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調停で失敗しないために…

(2011/03/17)

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簡易裁判所の民事調停委員と、司法委員に選任されて、『裁判所から見た調停の経験』と、きさらぎ法律事務所にいらっしゃるご相談者は、比較的、家庭裁判所に関係する案件が多いので、『当事者の代理人』として携わった調停の経験から、最初に、一番大切なことを申します。

 それは、

『調停は、必ず弁護士に委任して行なうこと』
『弁護士に頼まない調停は、やってはいけない』

 ということです。

 このことは、きさらぎ法律事務所ホームページで、詳細にご説明するものです。

 そして、私が法律相談の担当者として、弁護士会や法律相談センター等に赴く機会においても、当事務所内で相談を受けているときでも、とにかくあらゆる場面で、申し上げていることです。

 法律相談を受けている際、調停制度や調停委員に対する不満を、よく耳にします。

 不満を持っている方のほとんどが、弁護士を選任されておりません。

 片や、弁護士が就いており、調停の進行や、その結果について不満がある方については、当然、その不満は、担当弁護士に向けられます。

 その場合は、実は、『調停に対する不満』ではなく、『弁護士に対する不満』を意味します。

 それは、要するに、『弁護士と依頼者がうまくいっていない』ということです。

 『調停』とは、調停委員が、当事者の言い分を聞いて、裁判所で調整を試みる,つまり、『話し合いの場を提供する手続』です。

 調停委員会は、文字とおり、『調整・調停』をするのであって、弁護士のように、『当事者の代理人』として、活動する立場にはありません。

 つまり、調停委員は、どちらか一方の調停当事者の味方でもないのです。

 この調整・調停の場に、何を持ち込むか,この場を利用して、つまり、味方につけて、依頼者のため、納得できる結果を得ようとするのが、当事者の代理人である弁護士の仕事です。

 要するに、

裁判ではないから、弁護士を入れなくても、本人でもできる』

 と考えるのではなく、

『裁判ではないから、法律を駆使し、裁判に出ることを仕事としている弁護士に率先して入ってもう』

 と思い、それによって、

『裁判と同じような有力なアシストを受けられる』

 とお考えください。

 それと、調停委員会は、裁判官が主催し、民間から選ばれる調停委員2名から構成されますが、裁判官は、ほとんど調停の場に、姿を現すことはありません。

 さらに、調停委員は、実は、そのほとんどが、弁護士や、裁判所の仕事に携わっていたような、いわゆる法律専門家が選任,担当することはないのです。

 特に、離婚等の男女や家族の問題を扱う家庭裁判所の家事調停委員は、まず、法曹資格を有しない方が担当します。

 もちろん、心理学,児童学,社会学等に堪能な、あるいは、民生委員,消費生活アドバイザー,教員等の様々な経験を積んだ方が選任されるので、それ自体は、調停を充実させるに、大いに役立っているものです。

 しかし、場所は裁判所です。

 時として、あまり法律的ではない権利義務,というよりも、『人情や道徳を声高に言われる』と感じられることがあると思われます。

 特に、調停が成立した際、作成される調停調書は、確定判決と同じ効力が生じるとても大切な書類です。

 たとえば、離婚の場合、

①申立人と相手方を離婚する
②申立人と相手方の未完成の子○○の親権者を、申立人と定める

 との調停調書が作成されるならわしです。

 この調書に、どのような内容を盛り込むかについても、代理人弁護士の役割は大切です。

 弁護士が就いておらず、当事者同士で調停が成立し、離婚する場合、調書作成の後、調停委員より、「事務処理上の問題は、当事者で話し合って」と、言われます。

 しかし、離婚して、絶縁する者同士に連絡を取り合って協力することなど、期待できるでしょうか。

 健康保険証の扱い,荷物の引渡し,児童手当等の送金口座についてなど、離婚にあたって、いろいろ取り決めしなければならない事柄があるはずです。

 弁護士が代理人として、調停に臨む場合、当然、依頼者が何を、どこまで希望しているか、把握して職務遂行いたします。

 先の例で、せっかく求めた離婚が書類上決まったとしても、処理すべき諸々を積み残しては、本当の意味での解決,解放にはなりえません。

 調停とは、『場所の設定』と、心得ておかれるべきでしょう。

 この場所を、『どのように利用するか』が肝要です。

 調停委員に対する不満,調停手続に対する批判を耳にするケースのほとんどは、相談者の主張,要望が、調停委員会に伝わっていないために起きるものであると感じます。

 依頼者を補佐し、調停委員会に対して動いてもらう,事件の相手方に対する説得をお願いするのは、まさしく弁護士の仕事なのです。

 繰り返し申し上げます。

調停は、必ず弁護士に依頼しましょう。