面接交渉に躊躇される方へ――お願いを込めて
(2013/10/26)>> 一覧に戻る
きさらぎ法律事務所のホームページ内『離婚・男女問題』は、これを多く担当する弁護士の実感を述べたものです。
決してアカデミックではありません。これまで折に触れて申しますとおり、離婚・男女問題には、教科書,判例はないと思っております。
ひとりひとりの生の事実があります。
さて、今回は、『面接交渉』について感じるところを記します。
面接交渉(交流)とは、離婚や別居により、未成年者を監護していない親(多くは父)が、子を監護する親(多くは母)に対し、自分の子と「会うこと」を主とした接触,交流を持つことを意味します。
面接交渉の重要性は、最近至るところで論じられるようになり、家庭裁判所の離婚調停申立書にも、親権者の指定,養育費の取り決め(希望)とともに、離婚を求める方に、子の面接に関する考え方を記入していただく書式が用意されております。
面接交流の必要性,根拠等は省略します。
実際、離婚そのものよりも、これを担当する弁護士として難儀するのが、面接交渉です。
そして、調停等で、一定の取り決めがなされても、これが現に履行されていないことが実に多いのです。
なぜなのか。
簡単に言ってしまえば、もともと信頼関係がない者同士が、子を鎹にして、うまくやりとりすることは難しいからでしょう。
絶対に会わせたくない!と言い切る元妻(母)の声をよく耳にします。
そんなとき、裁判所の実務がどうだとか、子の福祉のため必要だとか、説得(説教?)しても、心を開いていただくことは困難です。
特に、元夫(父)の暴力により、離婚に至ったケース等では、ひどいトラウマに至っているのは当然でしょう。
離婚した途端に、子どもに会わせろ,会わせる必要があると言われても、とうてい素直にはなれないと思います。
未成年の子を持つ母(妻)が、離婚後親権者として監護したい場合(ほとんどそうでしょう)、離婚成立前にも、相手方となる父(夫)に対し、子の様子を知らせるよう示唆します。写真を撮影して送るとか、幼稚園の行事や、昔でいう小学校の通信表等、成長をしるした資料を送ります。
これを、間接面接ということがあります。
そうすると、直ちに会わせろとは言いにくいものです。
少しずつ母(妻)側も、心の準備ができていきます。
それと、大切なことは、離婚によってリスタートする、相手(父)も変れるのだ,きっと遠くから、養育費を支払うかたちで、子どもに対して、愛情と責任をもってくれているのだと思うことです。
もっとはっきり言えば、母(元妻)は、心の中では、父(元夫)に対するわだかまりは消えない,彼は変わっていないと思えても、彼も変れるのだと思うよう、決めることが必要だと思っています。
数年前、頑なに面接交渉を拒む母(妻)に対し、担当した年配の女性裁判官が、とてもよいことを言われました。
父親との接点を持たないまま子どもが成長したとき、もし、母親であるあなたが、病床に伏すなど、充分監護できない状態になったとき,あるいは、子ども自身が、母親にはどうしても相談できない事情を抱えたとき、子どもが、父を頼りにできないことを、きっとあなたは、ご自分を責めるでしょう。
そんなつらい思いをさせたくないと、語りかけられたのです。
人間は変れる,離婚時の気持ちから、少し脱皮する努力が必要です。
それが、愛する子どもに対する責任なのかもしれません。
何をどうするか、一緒に考えていきましょう