調停制度は、誰のためにあるのでしょう。
(2013/05/10)>> 一覧に戻る
平成20年3月までの8年間、東京簡易裁判所の民事調停委員を務めました。
調停をしきるタイプだった私は、今振り返ると、ずいぶんと余計なお世話をし、また、当事者の心情に思い至らず、積極的な進め方をしてきたのだと反省いたします。
繰り返し申し上げるとおり、調停は、紛争を解決するひとつの『場』であり、これを利用する当事者に、運営は、任されているものです。
ところで、調停委員を退任して、当事者の代理人の立場で調停に臨むとき、調停委員会は頼りない,逃げている等々と感じることがあることを、否定することはできません。
当事者が、調停手続を選択するのは、離婚等のいわゆる調停前置が義務つけられているケースはもとより、裁判,すなわち、判決を得ることで、本当の問題は解決しない事案であることが多いです。
たとえば、婚姻外男女関係を解消したいのに、相手が応じず、脅迫的言辞を吐いてつきまとう,また、名誉を害する言動をしたというケースでは、損害賠償請求の民事訴訟を提起すればよいのでしょうか。
それは否ですね。
当事者の希望は、二度とつきまとってほしくない,将来にわたって、安心・安全を確保したいことにあると思われます。
これを実現する『場』として、家事もしくは民事の調停が利用されます。
調停であれば、単にお金の問題とするのではなく、なぜそのような行動を執るのか、当事者の心の部分にも目を向けて、調整が進められ、また、調停の効果としても、接触禁止や秘密保持等を、当事者が約束することが可能となるでしょう。
しかし、せっかく調停を申立てしたのに、指導力・調整力が伴なっていないと感じる調停委員会に当たることも、ないではありません。
調停は話し合いの場,調停委員は、話を伝えるのが仕事だとして、調停相手方の主張・要求を吟味せず、意見もなく、ただ伝えるだけの調停委員がおります。
調停といえども、裁判所です。明らかに不合理,法律上成り立ち得ないような主張・要求がなされた場合、介入し、是正する,つまり、説得するのが、調停委員会の仕事です。
当事者は、この『場』を利用することが、自己の悩み,心配事,そして、奪われた権利を回復する最もふさわしいのだと判断して、調停に来ているはずです。
それなのに、単に調停委員は、調停相手方の言うことを伝えるだけで、決めるのは当事者,調停は、白黒決める場所ではないなどと言って、調整する意思がなければ、それは、調停とはいえません。
調停は、国民・市民のために存在します。
ですから、調停委員が、調停をしきってはなりませんし、また、調整しようと乗り出さないことも、正しい姿ではありません。
調停委員には、このあたりのバランスが求められます。
そのバランスは、調停当事者となった利用者の目線で求められるものです。
調停の主人公は、当事者です。
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そして、常々申しますとおり、調停は、必ず弁護士に依頼して行ないましょう。