勘違いは誰にでもあること、決して知らなかったわけではありません。

2016年2月19日
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人間には勘違いがあります。頭の中ではAと思っていたのに、うっかりBと言ってしまったケース、正解はAなのに、何かの事情でBと思い込んでいたケースです。昔、大企業の代表取締役会長さんが、東北地方を指して、『東北には熊襲がいる』とバカにした発言をしました。


その発言自体不適切とされましたが、『恥の上塗り』と評価されましたね。これは言い間違いなのか取り違えなのか議論がありました。これによく似た例として、『腰越状』と『勧進帳』を、『足利学校』と『金沢文庫』などが指摘されます。

勘違いは誰にでもあること、さぞかし当のご本人も恥ずかしい思いをされているでしょうから、あまり責め立てるのはいかがなものかと思います。そう言えば、安倍晋三内閣総理大臣も、先日自民党のインターネット番組で、一昨年北朝鮮が、拉致被害者らの再調査を約束した会談での合意を、『オスロ合意』と言われましたから。ストックホルムとオスロは、近い位置関係にあってともに福祉先進国、何と無く似ているし、少子高齢化社会が進む日本国の総理大臣として、気にしていたのでしょうか。


でも、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間で、両国との関係が良好なノルウェーが仲立ちするかたちで、1993年にオスロで合意されたイスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として互いに承認する内容の中東和平のあの合意と『言い間違える』とは……。

この安倍晋三内閣総理大臣の言い間違いは、『知らなかった』わけではないのですから、問題視されないのです。でも、本当に『知らなかった』あるいは、『忘れた』ケースは、その人の立場上問題とされるでしょう。沖縄北方担当大臣が、北方領土のひとつである歯舞諸島の『歯舞』を読めず、秘書官に「え~ なんだっけ」、あれはないですね。北海道知事は、やんわりとご意見されましたが、元島民をはじめ、北方四島の返還を心から願う関係者は、なんともいたたまれない思いだったでしょう。これは不勉強で済まされる問題ではないと思います。

最近、勘違いでも言い間違いでもない、軽い発言がなされた例があります。福島第一原発事故への対応で、担当大臣である環境相が、国が追加被曝線量の長期目標として示した年間1mSvに関するこの発言です。

「『半放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた」と。もしかすると、『軽い』のではなく、本当にそのように思っていたのか、はたまたそんなこと「どーでもいい」
との確信犯だったのかもしれません。

確かに福島第一原発事故は、民主党政権時代に起きました。でも、まさかあの事故は、民主党の責任だなんて思っていたのでしょうか。放射性物質の除染や、追加被曝の抑制などは、現政権でも重要課題とされていたはずです。たとえ除染がなされても、住民の帰還が進まない地域はあり、いわゆる長期目標は、国際放射線防護委員会が、原発事故から復旧する際の参考値とする年間1~20mSvの最も厳しい基準だったのではなかったでしょうか。ふるさとを失い、安全や安心を心から願う福島への全国民の思いが背景にあったことを、よもや忘れた(知らなかった?)のではないでしょうね。

環境大臣のこの発言が出た経緯はわかりません。気になるのは、一強他弱が長くーーこの先もーー続く過程で、政府与党側から、未だなされる民主党叩きと、自惚れあるいは勘違いとでも言うしかない上から目線の風潮です。


もう、民主党が日の目を浴びることはない(失礼!)のですから、からかうのはいい加減にしませんか。1日も早い帰還を願う住民の思いと長期目標をどう整合させるか、原発をやめない現政権では、喫緊の課題ではないのですか。環境大臣の発言は、「そんなことどうだって良い」と聞こえます。


この環境大臣は、問題発言が報じられ当初は、そのような発言をした記憶がないと言いました。最近流行りのようですが、後になって件の発言をしたことを思い出したようで、最終的には、発言を撤回しました。ご自分は、思い出したけれども、『こんなこと!』は、そのうち国民は忘れてくれるとでも思ったのでしょうか?


でも、この人の国会答弁を聞くと、本質は何ら変わっていないことがわかります。今までは、環境省の仕事は、「エコだ何だ」と言っていればよかったが、原発事故以来、環境省が除染などを担当するようになり、「大変苦労の多い仕事をやって来たことを強調したい」思いがあったのだそうです。

そんな大変なご苦労をされたのでしたら、もうお辞めになったらいかがでしょうか。やりたい(なりたい)方、この政党には、人材に事欠くことはありませんから。


でも、そんなに苦労をされた経験がおありでしたら、追加被曝線量の目標について、「何の科学的根拠もない」とは言えるはずかないのですが。きっと忙し過ぎて、基本中の基本の記憶が飛んだのでしょう。最近の閣僚は、どうやら一瞬記憶が抜けるようです。でもこれは、閣僚の適格性には無関係のようです。