千葉県市原市で、イノシシ狩りをするために、市の要請で集められていた猟犬が、猟師らが目を離した間に民家に立ち入り、ペットとして飼われていたチワワに噛み付いて死亡させた『事件』が報じられています。狩猟犬とチワワでは、勝負になりません。 チワワの冥福と、ご家族には心からのお悔やみを申し上げます。 ベットは家族の一員です。飼い主の自宅で暮らしていたベットが噛み殺されるなんて、想像しただけでショックで哀しくて、ご家族の悲嘆はいかばかりかと思います。 以前お話したかもしれませんが、ベットである動物を死傷させられた場合、動物は、『器物』と扱われて刑法上器物毀棄罪が成立するかどうかです。でも、人間が、故意に猟犬を嗾けたような場合でなければ、猟犬を見失ったことが管理者の過失の認定されても、過失毀棄毀棄罪はないのです。 もちろん、ベットが損壊されたことに、管理が不十分等人間の過失が存在する場合には、猟犬の管理者には、民事上損害賠償責任があります。ただ、この事案の場合、ベットとして暮らした動物は、人間の家族ではないので、その物の価額が損害額となってしまいます。すなわち、チワワの時価が損害額であり、恐ろしい、痛い思いをしたチワワは人間ではありませんから、亡くなったチワワ自体には、加害者側に対して、慰謝料を請求できません。その相続ということもないのです。 それでは、家族であるチワワを殺害された飼い主には、この悲しみに関して、慰謝料を請求できないのでしょうか?家族を奪われたに匹敵する悲しみであることを認め、犬を噛み殺された飼い主への加害者側からの慰謝料の支払いを認めた裁判例はあります。その金額ですが、三桁には届きません。 精神的苦痛に対する損害賠償を慰謝料とも言います。精神的苦痛を金銭評価することは難しいと言うよりも、そんなこと無理、こじつけだとも思われるでしょう。私もその意見を無視できないと思っています。でも、他に方法があるのかです。法律実務上、お金を支払うことが謝ったことだと申しました。しかし、精神的苦痛は、人それぞれ、法律や裁判で決めることに馴染むのかと言うことです。 慰謝料に関する判決は、精神的苦痛を慰謝するとすれば、⚪️⚪️円を下らないとか、本件では、一切の事情を考慮して、慰謝料としては金⚪️⚪️円をもって相当とするのような判示となります。 そして、慰謝料が一円単位になることはありません。総額十万円代のときは、1万円単位が出るとしても、百万円単位のときは、せいぜい十万円代まででしょう。私自身は、判決では百万円、二百万円……であり、150万円なんて経験ありません。まして151万円なんて……。 慰謝料額の基準は、あって無いようなもの、いや、無いようで、実はあるのだと我々法曹実務家は理解しています。 そのことの是非を言うのではありません。私は、年中行事だと評しますが、自分の配偶者の不倫相手に慰謝料を請求するケースでは、大抵300万か500万です。蛇足ですが、このケース、既に夫婦の婚姻関係は破綻していたとの主張が出されるのも年中行事です。私は、いずれもやりませんが。なんで?と関心を持たれましたら、このホームページの『離婚、男女問題』のコーナーをご覧ください。 慰謝料額は少ないとの印象が持たれると思います。ある裁判例で、注文したカツ丼にゴキブリが入っていた事案でのお客さんに対する慰謝料は、5.000円と言うのが知られています。また、これは常にきさらぎ法律事務所にいらっしゃる方に申し上げるのですが、男女に関する問題で、もし慰謝料を支払わなければならないのだとすると、『1本』すなわち最低100万円だと申し上げます。これは実際ある裁判官が仰ったことです。本やネットの情報とは違うのです。 精神的苦しみは癒されることはない、しかし、ずっと引きずりたくないとき、慰謝料の支払いというかたちで収まりをつけるのだと思っています。これは、ひとつのセレモニーかもしれません。それでなんとか区切り、節目とできるか、気持ちの整理ができるか、それが弁護士と依頼者の信頼関係であります。 さて、冒頭のチワワの例、報道された範囲で、私が気に入らないのは、市役所は、亡くなったチワワを早く火葬して欲しいと言ったとか、家族、法律上は器物なのでしょうが、これを突然を失ったなんの落ち度もない市民に対する言い方なのかであります。早く処置したいと言う役所仕事が見えますね。あるいは、『証拠』を隠したいのかもしれません。 被害者家族が心を落ち着けて、節目となるようなお悔やみ?くらい言って欲しかったです。