業務 離婚・男女問題

有責配偶者からの離婚請求と別居期間との関連性につて

(2021/12/27)

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先日、「何年別居したら離婚できるか」のテーマについて書きました。

 その際、離婚の請求が信義に反するような、いわゆる有責配偶者は別としてと申しました。別居期間の長短が、ストレートに離婚の成否に関わることはありません。

 

ただし、未だ家庭裁判所の実務では、有責配偶者からの離婚請求では、パートナーが離婚を拒絶する場合は、離婚を容認するのに慎重な面があります。正確に言えば、「要件」があり、ハードルを設けます。

 

何をもって、有責配偶者と決定されるかは、そのこと自体が大いに争われることもあって、一律に、教科書的には明示しにくいところです。

 ですから、裁判実務で出てくるのは、法文上これがあれば離婚原因とされる不貞行為が、ほとんどの感があります。不貞行為とは世に言う不倫、配偶者がある人が、配偶者以外の異性と性的関係を持つことです。

 

不貞行為があっても、それが一時的なもので、その異性とはその後一切関りがないケースや、既に損害賠償請求訴訟等により、相応な金員の支払いを配偶者に対して履行したケースなどは、不貞行為があったことそのもので、離婚が認容されないことはないとお考えください。従って、このようなケースで不貞行為があった人が、別居を継続している場合は、他の事情も相まって、相当程度婚姻関係が破綻に近づいていると評価されます。

 

しかし、不貞行為による有責配偶者として離婚を求める人の多くは、特に私に依頼される方は――その「不貞行為」のパートナーと同居していたり、交際が継続している例があります。確かに、信義に反する理不尽な要求と言えなくもないとは思います。ただはっきりしていることは、もはや婚姻同居生活には戻らないということがあります。

 この場合、ならば何年別居したら離婚になりますか?と尋ねられます。

 

これに対しては、ハードルは高いが年数の決まりはないとお答えします。要は、客観的に婚姻関係は破綻していて、婚姻を継続し難い重大な事由があるのに、信義に反するゆえに、その権利・主張ができない状態です。反対に言えば、その主張が信義に反しない状況に至ればよいということです。

 

私は、いつも相手方パートナーに対する手篤い保護と申します。生活の不安等を払拭し、感謝するに――不貞とは別の――金員の支払いなどが必要です。また、婚姻関係の形骸化の要件として、別居期間を考慮する例もありますが、それは一見して明白な形骸化だからであって、他に形骸化の要因が存在すれば、別居期間に替わり、あるいはこれに補完する事情とみなすことができます。

 

例えば、徹底した非難や攻撃をされたとか、行為者やその相手となった人に対する社会的評価の低下とかあり得ます。

 

更に重要なのは、当事者間に子がいるか、その子が何歳かの点があります。

一般的に、この年齢が低いほどハードルが高いです。と言うよりも、現実の実務は、この年齢と未成熟性がかなり考慮されていると感じます。これは、子は不貞行為をした親に対して、慰謝料請求などできないとされるところと、均衡を取っているように感じられるところです。

 

未成熟子とは、社会に巣立っていない子を意味し、必ずしも未成年かどうかには関わりません。大学生は、未成熟子に分類されます。この場合、確かに別居期間や子に対して学費を払ったかなど、どのように対応してきたかは影響します。

 

反対に言えば、わかりやすく言えば、子がいない、成人して独立しているケースは、かなりハードルが低くなる例です。

 いずれにしても、真に離婚を希望している人が、離婚できないことはおかしいのです。離婚を強いられる側に対する配慮、手篤い保護は、単に「離婚を認容しない」ことで達成されるべきではないこと、裁判所の実務も、そのような方向に進んでいることを理解する必要があります。

 

どのような事情であっても、離婚したい人は、行動を起こすべきです。

 

何もしなければ、幸せはありませんから。