業務 民事調停委員・司法委員の経験から

司法委員を介在させる裁判官の真意とは?

(2012/11/17)

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簡易裁判所における民事事件では、和解の試みを補助したり、訴訟の審理に立ち会って、意見を述べる者として、司法委員がおります。

 これは、一般の社会人の助言等を得ることによって、良識や専門知識を、裁判に反映させることを目的とする制度ですが、現実には、裁判官を補助するのではなく、訴訟当事者が、この裁判手続の中で、紛争に終止符を打つことができるようサポートすることが、司法委員に課せられた職責となっていると思います。

 簡易裁判所に係属する民事事件のうち、司法委員に関与させる案件を決めるのは、担当裁判官です。裁判官は、司法委員が手続に関与することにより、解決できると見込まれた案件を選んで、配転いたします。

 たとえば、原告が、被告に対しお金を貸したが、その返済がないという事案を考えてみましょう。

 返済の約束をして、実際にお金を渡し、そしてその期限が到来したのだとすると、お金を借りた被告が、たとえばもう支払ったなどの、弁済をしなくてもよい事実を主張しない限り、原告の請求は認められます。

 もし、被告が支払いをしない理由が、支払いができない,つまり、お金がないから支払えない場合ならば、いかに裁判所が、支払いをしなさいと判決しても、事実上支払いをすることは不可能でしょう。

 その場合、被告には、財産収入がなくて、本当に支払いをしたくてもできないこともあれば、今まとめて支払うのは無理だが、毎月給与の中から、分割して支払うことなら、数年後完済可能ということもありえます。

 どのような方法で、どうしたら支払えるのか、司法委員が、当事者の間に入って、調整することがあるのです。

 裁判官が、判決をしても、実際は、問題は解決しない,つまり、今の例では、原告が、判決をもらった途端に、お金が入るものではない場合に、司法委員に補助させるわけです。

 もし、簡易裁判所に係属する民事事件の当事者になった場合、裁判官が、「司法委員に入ってもらいます」と言ったならば、裁判官は、当事者にとって、これは解決できる案件だと見込んでいるとお考えください。

 司法委員の前では、尋ねられたことはそのままお答えし、わからないこと,不安なところは、遠慮なくお尋ねになるとよいでしょう。解決できるはずです。