福岡2区選出の元衆議院議員、ヤマタクさんこと山崎拓氏は、いわゆるYKKのおひとり、あることさえなければ、自民党の総理総裁候補とされました。現役当時は、『あること』はともかく、そのタカ派的発想で、私はあまり好きな政治家ではありませんでした。 福岡天神あたりを年数回ウロウロしている私は、何回か衆議院議員総選挙の期間に当り、ヤマタクさんの姿を見たことがあります。福岡に帰っても、あまり博多弁を喋らない方だなくらいの関心しかなかったです。 その山崎拓氏、政界引退後、存在感を発揮しています。 先日の加藤紘一元自民党幹事長の葬儀には、長年の親友として、想いのこもった見送りの言葉を述べられました。また、集団的自衛権の行使や安保法案を巡っては、やはり自民党の幹事長を歴任した野中広務氏や古賀誠氏らとともに、『反対』を言うのみならず、現在の自民党の変容、特にモノを言えない現実を嘆いておりました。 その中で、今では慣用句になったのではとも思える『ヒラメ議員』なる名言?は、山崎氏の作とされます。ヒラメ社員やヒラメ裁判官なんてあちらこちらに飛び火しているようです。 『ヒラメ議員』とは、上ばかり見て、ものを言えぬ後輩たちへの嘆きとして出た発言でした。組織内で生き残るためには、これを統率する者にひれ伏し、そのご機嫌取りに終始することを意味します。かつての派閥華やかりしころは、各派勉強し、また、競い合って右から左までバランスのとれた団体とされたのが自由民主党でした。先の安保法制で、唯一反対の意思を表明した村上誠一郎氏は、最近『不自由民主党』と言われました。 ヒラメ議員にとっては、統率者が有能か無能かは関係なく、また、自分がどう考えるかも関係なく、どう組織で生き残るかが大事です。ただ上ばかり見ているのも困りものですが、寝たふりすることで、密かに上に反発心を認めているところ、上から釣り上げられるのも困りものです。ヒラメは、そんな釣られ方をしますから。 先日の国会、衆議院本会議場で、所信表明演説をしている安倍晋三内閣総理大臣が、自衛隊員らに対する敬意を表すべく自ら拍手をし、また、議場に拍手を呼びかけたところ、ほどんどの自民党議員が起立して、拍手したことがありました。これが議会制民主主義では、あってはならぬことは、この『ひとりごと』でも書きました。 ついでに言っておきますが、流石に異常を感じたほどんどの報道機関がこれを掲載したところ、唯一政府与党を常に持ち上げるヒラメ以上の大手新聞社は、『かつて民主党政権発足時にもあった』と掲載したそうです。 どこに目をつけているのか、こんなときにだけ、自民党が民主党から学んだと民進党を持ち上げる?のも不可解ですが、今回何が問題なのかわかっていないか、わざと誤魔化していますね。改めて申します。 内閣総理大臣の所信表明演説とは、国権の最高機関である国会から指名を受けて内閣の長となり、その組閣した組織が執政するにあたり、国会から求めれて出席してその方針やあり方等を 説明する国会、国民に向けられたひとつの約束の場面です。自らに酔い、賛同を求める場でもなければ、自分を指名した国会に対して、何か要求する場でもありません。 しかも議会を主宰するのは議長です。すなわち立法府の長は、この方の勘違いにも関わらず、衆議院議長であります。その説明義務を果たす途中に、議員に対して拍手を要求するなんて、議院内閣制も議会制民主主義も、はたまた三権分立もわかってないですね。だから国会の議事進行に差し障りがあるとして、大島理森衆議院議長が注意したのです。 これに対して、かつての民主党員が、当時の鳩山由紀夫内閣総理大臣が衆議院本会議の議場にいるときに拍手したのは、所信表明演説が終わったときです。内閣総理大臣に限らず、壇上での演説が終わったら、ありがとうご苦労さんの意味があるかどうか知りませんが、拍手しているのはごく普通ではありませんか。議事進行中に、しかも内閣の長が議員に拍手を求めることが憲法上問題があると言うことです。念ため起立!について言えば、誰のため、何のための起立かという問題があります。 私たち法律実務家は、法廷に裁判官が入ってきたとき、起立します。これは裁判官に服しているのではありません。裁判官も立ったままこうべを垂れるのは、法廷の神聖に一礼するのです。これからこの場をお借りして、皆の努力により紛争を解決するのでどうぞ見守ってくださいの趣旨です。内閣総理大臣のために起立したのだとしたら、ヒラメも起き上がれると言うことでしょうが、安倍晋三内閣総理大臣の演説の中身からすると、海上保安庁、自衛隊、警察の諸君となるのでしょうか。 私たちは、彼らを『諸君』なんて呼びませんが、公務員として国民のために日夜奉仕しているのは、この3方だけではありません。だいいち、最も奉仕すべきは、この場に居る方々ではありませんか。防衛警察等の権力行使者をことさら称えるのは、違和感があります。 今日は、ヒラメ議員のお話でした。 上ばかり見て……と言われるのがお嫌いな方はおります。昨年安保法案が衆議院可決した直後、説明不足と批判したーーしかし賛成したーー小泉進次郎衆議院議員は、今回の件が取り上げられ、その異常性が指摘されるや、『言い訳』を始めました。 あれはおかしいと言うのです。なぜおかしいのか言いません……。そしてなんか釣られて自分も起立してしまった、要は異常な雰囲気に飲まれたかに言うのです。 これこそ寝たふりしていたヒラメが釣られたことを、物語るではありませんか。ヒラメは、上ばかり見なくても、ただそこに黙って居るだけで、上から釣られます。ヒラメに成り下がった国会議員、さっさと辞めてしまえと言いたいです。