夫(又は妻)の不倫と、夫婦の関係は車の両輪です。
(2014/04/08)>> 一覧に戻る
夫(又は妻)の不倫相手に対し、慰謝料請求をしたい!
よく聞くケースです。なぜ請求したいのでしょうか。
「法律や判例で認められている」は、答えになりません。
『権利』があっても、常にそれを行使するわけではないでしょう。
まして、弁護士に依頼し、あるいは裁判を起こしてまで。
夫または妻(以下まとめて『パートナー』と言います)の不倫相手を苦しめたい,報復したいだけが理由で行う人はいないでしょう。
「そんなことをして何になるのでしょうか」ということです。
きさらぎ法律事務所にお越しになる方は、既婚者と不倫(法律上は、『不貞』と言います)したところ、その人の配偶者から請求を受けたケースが多いです。
もっとも、先の例で、パートナーに浮気された方からのご相談もございます。
請求したい理由をお尋ねすると、
「浮気した夫(又は妻)に目覚めて欲しい,浮気相手と切れて欲しい」
とお答えになる方がほとんどです。
ところで、夫婦円満を確保するやり方として、これがベストでしょうか。
不倫をしたパートナーは、夫婦間の基本中の基本である貞操義務に違反したのです。
素直にこれを許すことができますか?
あるいは、不倫をしたあなたのパートナーは、いきなりあなたがそのような請求をしたら、不倫相手を庇うかもしれません。
また、あなたのパートナーは、自分の『非』を棚に上げて、「(不倫相手に)慰謝料請求なんて、どうして黙ってやったんだ」と、あなたを非難するかもしれません。
不倫相手と切れるどころか、大切なパートナーを不倫相手の方に追いやってしまう可能性があります。
不倫相手が、妻から請求された慰謝料全額を、夫が、不倫相手のために支払ったというケースがありました。
ある意味、当然といえば当然です。
あなたのパートナーと不倫相手は、請求者に対して共同不法行為をしたのですから、『加害者』のいずれかが、生じた損害を賠償すれば、他方の賠償責任は、消滅します。
内部的には、不貞(不倫)をしたあなたのパートナーの方が、その不倫相手になった人よりも、責任は重いのです。
一方で、不倫相手が、慰謝料請求をしたあなたに対して金員を支払ったら、それで『解決』でしょうか。
それは違いますね。
不倫相手は、共同不法行為であるあなたのパートナーに、求償権を行使するでしょう。
なぜなら、繰り返し申し上げるとおり、両名間では、あなたのパートナーの責任が重いのです。
むしろ、不倫相手がすんなり(ではないかもしれませんが)賠償金を支払うのは、後日、あなたのパートナーに請求(回収)する意図があるからと考えるべきです。
結局あなたは、パートナーの不倫相手からお金を取っても、取られた不倫相手は、あなたのパートナーから相当額を取り戻します。
要するに、お金の還流です。
夫婦円満であれば、財布は共通のはず。悔しくはありませんか。
このようなことで夫婦間で言い争いをしては、何のためにパートナーの不倫相手に慰謝料請求をしたのか、意味がわかりません。
実際、このような案件を担当する弁護士の立場から、「なぜ不倫相手に慰謝料請求をしたいのか」と問いますと、
「『夫(又は妻)の不倫相手に、慰謝料を請求できる』と、インターネットや書籍に書いてあったから請求したい」
と言われるケースが、非常に多いと感じます。
いつも申しますとおり、男女問題には、教科書も判例もありません。
あなたが何をしたいのか,何を望んでいるのか,これを見極めることなく進めてしまうことは、あってはならないと思います。
パートナーの浮気,不倫でお悩みの方、あなたにとって、何が幸せなのか、一緒に考えていきたいと思います。