業務 離婚・男女問題

婚姻関係破綻の抗弁と不貞慰謝料について

(2018/05/19)

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男女に関する案件を担当させていただいて、私は「年中行事」と呼ぶ現実を目にします。いくつかあるのですが、その1つは、「婚姻関係破綻の抗弁」といわれるものがあります。

 

 これは、配偶者(夫または妻)がいる人と(いる人が)性的関係を持ったが、そのときは、既にその人と、その配偶者との婚姻関係は、修復が不可能なほど破綻していたから、その人には貞操保持義務はない。従って「不貞行為」にはならないから、例え配偶者がいる人と(いる人)が性的関係を持っても、その人の配偶者(夫または妻)に対して不貞行為に基づく損害賠償義務はない、というものであります。

 

 まず、私のところにいらっしゃる方は、圧倒的に配偶者(ほとんど妻)がいる人と性的関係を持って、その配偶者から損害賠償請求を受けた立場にあることが多いです。

 

 なぜ損害賠償請求を受けるまで、その関係を継続したのでしょうか。バレなければ良いと思ったならば格別、しばしば言われるのはそのパートナーとなった方(ほとんどが夫)から、配偶者(ほとんどが妻)とはうまくいってない、いずれ離婚する、あるいはもう夫婦ではない、関係は破綻していると言われて関係を持ったと言われます。

 

 もう関係してしまったことは仕方ありません。ただし、いかなる理由・事情があっても、婚姻中の人が性的関係を持ったらアウトと考えなければなりません。これが肝です。

 

 それと私は、このような相談を受けた方の立場であっても、パートナーとなった方が、その配偶者との婚姻関係が破綻していたとは抗弁させません。

 それはあなたが言うことではない、パートナーが言うべきことです。

 

その手続については、別のところに書きました。

 

 裁判所の実務でも、例えば長期別居していた後に関係を持ったようなケース、あるいは最初から最後まで、そのパートナーに配偶者がいるとは思えなかったケース(要するに騙されていたケース)のようなごくまれな場合以外は、容易に婚姻関係破綻の抗弁は認めません。

 

 端的に言えば、現に婚姻中であれば、仮に関係を持ったパートナーが、既に破綻していると判断していたとしても、その配偶者が離婚にNOである限り、破綻は容易に認められない。

 つまり、離婚できない、まして離婚を拒否されている人と関係したら(そういう人が関係したら)貞操保持義務は消滅しておらず、不貞行為となるということです。

 

 さて、不貞行為の慰謝料ですが、まず裁判所では「1本」と言われます。即ちどんなケースであっても、賠償義務がある以上、100万円を切ることはないと考えてください。このあたりはネットでも、実にいい加減な例が紹介されていますが、信じてはダメです。

 

 もちろん実際の裁判で、100万円未満になったケースはいくつも私は経験しています。だからと言って、本来はやはり「1本」が正しかったと思っています。もちろん上限はありません。ただし、ここ10年くらい200万円超になったことは1回限りです。

 

つまり、100万円~200万円の間に収まることが多いのです。ですから、婚姻関係がほとんど破綻していると思われている、そう言いたいときでもやはり、「そのあたり」になるということです。

 

むしろ大切なことは、金を払えばおしまいということではない。

 

どうしてこういうことになったのか、不貞関係となったその人とはどうするのか、どうなるのか、またあなたが配偶者ある身でそうなったとするなら、その配偶者(だいたいは妻)との関係は、どうなるのかが大切です。

 

つまり、登場する関係者(たいてい3人)それぞれ、この―件の後どうなるのか、あなたは何をしたいのかを考えて、解決しなければならないということです。

 

これも繰り返しになりますが、離婚したくないと言っておきながら、配偶者(たいていは夫)の不貞行為で、その相手方に対する慰謝料請求をすることは、ほとんど私は勧めません。この理由も別のところに書きました。当該箇所もぜひご覧いただければと思います。