新しい大河ドラマの見方に気づかされた『真田丸』に寄せて。

2016年3月3日
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NHK大河ドラマ『真田丸』は、まずまずの視聴率を維持しているようです。

 

戦国物は、比較的人気が高いと言われていますが、真田幸村の人気、脚本家三谷幸喜氏の奇抜なアイディア、主演堺雅人さんの芝居上手や、父真田昌幸を演じる草刈正雄さんら、名優の存在感等、さまざまな要因が、良い方向に回転していると思います。

 

それに加え、『真田丸』には、これまであまり知られていなかった(失礼!)俳優さんの名演技が光っているとの巷の評価があります。 初回に、大俳優平幹二朗氏の長男平岳大さん演じる武田勝頼が、茶の間とネット上で感動を呼んだことは、この『ひとりごと』でも触れました。

 

その武田勝頼と『対決』する場面で涙する小山田茂誠役の俳優さんが、凄い人気です。

 

私は、以前から、武田勝頼が旧武田家家臣に裏切られ続け、最期には、小山田信茂より鉄砲を打ち込まれて笹子峠を越えられず、天目山の露と消えた史実には、関心がありました。ただ、歴史好きを自称しながら、同じ小山田姓を名乗る小山田茂誠のことは、今回取り上げられるまで知りませんでした。

 

『真田丸』では、真田信幸、信繁(幸村)の姉松の夫で、その後徳川家に使えることになる真田信幸(信之)の家臣として、忠誠を尽くしたとされるようです。

 

この小山田茂誠、真田丸では、よく泣き笑いの場面があります。先の主君武田勝頼との別れの場面、織田信忠より処刑されそうになる場面、妻松と再開と別れ?の場面等、苛烈な戦国の世でありながら、何かコミカルな憎めないキャラが発揮されていると思います。 この俳優さん、高木歩さんと言う声優さんだそうです。声優ですから、大河ドラマはもとより、テレビの映像に出たことはないそうです。

 

もともと高木さん、NHKや三谷幸喜氏とはご縁があったところ、ある場面を見たプロデューサーから、『俳優』としてのオファーを受けたのだそうです。実際、高木歩さんの顔芸とも言える泣き笑いの演技はとても好評で、初回の放映を終えた真田丸の公式サイトへのアクセスは、主役の真田幸村らをしのぐアクセス数だったそうです。

 

「あの人誰?」ですか。 それからもうひとり、サラッと何気無く好演技が光っている俳優さんがおられます。直江兼続役の内山新悟さんです。 直江兼続は、越後の国主上杉景勝の家老として上杉謙信後の上杉家を支え、上杉景勝が、豊臣政権の五大老でありながら、関ヶ原の前哨戦となる德川家と戦ったことから、上杉家の取り潰しも取りざたされた中、抜群の政治力と人柄で、上杉家を守り抜き、米沢上杉の礎を築いた人物です。

 

『愛』をあしらった兜が有名ですね。数年前のNHK大河ドラマ『天地人』では、妻夫木聡さんが、主人公直江兼続を演じていました。 今回の直江兼続は、穏やかでクールの中にもキレを感じさせる凛とした姿で描かれております。内山新悟さんは、姿勢と視線に心掛けているそうです。そんな努力、姿勢から、凛とした内山兼続が出ているのだと感じました。

 

内山新悟さん、なんと4年連続してNHK大河ドラマに出演されているとのことです。昨年は、久坂玄瑞の兄久坂玄機役でした。NHKプロデューサーによると、内山新悟さんの所作は素晴らしい、基礎演技力が備わっていることはもちろん、声の出し方まで、その役になり切っているとの評価です。

 

そういえば、私がほぼ欠かさず見ていた一昨年の『軍師官兵衛』で、関ヶ原のとき、西軍の将として登場した大谷吉継は、実は内山新悟さんが演じられていたと知りました。大谷吉継は、らい病を患い、頭巾で顔を隠していたとされ、正に演技力は、『声』ですね。低音ながらよく通る声は、記憶に残っています。ネット上では、イケメンボイスを意味する『イケボ』の愛称で、人気急上昇だそうです。

 

こうして見ると、NHK大河ドラマ『真田丸』は、誰が主人公かわからないとの評価があり得るでしょうか。確かに真田幸村は、高野山へ、父昌幸とともに長く蟄居させられ、九度山での生活が長いて、再び世に現れたのは、40歳を超えたときですから、現時点での大河ドラマは、真田幸村の生涯とか活躍ではなく、父真田昌幸だったり、武田家旧家臣たち、あるいは生涯の宿敵徳川家康の視点で描かられるのは、やむを得ないところもあるでしょう。

 

このような展開から、小山田茂誠とか直江兼続らが関わってきて、それぞれが個性豊かな俳優陣の登場となったようにも思われるのです。 そして、第8回『真田丸』で、新たなヒーローが誕生した気配です。その名は春日信達、武田信玄の家臣で、川中島を臨む海津城を任された高坂弾正こと春日虎綱の子で、真田幸村の父真田昌幸とは、共に武田信玄の薫陶を受けた仲だった人物です。

 

武田家滅亡後、行くところがなかった春日信達を拾ってくれた上杉景勝に恩義を感じつつも、旧武田家臣としての誇りを失わなかったところ、真田昌幸の調略のターゲットにされたと言う設定でした。 春日信達を演じたのは、俳優の前川泰之さんです。誠に失礼ながら、私は、この方を存じ上げておりませんでした。

 

前川さんも、三谷幸喜さんの強い推挙で、たった1回の登場、しかし、正にこの回の主人公を演じられました。見事でしたね。既にネットでは、同じような登場、そして消え方をした武田勝頼に匹敵する愛惜のメッセージが多数寄せられています。 前川泰之さんは、台本を真っ黒になるほど細かく書き込んで一言一言、一つの動作ごとに細かいチェックを入れて演技に臨むそうです。

 

この先、この回のテーマ『調略』が、真田幸村の人生に大きく影響するのは確実と予想させる素晴らしい演技でした。『真田丸』では、随所随所に、また、ワンポイントの主人公を配置して、それが真田幸村に、ことごとく影響を与える設定となっているように思います。歴史物、時代劇の興味を超えた新境地のドラマ設定ではないでしょうか。

 

真田丸は、引き続き高視聴率を維持しているようです。たった1回、また、出ては消える、消えては出る人生も、それを理解し、大切にする俳優さんの手になると、『それもまた人生』と思えるのです。今後も楽しみな真田丸です。