子どものころ、よく医師から注射をされた経験があります。 小さいときは、お尻にされた記憶もあり、あれは嫌でしたね。小学校のころまでは、あまり丈夫なほうではなかったようで、しょっちゅう注射されましたから、腕には、その跡が残っていました。腕が硬くなって、注射針が折れたこともありました。やがて注射には慣れっこになり、太い静脈注射でも、恐怖感はなくなりました。子ども時代、小学校では、BCGとか風疹とか、予防接種がありました。 私のころは当たり前だった予防接種、近ごろの子どもたちは、しなくなったのでしょうか。ひとつには、効果的な薬の開発があり、また、注射の功罪も言われていたように思います。昔、特におたふく風邪、百日咳、麻疹は、必ず予防接種を受けました。最近の子どもたちは、注射を受ける機会が少ないのか、テレビに放映される接種の場面では、いつも泣いている姿ばかりです。 私の息子さえ、高校生のころにインフルエンザの注射を受けるのに、痛いから嫌だなんて言っていました。体育会の代名詞のような男だと思っていたのですが。それで、予防接種を受けていない子どもが、そのまま大人になってこれら病に感染したら、かなり症状が重くなるといった脅しのような報道も、あったと思います。 さて、この夏、関西方面を中心に、麻疹が発生していたことが発表されました。これが知られたきっかけは、先月中旬、関西国際空港に勤務する女性従業員が、医療機関より麻疹と診断されたことにあります。同時期に関西国際空港を利用した一般客3人も、麻疹と診断されたところ、いずれも7月31日に、関西国際空港に居合わせたことが判明したと言うものです。 麻疹の潜伏期間は10日から2週間と言われており、最初に麻疹と認定された関空従業員の同僚も、8月下旬から複数が麻疹に罹り、8月26日には、たまたま関空の関連機関に居合わせた人も感染したとのことです。その後も『感染』が増えて、医療機関の医師看護師や、関東方面にも麻疹と疑われる症状が現れた方がおり、その方々は、麻疹と診断された人か、関西空港にいずれも接点があったことから、9月に入って、特に大阪府では、『大騒ぎ』になった様相であります。 日本国内では、年間発生する麻疹の数は、30件くらいとされ、2015年には、WHO世界保健機構は、日本には、土着の麻疹ウイルスはないと言う意味の『排除状態』と認定しているそうです。従って、国外からウイルスが持ち込まれたと考えられるわけですが、既に7月31日より1ヶ月以上も経過した時点での感染注意の呼びかけとなっていて、今後も二次感染、三次感染が心配です。 最初の7月31日に感染したと推測される4人からは、同じ『H1』なる遺伝子型だったとされますが、何しろ国際線の利用客だけでも、今年の夏は、1日60.000人と過去最高値を記録した関西国際空港、感染源を特定することは困難でしょう。 関西空港で感染した人は、ほとんどが20代から30代前半だそうです。中には10代の人もいるとか。これは予防接種をしっかり受けていなかったことが一因と考えざるを得ないと言うのが、国立感染症研究所の見解です。麻疹は、空気、飛沫、接触で感染し、その力は強く、ワクチン接種が予防には有効なのだそうです。ところが麻疹に関しては、1978年に、ワクチンによる定期接種が制度化され、2006年に、1歳と就学前児童に2回接種に変わった、しかし、ワクチン接種後10年くらいは抗体が十分ではなく、まさに20代から30代の人が、この世代に当てはまるそうです。昔散々注射漬けされた?世代は、大丈夫でしょう。 9月7日段階では、関西空港関係者で、麻疹と診断された人は43人に達し、大阪府は、麻疹ワクチン未接種もしくは接種不明の関空従業員のうちとりあえず300名に、急ぎ接種をさせると報じられました。それでもワクチン未接種もしくは接種不明の30代以下の関空従業員は900名おり、ワクチンの確保ができ次第、感染者と関わった可能性の高い部署の順に、ワクチン接種を行っていく方針なのだそうです。 麻疹って子どもが懸かるもの、だから子どものときに注射するのだと教えられた世代からすると、まことに驚きですね。 さて、私が関西国際空港を利用したのは9月17日です。その前日の16日、大阪地方裁判所から、ひとつの発表がありました。大阪地裁の職員が、先月関西国際空港を利用したところ、麻疹に罹っていたことが判明したのだそうです。私は、大阪の裁判所にも行きますが、裁判所には裁判所関係者と検察官、弁護士だけが行き来するのではありません。当事者、被告人、警察官、刑務官そして公開される裁判を傍聴する一般の方々がおられます。 ある意味裁判所は、ありとあらゆる方々が集まる場所です。でも、今更感染防止のために、空港や裁判所を閉鎖するわけにはいかないでしょう。 そんなことを考えながら、9月17日夜、大阪市内から回って、関西国際空港に帰京のため立ち寄りました。 私が、『弾は当たらない』と思っているのは、航空機に搭乗するときだけではありません。そもそも多少の風邪気味になっても、多少熱っぽくても、きさらぎ法律事務所を開設して20年以上経過しましたが、これまで1度も寝込んだことはないのです。 子どものころ、痛い思いをして注射漬け?された効果は残っていると信じて、夜の関西国際空港を飛び立った次第です。