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『家庭内別居』という言葉がひとり歩きしていますが・・・

(2020/04/27)

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 『別居』という言葉は、文字通り別に居を定める、別々に居ることを意味しますが、私たちの業界で使われるときは、家庭内不和があり、配偶者のどちらかがそれまで暮らした生活の本拠を離れることを言っています。

 

 この「別居」が問題とされる場面・実例は結構あるのです。

 

  ○どれくらい別居が続けば離婚できるのか。

  ○財産分与を決めるときの夫婦共同財産の評価の基準は別居時だ。

  ○別居後には生活費、婚姻費用の分担請求ができる。

 

 などまだありますが、これとともに「家庭内別居」という言葉も耳にすることがあります。これも俗語ではあります。

 

 ただ、俗語であるが故ではないとしても、法律事務の世界では「家庭内別居」が、「別居」と同じ効果を生むとは限りません。そもそも法文上では、別居がどうのの定めはなく、「同居」に関する注文の解釈から、ならば別居の場合どうなのかの解釈に進む例です。ですから「家庭内別居」は、より効果が少ない。

 

 例えば、「妻とは家庭内別居状態だから・・・」の甘言に乗ってはいけない。

年中行事になっている「婚姻関係破綻後の行為だから不貞ではない」は、裁判所は認めません。同居中の人と性的関係を持ったらアウトです。

 

またネット上では「家庭内別居中」でも、婚姻費用の分担請求、つまり収入の少ない側(一般的には妻)から、多い側(一般的には夫)への生活費の請求はできると書かれておりますが、現実的にはなかなか容易ではありません。

審判に至って認められても「別居」の場合より、相当下がる例です。

 

つまり家庭内別居は、別居の状態が外から見えにくい、見えてもその捉え方、解釈がいかようにもあり得るところから、「別居」と同じ効果が認められることは、ほぼないということです。

 

ですから私は、離婚を希望する夫婦の一方から相談を受けた場合、まず別居を勧めます。私は、別居敢行の日をXデーと言っています。Xデーに向けた準備から入るのです。

 

そもそも、たとえ会話はしないとしても、同じ空間に留まることは精神衛生上よろしくないでしょう。葛藤を取り除くこと、冷静な気持ちで判断できることがスタートです。

 

別居期間何年で離婚できるか?―よく聞かれる質問です。これに対する私の答えは決まっています。「別居期間に関係なく、離婚したい人は最後まで   その気持ちがぶれない人は、必ず離婚できる」からです。

 

しかし、よく判例などで別居期間に言及されるのは、婚姻関係の形がい化の要素としてとらえられるからです。要するに、外から見やすいからです。もちろん形がい化の―強い―要因が他にあれば、総合的に判断されます。

 

離婚による財産分与の基準時が、別居時点だとされるのもわかりやすいからです。別居により夫婦共同し合って夫婦のために財産を維持形成させるという機能は失われたとなるからです。

 

このように、「別居」は、明確かつ強力な効果が実務上あるのです。「家庭内別居」は違う。むしろ別居できなかった、しない事情、言い訳に、「家庭内別居」が使われていることに留意されなければなりません。