「慰謝料請求できますか?」
(2011/06/06)>> 一覧に戻る
婚姻関係にない男女に関する事案において、よく聞かれる質問です。
『慰謝料』とは、精神的苦痛に対する損害賠償を意味します。
ご相談者には、ご本人にしかわからない精神的苦痛,衝撃等があったのだと思います。
ただし、その苦しみや痛みが、慰謝料請求として成り立つには、法的に保護される権利に対する侵害があり、損害が発生したことが要件です。
つまり、法律で当然に守られている権利を害する出来事,それにより、何らかの被害を受けたという『事実』が、慰謝料請求ができる権利となります。
そして、侵害者(損害を与えた人)の故意・過失が必要となることも当然です。
たとえば、「妻とは別れるから付き合って欲しい」と言われて、交際を開始したが、やはり「離婚はしない(できない)から、別れて欲しい」というケースの場合、原則として、慰謝料請求はできません。
妻ある男性と男女関係に至ることは、公序に反するからです。
「離婚するから…」も、そのような約束自体、法的効力は認められません。
しかし、経緯から見れば、男女の関係であっても、侵害された権利の内容によっては、実は、男女問題ではないケースもあります。
● 交際している相手から、暴力を受けて怪我をした
● 妊娠中絶を余儀なくされた
● 「結婚しよう」と言われ、専業主婦になるために失職した
● 結婚するつもりで新居を用意して転居したが、一方的に別れを告げられた
これらのケースは、検討の余地があります。
暴力は、それ自体が、違法性がある(許されない)ことであり、入院・手術等、さらなるダメージを与えられたこと,精神的な出捐や、有していた権利(利益)を失ったこと等は、その原因が、男女間トラブルであったからといって、慰謝料(損害賠償)請求ができないものではありません。
成人男女が交際し、そして別れることは自由です。他方を束縛することはできません。
しかし、行為の態様が問われることがあります。
数年同棲し、社会から見れば、「二人は婚姻するのだろう」と思われるようなケースで、突然に関係を解消されたら、それ自体、ダメージを伴うでしょう。
信頼関係に背いたことで、慰謝料が発生する余地があります。
要するに、ケースバイケースだということです。
きさらぎ法律事務所ホームページで繰り返しお話しするとおり、電話やメール等で、簡単に「イエス」、「ノー」で回答できる問題は存在しないということです。
相談者が関わった事実関係を、時間を掛けてお伺いし、相談者が何を求めるのか,どうすれば相談者が落ち着きを取り戻せるのか等、じっくりと話を聞きながら、一緒に考えていきたいと願っています。