JR北海道は、特に利用が少ない3路線を廃止し、バスに転換する方向で、沿線自治体と協議することになったと報じられました。
その中には、根室本線の富良野新得間が含まれています。100円の営業収入を得るのに必要な営業費用を『営業係数』と言うそうですが、これが1.430円かかっているとのことです。また、1kmあたりの1日の平均輸送人数を『輸送密度』と言うらしいですが、この区間は、152人と算出されたそうです。
JR北海道では、輸送密度が500人以下であると、燃料費その他の輸送にかかる経費を賄えないところ、今回挙げられた富良野新得間、留萌本線の深川留萌間、札沼線の北海道医療大学新十津川間は、いずれも輸送密度が200人を切っているのだそうです。
札沼線は、札幌から途中までは電化区間で、学園都市線と称していたと思います。もともとは留萌本線の石狩沼田駅までつながっていました。それが新十津川駅までになったのですが、新十津川駅発着列車は1日上下1本だけと言う、鉄道ファンには馴染みの路線ではあります。
ファンは、この珍しい列車を追いかけるのには、新十津川駅近くの函館本線滝川駅からやって来ると聞いたことがあります。ですから、この区間が廃線となる可能性については、予想されないではなかったと思われるのです。留萌本線は、本線と名がつくものの、区間が短く、海沿いの増毛留萌間は本年12月に廃止されることが決まっていて、何となく予想できないものではありません。
しかし、根室本線富良野新得間の廃止は意外と言うか、ショックを受ける人も、少なくないと想像できます。 赤字路線の廃止が決まると、だいたい騒ぎ出すのは鉄道ファンだと言われます。昔鉄道少年だった私は、大人になって地元の方々、運営会社の苦労を顧みずに勝手なことを言っていたなと反省しきりです。例えば、道内では秘境駅とされたある駅が、鉄道ファンの希望で、まだ廃止になっていない例もあります。
ただ、この根室本線富良野新得間に関しては、鉄道ファンならずとも、廃線を惜しむ声はあるのです。私もそのひとりです。 まず、『根室本線』と聞いて、どこ?と思われますか?函館本線滝川駅から富良野、新得を経由して帯広、釧路、そして根室本に続く長い路線です。今では南千歳駅から石勝線があり、十勝道東へ線路は続きますが、その前は、札幌から滝川を経て、この路線で帯広、釧路方面に行くしかありませんでした。
特に青函連絡船があったころ、函館釧路間に特急『おおぞら』が、長距離運行されていたのです。そして日本一長い距離を走行する普通列車としても、長く滝川釧路間のデイゲルカーが、その地位にありました。そう言う意味では、根室本線富良野新得間は、まさになくてはならない路線だったわけです。でもこの例ならば、鉄道ファンの域を超えませんね。 『北の国から』をご存知ですか。今では、私がほとんど見ないテレビ局が、昭和56年から放映していた連続テレビドラマです。
昭和56年と言う年は、後で知った私の厄年にあたり、司法浪人中であり、いちばん暗い年でした。だからか当時私は、『北の国から』は、全く知りません。北の国からを初めて知ったのは、平成元年に2歳になった長男を連れて、初めて北海道に家族で旅行したとき、ラベンダーで有名な富良野を歩いていたときに、どこからともなく聞こえてきた『あぁあぁあああああぁ、……』の声でした。
これこそ北の国からからのテーマ曲、さだまさしさんが、富良野の風景を見て、何も言えず、ただ、あああぁと感嘆して歌となったあのメロデイでした。
それから北の国からからの虜になりました。その後も数年間隔で放映された北の国から、全て見ました。その最終章は、『2002年遺言』でした。我が家の息子たちも、途中から知った北の国からを見て、成長したように思います。その北の国から、シリーズ最初のシーンは、田中邦衛さん演じる黒板五郎さんが、吉岡秀隆さん演じる純と、中嶋朋子さん演じる蛍を連れて列車から降り立ったのが富良野の次の駅、根室本線『布部駅』でした。
その後数回富良野そして美瑛に行きました。JR布部駅にも行きました。そこには、『北の国此処に始まる』と書かれた木製の看板があります。布部駅近くで線路を渡り、布部川に沿って森林を進むと、北の国からのロケ地となる『麓郷』になります。この道路も何回か通行しました。
そして、数々のロケ地を巡りました。その起点となった、此処に始まった布部駅が、廃線により無くなるのです。 北の国から、様々のシーンが蘇ります。
あの印象が強すぎて、未だに名俳優吉岡秀隆さんを見ると、『純』と呼んでしまいます。そして、ある女優さんを見ると、純の奥さんだった人!って思ってしまうのです。布部駅が無くなる、北の国からにもありましたが、これも『時代』なのでしょうか。根室本線富良野新得間が無くなっても、北の国からは不滅です。
そんなふうに思ってしまう、ひとつの時代を感じるのでした。