北海道に本社がある航空会社エアドゥが、北海道と北陸を結ぶ路線からの撤退を決めたことが報じられております。新千歳と新潟、富山、小松を結ぶ路線は、搭乗率が低いことが理由で、共同運行をしている全日空の同意を得て、国土交通省に申請するようです。 共同運行と言えば、昨年秋ころからスカイマークが、財務内容改善策として当初は日本航空と、ついで全日空と、このところは、ANAとJALとも共同運行を目指して合意を得る段取りと報じられております。 共同運行とは、実態からわかり易く言えば、航空会社Aが、航空会社Bの座席を一定数買い取つて自社便として販売し、B社の機材乗務員で運行する航空機に、自社の顧客を搭乗させるシステムです。B社にとっては、空席が生じても一定数の収入は確保でき、A社のブランド力を使って顧客獲得の機会となり、A社にとっては、各空港で決められた自社の発着枠を超えて顧客を誘致できることや、自社のコストをかけることなくたくさん就航させることができるメリット等があると考えられます。 実際全日空は、スターフライヤー、ソラシドエア、エアドゥ等と共同運行を実施しています。よくインターネットで空席照会するときに、同じ便なのにB社からだと満席なのに、A社からだと予約が取れてしかも航空運賃が異なる(だいたいA社のほうが安い)現象が起こるのは、共同運行便だからと言うケースがあるのです。 数年前日本の航空会社が事実上寡占状態にあるとして、スカイマークを最初に、幾つも航空会社が設立登場しました。これにより、航空運賃が概して安くなり、顧客買い手側に選択の機会がもたらされる効果がありました。しかし、これら新規航空会社は、コスト削減のため乗務員等の賃金や保守管理面で様々な問題が提起され、さらにLCCいわゆる格安航空会社の出現により、顧客が離れる傾向が出てきて、経営を圧迫する事態となったと見られます。 航空機を利用するとき、何を重視しますか?安心安全は当たり前、そして定時運行も当然でしょう。実際数ある航空会社の中で、自社は安全だとアピールするところはありませんね。 日本の航空業界に長く新規航空会社の参入がなかった理由についてはいろいろ言われておりますが、市場の活性化のためとして、ここに『競争原理』を取り入れるとの見解には賛同することはできません。常々申しますとおり、人の生命権利等を預かる業務には、競争原理は馴染みません。確かにスカイマーク等が参入したことにより、また、LCCが増えたことにより、これまで航空機を利用しなかった方々がこれを利用し、その意味では、今流行りの『消費』が起きたことにはなるでしょう。しかし、安かろう悪かろうはあり得ず、安全は議論するまでもなく当たり前として、選択利用されているはずであります。 エアドゥ等の共同運行は、業績回復のためにのみなされているわけではないと思いますが、エアドゥにしろスカイマークにしろ、なかなか業績が安定しないのはなぜでしょう。エアドゥは、亡くなった創業者が、『北海道の人のため』が理念でした。スカイマークは、もともと経済界出身者が中心になって経営がなされていて、現在の西久保社長の代で、エアバス社からの違約金問題や、鳴り物入りで登場した羽田福岡便A330機の搭乗率が、予測より低い状態が続く等で、大幅な赤字転落となり、JALに、そしてANAに、共同運行運行が持ちかけられた経緯があります。 以前経済効率について、私の考えを述べました。どうにも私には、財界の方々が、人の命を守る安心安全は当然の業界に出てこられると、ここに競争原理を取り入れて、生き残る選択をしているように感じられてなりません。物事の本質から、出来ないこと、曲げるられないもの、限界はあるはずです。 かく言う私は、どんな基準で航空機を選ぶかでありますが、基本は至って単純、その日の自分の予定にいちばん合致する便利で、無駄がない便に搭乗します。例えば、札幌の裁判所に午前10時に出頭するために利用するのは、羽田空港6時50分発のエアドゥ(ADO)11便か6時55分発のスカイマーク703便です。また、福岡の裁判所に午前10時に出頭するために利用するのは、羽田空港7時10分発のJAL303便です。自分が乗った航空機の料金がいくらだから安全確実はそれに応じた限度だ!なんて考えたことはありません。 航空業界どうしたら経営が上手く行くのでしょう。とても難しい問題だと思います。