戦後レジームからの脱却って言葉、カッコいいと思われますか?

2016年2月5日
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戦後日本の出発点は、1945年8月15日の終戦、私たちの先人が、さまざまな思いで姿勢ただして耳を傾けた昭和天皇の玉音放送だったでしょう。


先の大戦の終結は、玉音放送の前日、ポツダム宣言を受諾したことに基づくものです。ポツダム宣言とは、アメリカ、イギリス、中国(対日参戦により、後に当時のソビエト連邦も参加)により、日本に対する降伏勧告と、戦後処理を宣言したものであることは、学校教育でおしえられたと思います。


今、歴史認識、歴史問題について、政府与党を中心に、それこそ歴史をひっくり返すような発言がなされています。いつも言いますが、人の評価はそれぞれ、でも、『事実』は変えられない、事実を変えようとする、事実を誤魔化そうとすると、必ずどこかで無理がきます。先の大戦が侵略戦争かどうかは、歴史家が決めるなんてどなたかは仰いました。



それはいいでしょう。でも、日本がポツダム宣言を受諾したこと、これにより終戦になったことは、天皇陛下の玉音放送にも現れている『事実』です。この『事実』を否定する、認めたくない人は、ポツダム宣言の内容を知らないのでしょうか。


今会期中の衆議院予算委員会では、安倍晋三内閣総理大臣に対し、憲法改正に関する見解等が問われています。安倍首相や自民党、保守と言われる方々は、日本国憲法が、占領下のアメリカ、特に左派占領軍の意向に基づいて、日本に無理やり押し付けられたものであるから、日本国民自身による憲法を制定すべきだと言われます。


これは、とても聞こえの良い説明だと、私は大学法学部で憲法を学び始めた当初より、感じています。同じく占領下で発足した 自衛隊の前身となる警察予備隊、そして日本国民より先に、アメリカ国民の前て約束して慌ただしく決まってしまった集団的自衛権、これらについて、「アメリカが……。」の声は上がりません。

まあ、そのことはもう言いません。翻って、憲法が占領下の……を言われるなら、ポツダム宣言の受諾こそ、アメリカ、イギリス、中国等の連合国が力ずくで、無理やり日本に受諾を迫ったもので、その『歴史的見直し』が叫ばれでもおかしくありません。


あるお方が大好きな『戦後レジュームからの脱却』は、戦後体制を根本から変えること、すなわちポツダム宣言→玉音放送→日本国憲法を否定することに繋がると思われます。

今はもう忘れられたのか、集団的自衛権に関する特別委員会が設けられる前、昨年5月に、党首討論が行われました。かつて日本が敗戦国となった戦争は、侵略戦争だったと歴史的には決着している、なぜなら日本が受諾したポツダム宣言には、きちんと『世界征服を目指した戦争』と明記されているではないかとして、内閣総理大臣の歴史認識を問われた安倍首相は、こんなふうに言いました。「ポツダム宣言は、つまびらかに読んでおりません。


ですから今、日本が世界征服を企んでいたとか紹介されましても、私つまびらかに承知しているわけではございません。ですから、そのことに関しては、ここで論評は控えさせていただきます…。」だいたいこんな感じだったと記憶しております。このやりとりを報じたのは、ごく一部の新聞紙でした。


この報道を知ったときは、相変わらず質問をはぐらかしているな、逃げて逃げて逃まくっておいて、やがて反対する側は何も対案?を示さず逃げて逃げて逃げまくっているとすり替えるんだなと、いつも同じ感想しか持ちませんでした。だって、つまびらかも何も、内閣総理大臣が、ポツダム宣言を読んでいないなんてあり得ないからです。


ポツダム宣言は、わずか13項目で、その内容は、日本国民を欺いて世界征服に乗り出した軍事勢力を放逐すること、日本国民の自由な意思による平和的政府を樹立し、民主的傾向を妨げる一切の障害を排除して、基本的人権を尊重すること、連合国は、日本国の侵略戦争を制止するために今日の戦争に至ったと言うカイロ宣言を履行し、日本国の領土は、本州、北海道、四国、九州と周辺諸島とし、侵略して奪った地域を返還することが、主な内容でした。

すなわち、カイロ宣言に続くポツダム宣言を受諾したことは、かつての日本軍国主義が、侵略戦争をしたことを認めたわけです。だからこそ、これを受け入れたくない勢力は、『戦後レジームからの脱却』と言う言葉を操っているのです。


しかし、この言葉の持つ意味、国民はわかっているのでしょうか?そんなふうに心配しておりましたら、当の安倍晋三内閣総理大臣ご自身が、戦後レジームからの脱却の原点であるポツダム宣言を、本当に知らなかったことを知りました。日本国憲法が、無理やりアメリカが押し付けただの言われるように、ポツダム宣言も、アメリカが強行的に、日本に受諾を迫ったのだと言うのが、安倍晋三氏の歴史認識だったからです。

ちょっと冗談では?としか思えまない歴史的出来事がありました。安倍晋三氏が、内閣総理大臣になる前、2005年にある雑誌での対談で、このようなご発言をされています。「ポツダム宣言と言うのは、アメリカが日本に原子爆弾を2発も落として日本にたいへんな惨状を与えたあと、『どうだ!』とばかりに叩きつけたもの」なのだそうです。???

日本がポツダム宣言を受諾して、無条件降伏したのは、8月に起きた2度にわたる原子爆弾の投下とソ連参戦が理由です。これは、小学校で習いました。1945年7月26日に戦争終結のために提案されたポツダム宣言を無視したからこそ、原子爆弾投下に至った、アメリカに言わせると、侵略戦争を終わりにする正義だったとなるのではありませんか。何言ってんの?

本当に知らなかったようです。でも、件の雑誌対談から10年経過して、自身内閣総理大臣になられてもなお、ポツダム宣言は、「つまびらかに承知していない」のだそうです。


小学校で習わなかったのでしょうかね。もつとも、このお方、有る意味一貫しています。日本国憲法もポツダム宣言も、方や占領中のアメリカが、方や原子爆弾を落としたアメリカが、「どうだ!」とばかりに強要したとの理解に立っておられるからです。

でも、日本国のリーダーであられ、あれだけアメリカとの約束を重んじた方です。未だつまびらかにお読みになっていなくて、アメリカの要人に、「アメリカが原子爆弾を2発も投下してどうだ!とばかりに……」を仰られては、ちょっとした外交問題に発展しかねない危惧を覚えます。


歴史認識を言われるのであれば、まず、正しい事実を理解することが先決ではないでしょうか?