政府は、好調な海外からの観光客の入国が続く状況を活用すべく、本年度より、国内の空港は、民営化する方針を進めることにしたと報じられています。 空港民営化とは、国もしくは自治体が管理する滑走路などの施設と、空港ターミナルビルの運営を民間に一括して委託する手法で、空港民営化の第1号は、今年7月に予定されている仙台空港です。政府は、平成31年度には、福岡空港の民営化を目指していることは、既に発表されておりました。 実は、離発着間隔の短さ世界一の福岡空港は、平成30年に、現在の滑走路に並行して、もう1本滑走路が開設されることが、紆余曲折を経て決まったわけですが、その前提には、空港民営化が意図されていたと、まことしやかに言われてきたのです。 空港が赤字になるのは、高い着陸料の問題が深刻です。着陸料とは、着陸料の際に航空機運航会社が、空港の管理者に対して支払う費用ですが、日本の着陸料は、世界的にはかなり高額であることが知られています。 確かオーストラリアは、着陸料は不要と聞いたことがあります。現在の日本では、原則として航空機の重量と着陸回数により決まるので、海外の航空会社にとっては、数多くの大型機を日本に乗り入れることには、コストの問題があったのです。 着陸料を得た空港管理者は、滑走路や誘導路のメンテナンス、建物の補修などにこれを充てるわけですが、空港建物を管理する会社が、自由に金額を決めることはできない仕組みです。すなわち、法律?により、国土交通省が許認可するうえ、その変更を命じることもできることになっています。 安全面からの規制と言えば規制ですが、これが空港運営を硬直化して、赤字を生み出すと言われるのです。 民営化第1号となった仙台空港では、この着陸料、航空機を利用して仙台空港に来る搭乗客の数、すなわち埋まった座席数で決めると言うユニークな方法が注目されました。確かに滑走路などの施設と、ターミナルビルの運営を一体で民間が行えば、要するに、国が口出ししないならば、委託を受けた民間企業は、新路線の誘致や着陸料の設定(引き下げ)などが期待でき、そうすることにより、多くの航空機が着陸し、特に海外からの観光客を呼ぶことができると言うものです。ここ数年、海外からの観光客が増加している北海道の空港に、民営化の期待が寄せられている雲行きであります。 北海道知事は、2020年をめどに、外国人観光客300万人を打ち上げています。しかし、道内の空港では、特に国際線は、新千歳に集中しており、ここで新千歳空港を民営化すると、さらに一極集中が強まり、他の道内の空港は廃れていくとの懸念が、北海道側にはあるのです。 北海道は、他の空港との格差拡大を恐れて、新千歳空港の民営化には慎重姿勢と言われます。北海道内には、国が滑走路を管理する空港が、新千歳、函館、釧路、稚内で、国が所有する滑走路を自治体が管理する空港が、旭川と帯広です。こんなことを言っては、甚だ失礼ではありますが、現在の稚内とか帯広の空港一括管理を受託する企業は、そう簡単には出てこないのではないでしょうか。企業とは、利益を得るためにあるからです。その意味で、北海道の懸念はわかります。 さて、菅義偉内閣官房長官は、先日北海道新聞のインタビューに答え、「新千歳を含む道内6空港の一体的な運用が可能になれば、広域的な観光ルートの形成に大きな効果がある」と述べ、新千歳に集中している海外からの航空便を、他の空港に振り分け、さらなる外国人観光客の誘致が可能となるとの認識を示し、「政府は全面的に応援する。」とまとめたと伝えられております。 もともと国土交通省は、新千歳を民営化する場合、道内にある国の管理空港3つと一括して売却することを容認する方針でしたから、菅官房長官の応答は、これを確認してさらに進めるものと言えますか。 福岡と札幌によく行き来する私は、方や九州、方や北海道で、決定的に違うものを感じています。それは、北海道の人は、なんでも札幌だか、九州の人は、必ずしも福岡ではないと言うことです。北海道に行くと、札幌一極集中に気づかされます。新千歳空港のみが民間委託されたならば、海外からのお客様を含めて、さらに札幌集中が強まるでしょう。 かつて北海道の翼を標榜して立ち上げられた北海道国際航空エァドウは、新千歳のみならず、函館、旭川、帯広、釧路、女満別と本州空港を結ぶ路線を設けました。しかし、経営は苦しく、ANAホールディングスの支援を受けるかたちとなりました。私は、必ずしも全日空に好意を持つ者ではありませんが、仮に民営化された場合には、新千歳空港が、経営が赤字の他の空港の運営も引き受ける『広域民営化』が望ましいと考えます。 新千歳の儲けを、道内の他の空港にも配分するやり方です。北海道内全体の底上げで、まさに『チーム北海道』です。ANAホールディングスは、北海道全体の底上げに、良いことをしたと思うのと同じです。 空港の格差を無くすこと、それは北海道全体の利益だとの考えは、新千歳空港ターミナルビルを運営する北海道空港株式会社も同じ立場のようです。 この会社の代表取締役は、新千歳以外の空港を含む広域民営化に傾けば、自治体や関係企業と連携する、新千歳の収益を、北海道全体の航空網維持に役立てる発想があってしかるべきであり、新千歳空港が民営化された場合には、当然名乗りをあげるが、北海道経済に役立つかどうかで、他の空港もまとめることを考えたいとも述べたとされます。 さて、私がこの空港民営化に論を進めたのは、一極集中を無くす、全体の底上げと言うテーマは、常々言っている『富の分配』に繋がると思えたからです。新千歳空港の運営を受託した会社が、その儲け分を、他の道内の空港に回す、これは素晴らしいことではありませんか。 同じように、儲けた企業には、税金を負けてやるのではなく、世のため人のため、お金を回してもらうシステムを、空港民営化のように、国が音頭をとって行なって欲しいものです。道内経済に役立つかどうかを民間参入のポイントとしている北海道空港株式会社の姿勢と同じように、国民全ての経済が良くなり、格差を無くすためならどんどん儲けてお金を困っている国民に回しますよの企業が多くなると良いですね。 おそらく民営化なんてハナから反対!と言うだろうと思われていたであろう私が、これに賛意を示すような論調を張ったのは、こんな望みがあったからなのです。北海道空港株式会社の社長さん、本当にその気持ちを持ち続けてくださるならば、私は、新千歳空港ターミナルビルで今後も飲み食いして道内経済、ひいては格差是正に、こんなかたちで協力いたします。