平成27年末、驚きのニュースが飛び込んできました。
日本と韓国両政府は、多くの日本人の仕事納めとなった12月28日、ソウル市内で外相会談を開き、いわゆる慰安婦問題を決着させることで合意しました。 その合意内容の骨子は、慰安婦問題は、日本軍の関与のもと、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題だとし、日本政府は責任を痛感しているとした上で、安倍晋三内閣総理大臣は、「すべての元慰安婦の女性に心からお詫びと反省の気持ちを表明する」と表明、日本政府は、韓国が設立する慰安婦の支援を目的にする財団に10億円拠出して、両政府が協力して元慰安婦を支援する事業を行う方針が決められました。
そしてこれが両国にとって、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決であることが確認されたものです。
また、韓国は、かねてより日本政府がその撤去を求めている在韓日本大使館前に設置されている慰安婦像については、関連団体と協議して、適切に解決するよう努力すること、慰安婦問題では、今後両国とも、国際社会で互いを批判することを控えると言うものであります。
2015年は、先の大戦が終結して70年経過した年でしたが、その当時、日本国の一部とされていて、日本の敗戦により独立した朝鮮半島、その後南北分かれて休戦中の大韓民国と国交を回復した50年が経過した年でもありました。
日本と韓国が国交を回復したのは、1965年6月22日に締結された『日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約』、すなわち日韓基本条約であります。この条約により、日本と韓国は、それ以前に締結されていた諸条約が全て無効であることを確認し、韓国は、日韓併合後も含めて、日本に対する一切の請求権を放棄する、日本は、韓国が、朝鮮半島における唯一の合法国家であることを承認し、有償無償を合わせて5億ドルの円借款(別に民間の借款3億ドル)を行うことを骨子に、国交が回復されたのでした。
日韓国交回復の『立役者』は、朴槿恵現韓国大統領の父である朴正煕当時の韓国大統領、そして日本国内閣総理大臣安倍晋三氏の祖父岸信介氏であったかもしれません。日韓基本条約は、朴正煕大統領と岸信介氏の弟である佐藤栄作内閣総理大臣の時代に締結されているのです。
韓国との国交回復に関しては、佐藤栄作氏の兄岸信介氏の悲願のひとつでもあり、1950年代から、外交ルートで、その準備が着々と進められていたところ、これが一挙に現実化したのは、1961年に軍事クーデターにより韓国を収め、その後大統領に就任した元日本陸軍士官学校を卒業して、日本名『高木正雄』と称する朴正煕氏によるところ大です。朴正煕氏は、クーデターで政権に就いた後、日本との関係改善に努め、当時国民所得がひとりあたり60ドルと言う世界でも相当な貧困国家と言われた韓国を、政府に金を集めて開発独裁と言われるごとく軍事政権でありながら、経済基盤の確立を重視し、『漢江の奇跡』と言われる国民所得を20倍にまで跳ね上げる高度経済成長を成し遂げたのでした。
そのときのお金は、日韓基本条約により国交回復した日本から流れていたことは、周知の事実です。
今でも韓国歴代大統領の中では、群を抜いた人気を誇る朴正煕氏、その娘としての人気があったゆえに、大統領になったと公然と言われる朴槿恵現実韓国大統領は、慰安婦問題に端を発したこのところの日韓の冷え込みについては、思うところがあったのかもしれません。
先日は、朴大統領を中傷したとして起訴された日本の元大手新聞社ソウル支局長に対する韓国内の刑事裁判で、韓国政府から裁判所に対して『要請』がなされていたことが、裁判所によりあきらかとされました。日韓両国の思惑がどこに向かっているのか、また、アメリカはなんと言ったのか、気にならなくはありませんが、率直に今回の両国の合意は良かったと思います。
慰安婦問題等の個人からの日本に対する損害賠償請求は、日韓基本条約により、韓国政府が、国内問題として責任を持つから円借款をと求めれた経緯はあります。ですから、かねてより日本政府は、『解決済み』と言っていたのです。ところが、かの条約締結にあたり、朴正煕政権は、それを国民に隠していたことと、韓国の最高裁判所が先年、韓国政府は、慰安婦に対する賠償に関して、日本政府と誠実に協議する義務があると判決したこと、そして日本国内では、一連のある新聞社の元記者による『従軍慰安婦誤報問題』に関するバッシングが、やがて「日本軍の関与はなかった」「慰安婦問題など存在しなかった」のごとく一部マスコミや論者により誘導されていたことや、現内閣総理大臣が、かつて日本政府が承継して来た『反省とお詫び』を間違いであるかの見解を露わにしたことから、互いが互いを非難して、冷え切った時代に入り込んだのでした。
そんな中、気持ち悪いくらい急転直下、どうしてこうなったの、何がそうさせたのかわからないですが、この問題が解決したことは、素直に嬉しく思います。 これから、慰安婦問題に関して執拗に個人攻撃を続けている方々、また、『軍の関与はなかった』『従軍慰安婦は存在しなかった』と声高々のみなさん、安倍内閣は不信任でしょうか。
私は、きさらぎ法律事務所を訪れるみなさんに対して、『事実は変えられない。変えようとすると必ず無理がくる』『相手が降りてきたら、意地や見栄を捨て、受け入れること』を申します。たったひとり新聞記者が、一部誤報を書いたからと言って、事実は変わりませんし、消すことはできません。
また、『村山談話』のころ、『女性のためのアジア平和国民基金』を創設して、国民から拠出された金員と国債から福祉支援金を元慰安婦の方にお渡しするシステムが構築されたにも関わらず、韓国内の一部の団体から、「 これは日本政府からのお金ではない。反省しない日本からそんな金を受け取ったら公娼になる」と元慰安婦の方々に触れて回ることがあって、互いに批判を繰り返すことになりました。
振り返れば、社会党村山富市内閣だからできた側面もあり、あのとき韓国では、日本政府と民間の力で出来上がった基金を蹴飛ばすべきではなかったのです。
私は、今回の外交、政治決着は、『事実は変えられない』『意地や見栄を捨てる』ことを認識し、実践することにより、物事の解決に進むのだと改めて確認した次第です。
2016年は、このような良い政治が行わられるよう、内閣総理大臣閣下頼みます!!