので、長時間機内に居ることはなく、迷惑行為には遭遇しません。ただ、国内線でもほぼ例外なく、キャビンアテンダントから、「座席の背もたれを倒すときは、後方のお客様に配慮されるようお願いします」とアナウンスがあります。私もいちどだけ、変なアベックの後ろの座席になったとき、男が意味なく、女の座席の背もたれを思いっきりフルに倒したところに当たったことがあります。太っているほうが悪いと諦めて、少し足を通路に出して、やり過ごしたものでした。 このリクライニングの権利を巡っては、特にアメリカで議論されています。リクライニングを倒した、また、それを阻止する器具まであるらしく、アメリカではしばしば乗客どおしがトラブルになって、航空機が目的地を変更するなどの影響が出たと報道されます。 つい最近も、ロサンゼルス発サンフランシスコ行き米国国内線で、離陸後10分で、リクライニングを倒されて激怒した男が、シートを倒した女性の首を絞めたり殴ったりしたため、機長の判断で、ロサンゼルス国際空港に緊急着陸したとニュースになっておりました。 国内線しか搭乗しない私は、普通席で、シートを倒したことはありません。確かにしこたま飲んで福岡や新千歳空港から帰るときには眠りたい欲望があり、可能な限りJALのクラスJを確保したいのです。 しかし、同じように?行動する人が多いのか、うまくいかないことが多いです。クラスJだと、ーー本当は、いけないのかもしれませんが、何のためらいもなく、シートを倒せるのです。これが私のわずか数時間の機内の我慢とマナーです。 でも、意外なことに?、先月でしたか、アメリカの大手オンライン予約会社エクスペディアが行った機内マナーに関する調査では、座席の背もたれをいっばいまで倒す行為は、機内迷惑行為の9位にランクされていました。1位は、前の座席を蹴る!であり、61%を占めていました。 座席を蹴るとは穏やかではありません。 でも言わんとするところはなんとなくわかります。後ろの座席の乗客が、落ち着きなく前の座席のテーブルをいじったり、座席前のポケットを出し入れするなど、要するに、前の座席の人の背中に当たる場所を動かす行為が気になると言うことだと思います。次はほぼ同率で、親が、騒ぐ子どもに注意しないとなっているようです。ちなみに、『酔っ払い』は5位にランクされていました。 通勤電車内のことでも言いましたが、人間は、後ろには目が行き届かないのです。航空機内の自分の座席の後ろで、なにやらやられていても、対応不可能です。それゆえに不快、迷惑行為となるのでしょう。 ハッキリ言って、私は、お子さんがうるさいことよりも、子どもが、前の座席を押したりカタカタやっているのを放置する親が、マナーを知らないなと思います。もし、前の座席の乗客が振り返って「やめて!」と注意されても、そんな親は、何のことかたぶんわかっていないと思います。 あるとき私は、後ろに居た子どもから水(ジュース?)をかけられ、また、頭を叩かれたことがありました。おそらく親は寝ていて気づかなかったのでしょう(あるいは、まずいことになっているとわかってシカトしたのか?)。 要するに、国内線では、シートを倒すことは、ほとんど迷惑行為にはならないのが現実でしょう。先のエクスペディア社は、適切な航空機の乗り方、座席の座り方について、『きちんと膝を曲げ、足を身体に寄せて座る』ことだと案内しています。 これは、太った人だと畏まったよう見えるでしょうね。畏まっていれば、災いはないと信じて、今日も機内の人となるのです。