NHK朝ドラ『あさが来た』から、銀行の使命を思う。

2015年11月25日
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NHK朝ドラ『あさが来た』が、高視聴率をキープしている事情についてお話ししました。

主人公『あさ』が筑豊炭鉱に行き来し出した明治5年、新橋横浜間に鉄道が開業して、近代日本の石炭需要が増大する様子が垣間見れます。あさと姉の『はつ』の実家京都の豪商今井家は、『バンク』すなわち銀行開業のために東京に移ることになり、大阪にいる姉妹に、母親が別れを告げにくるくだりがありました。母親は、はつに対して、お金を渡したいのです。

この朝ドラがヒットしているもうひとつの事情として、ダブルヒロインの存在が指摘されます。主演の波瑠さんと姉役の宮崎あおいさんの演技が素晴らしいと言われるようです。宮崎あおいさん演じるはつは、あさと異なり穏やかな性格のようですが、嫁ぎ先が倒産した後も、夫婦仲良くコツコツと明日を生き抜くために働く姿が描かられています。

はつは、訪ねて来た母親から、お金を受け取ろうとはしません。はつとしては、嫁ぎ先が倒産する前に、援助を求めたのに断ったことを気に病んでのことと思っていて、倒産したのはそのせいではない、今の自分はしあわせであることを言って、固辞するのでした。

ここであさは、これはバンクやと言いました。バンクすなわち銀行は、志ある人たちにお金を貸し、その人たちが志を遂げ成功したら利子をつけて返してもらう、施しや憐れみでお金を出すのではないと解説します。はつは、気持ちがいくらか楽になったのか、意思を強く持ったのか、あさに背中を押されて、実家の母からお金を受け取るのでした。

これは、今に通じる銀行の使命、在り方だと思います。銀行は、与信と受信をします。お金を預かり、貸し出し、利子を付けて返してもらう、いっぽうでは預かったお金は運用して利益を生み出して預託主に戻す、まさに金は天下のまわり物さながらなのです。銀行は、血液と同じ、これが回らなくなったら、詰まったら、当人のみならず、関係する多くの人たちが多大な影響を受けるでしょう。

かつて『公的資金』が言われました。端的に言えば、政府が税金を投入して銀行を潰さないようにする措置です。これは株式会社である銀行を助けるのではなく、銀行の公的使命に鑑みて、公共のため銀行の再建に乗り出したものです。そして声高に言われるアベノミクスの影響なのか、このところ銀行は、公的資金を完済したと発表しました。

私なんか、もし、銀行が公的使命を忘れて破綻の危機に陥って、政府与党の政策により、国民が預けたお金で再生し得たのであれば、銀行は、国民に利子を支払うべきだなんて思ったりします。それはそれとして、実に気に入らない情報が入ってきました。それは、銀行は、政治献金を復活させることを検討していると言うことです。

日本経済が真似をしたがるアメリカ合衆国でも、企業の政治献金は禁止されているのに、日本では、これが合法とされているところが疑問はあります。企業による政界への献金額は、90億円くらいになっていて、これに含まれない政治家全体のパーティ収入は180億円にも達すると計算されます。

もとより企業は参政権を持たないので、これら献金は、基本的に、その企業や業界に利益となるような政治を行って欲しいが故の支出であることは明らかです。しばしば政治献金と賄賂の線引きが問題となる所以です。

さて、銀行は、なぜ政治献金なんて行う必要があるのでしょうか?銀行は、志ある人をサポートすることにより利益を得る仕組みだったのではないでしょうか。銀行は、すなわにお金を集め拠出する組織は、国民こそお客様ではないのですか。

ハッキリ言って、献金と言う利子どころか『元金』さえ返らないお金を差し出すことは、公的使命に合うことなのでしょうか。そんなお金あったら、本当に志ある人、困ってる人たちに出してあげるべきだと思います。

政府与党は、銀行の公的使命を言って、かたちの上では私企業である銀行に対して、国民のお金を出しました。それで銀行が助かったのだとしたら、財源になった国民に対してこそお礼を言うべきでしょう。それが国民からお金を出させた政治家に『ありがとう!』と思ったのかどうか知りませんが、献金するなんて、公的使命ってなんでしょうかね。

要するに、平たく言えば、主として自由民主党にお金を差し上げると言うことです。さて、白岡あさ(広岡浅子)さんがこの体を知ったら、「びっくりぽん」でしょうかね。