今月開催された通常国会では、現在参議院予算委員会で、補正予算の審議がおなわれました。
この予算、ポイントは、今年の参議院議員通常選挙の前に、所得の低い高齢者向けに、一人当たり30.000円を配布すること、そのために不足する予算約36.000億円を、国家予算に計上すると言うものです。
既に衆議院予算委員会では可決しており、予算については、憲法上衆議院の議決が優越しますから、結局のところ、衆議院で与党が過半数どころか『絶対安定多数』の議席を保有している以上、参議院でなにをしてもダメは、決まっているのです。でも、野党は、このいわゆる低所得高齢者給付金に関する問題について、広く国民に知ってもらおうと、それなりの努力はしていると言ってあげてよいでしょう。
国家の歳入の3分の1が国債であり、国の借金は減らないのに、どこにそんなお金があるのでしょう。この給付金が選挙目当て、と言うよりも、つまるところ参議院で3分の2の議席を獲得して、なし崩し的に憲法を変えてしまおうとする目論見の一環であることは、多くの人はわかっています。低所得層と言いながら、『高齢者』を対象とするところがミソですね。日本の富の約7割は、『高齢者』が保持していると聞いたことがあります。
振込詐欺に遭うのも高齢者ですね。高齢者は、資産は保持しても消費はしません。相続税の軽減のために、孫への贈与を優遇しても、それは消費とは言えません。私は、必ずしも消費を起こすべきだとの論調に、賛成するものではありませんが、かの消費税増額によっても消費は起こると言う主張さえある中、この給付金によって、経済は活性化するのでしょうか。 この給付金は、『下流老人』の世相に、上手く乗っかったと思います。下流老人と言われる方々は、要するに、明日の生活のお金に事欠いているのです。
低所得とは、文字とおり『資産』ではなく『所得』を意味します。高齢者のうちどれくらいが、課税される所得がおありでしょうか。年金生活の方がほとんどだと思います。ちなみに私の父は船員として勤め、一人になった母には、年間300万円くらいの年金が支給されます。
しかし、母は非課税です。これには私自身驚いています。要介護5で施設で生活する人間にお金を配っても、何に使うと言うのでしょう。 以前『定額給付金』が、子育て世代を中心に配られたことがありました。これは家計を楽にして、消費を起こす目的とされましたが、参議院予算委員会で、この給付金の7割程度は使われなかったとの答弁がありました。
それでは今回の高齢者定額給付金については、調査し統計を取るのかの質問に対して、「する予定はない」とのことであります。何らかな新たな試みがなされた場合、これの成果を追うのはごく当たり前になされてきたことだと思いますが、何を意味しているかわかりますね。もっとも、安倍晋三内閣総理大臣は、「高齢者のほうが消費は活発だ」と述べたと報じられていますが。 消費を生んで、将来の投資にするのであれば、一例として野党が挙げた奨学金の給付制は、意味があるかもしれません。
私立大学に通った私は、国公立大学は、授業料はほとんどタダだと思っていたのですが、現在は、平均して年間54万円くらいかかるのだそうです。
そして、この予算委員会で議論されるほんの数日前に、あるテレビ番組で、今後も国公立大学の学費は上がるいっぽうで、数年後には年間100万円になる、その場合、国公立と私立で違いがなくなり、奨学金受給者は、在学生の半数に達すると言う数字が出されていて、驚いたばかりでした。こうして若者は、借金からのスタートを余儀なくされるのです。
以前この『ひとりごと』でも取り上げた記憶がありますが、欧州では、消費税20%なんて言われますが、学校も医療も無料です。最近ある出来事で、尾木ママこと尾木直樹法政大学教授が、教え子たちが、『世界一子どもに優しい国』と言われるオランダの福祉教育制度を学んできたことが報じられたばかりです。
だいたいOECD、経済協力開発機構のメンバー34カ国のうち、日本は、教育への公的支出は4年連続最下位で、大学の授業料が有料で、奨学金の給付制を採用していないのは日本だけなのです。もともと日本は、若者に冷たい国のようですが、数々の先送りをして、次世代に巨額の債務を付け回してもいるのです。
まあ、内閣総理大臣によれば、先の日韓慰安婦問題では、「後世代の子らに、謝罪し続ける宿命を負わすことはなくなった」とのことですが。 参議院予算委員会で、内閣総理大臣に対して質問した野党議員によれば、今回の選挙直前に配布する3.600億円、これを国公立大学に通う学生の授業料に回せば、全て無料になると指摘しました。
私立大学出身で、息子2人も私立大学に通わせた私からすると、遡及効なく不公平?と思われなくないのですが、本当に将来を見据えれば、検討に値する提案だと思います。
一気に奨学金の給付制は無理だとしても、ひとつひとつ一歩一歩です。現在の世代、そしてこの方々が圧倒的に支持した政権により、巨額の負債を背負われた次世代の人々は、せめて自分は借金をしなくて済む世の中であることを願いたいでしょうから。