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司法委員からみた簡易裁判所における 本人訴訟について――感じるままに――

(2013/10/25)

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簡易裁判所の司法委員を務めて、15年になります。

 

 この間、少額訴訟制度の導入,裁判管轄権の変更(訴額金900,000円以下から、金1,400,000円以下に拡大)等法令の変更もありました。

 

 しかし、司法委員として感じるのは、取扱事件と、裁判所に出頭される人が、ずいぶん変わったということです。

 

 これは、いわゆる過払金(不当利得返還)請求事件の到来と増大を意味します。

 

 私たちの先人の幾多の努力により、いわゆる『みなし弁済』からはじまり、『悪意の受益者』,『期限の利益の再度付与』,『一本の取引』等々、消費者・借り手に有利な裁判例が集積され、ここ数年、一挙に『過払金』ブームが起きたのです。

 

 ひところ、過払金事件を専門に扱う弁護士や認定司法書士が、大量に発生しましたが、最近では、過払金(利息)計算ソフトや、一般向けテキスト(?)も、容易に手に入るようになって、弁護士等に依頼せず、『本人訴訟』を行なう方が増えているのだと思います。

 

 簡易裁判所が、文字とおり簡単に、市民の皆様に利用していただけることは、よろこばしいことです。

 

 しかし、『調停』についても申しましたが、裁判所が何とかしてくれると思われないことです。裁判所は、これを利用する方の対応ひとつで、それぞれの顔を見せ、結果をもたらします。

 

 司法委員は、裁判官を補佐する立場にあります。法廷の審理において、意見を言い、当事者間に和解の勧試を行なうことがあります。

 

 司法委員が入って、当事者の主張を聞き、和解の可能性を探る等しているとき、弁護士や認定司法書士に依頼せず、裁判の当事者となられた方は、ちょっと安心されると思います。確かに、司法委員は、民間から選ばれた者で、ひな壇で法服を着用している裁判官ではないのです。

 

 しかし、司法委員は、裁判所の立場で、事件の処理を担当します。いっぽうの当事者の味方ではないのです。

 

 とはいえ、弁護士出身の司法委員(かつて8年間は、調停委員もしておりました)としては、弁護士的発想がなかなか抜けきれないと言うのが、本当のところです。普段は、依頼者のサポートをしているからです。『困った人』を見たら、捨ておけないとでも申しましょうか。

 

 このあたりの実例,悩みを、折に触れてお話ししたいと思います。