事例 破産・債務整理 事例 不動産の問題

私はA県出身ですが、10代のとき上京して以来郷里とはほとんど疎遠で、既に父母は亡くなりました。私には弟と妹がいて、弟は父母と一緒に暮らし、妹も上京して、今回結婚することが決まりました。  実は、父は生前A県に所在する宅地・田畑・建物等不動産一切を、私・弟・妹の3名共同の共有登記をしていたそうです。  ところで最近妹が弟に対し、共有問題を解消したい、お金をいただきたいと申し出たとのことです。  弟は困惑しておりますが、私もそれぞれの生活があるから、ずっと共有のままはどうかな?とは思っております。何かよい方法はありますか。

(2018/09/03)

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 共有関係を解消するのは、共有物分割請求という手続になります。

 

何らかの理由・事情で、共有関係が生じることはあります。典型的なのは、親から相続した不動産を法定相続分に応じて、各共有持分登記をしている場合でしょう。この場合でも「遺産分割」ではなく「共有物分割」となり、家裁と地裁など、手続が異なるのです。

 

本件では複数の不動産について、それぞれ持分3分の1の登記がなされていると仮定します。

まず共有関係の解消は、いつでもできます。共有者に共有関係の解消を申し入れ、「分割」の協議を行ないます。ここで合意が成立すればよいのです。例えば1人の共有者が、他の共有者の持分を買取るような解決がこれです。協議が整わないときは、「共有物分割請求訴訟」を地方裁判所に提起します(民法256条ないし258条)。

共有物の分け方として、原則は現物分割です。たとえば、共有持分に応じて土地を分筆して、各自の単独所有とする例です。

しかし、現実には困難となるケースが多い。1棟の建物が共有状態にある場合を考えればわかりますね。

次に価額弁償というやり方があります。先に例示したように、持分を譲渡してお金を受取るやり方です。これによれば、持分を失う人には代金が入り、共有物を使う必要がある人は、単独所有が可能となります。

 

多くの場合、この価額弁償が現実的とされますが、譲渡代金額とその調達等で合意が成立しないことは少なくありません。

 民法の規定では、どうしても分割協議が成立せず、上に挙げたような解決が困難な場合は、裁判所が共有物の競売を命ずるとの判決をするのです。具体的には、当該物件を競売に付し、競売代金の中から手続費用を控除した金額を、各持分に応じて分配して取得するということです。

これによると、不動産そのものが無くなり、各自競売代金を取得することになります。なお判決は、『競売に付する』と書いてあるだけで、現に競売手続が開始されるわけではありません。判決確定後、共有者のいずれかが強制執行を管轄する裁判所に競売の申立てをする必要があります。そして現に競落しなければお金は入らず、『分割』の結果は得られません。

 この共有物分割請求訴訟は弁護士泣かせであり、また、『禁じ手』でもあるのです。たとえば本件で、A県の弟は、生活,生計の本拠である不動産を失うことになります。また、現に買い手がつかない限り誰にもお金は入らず、解決にはなりません。競売とならないよう、つまり、最終局面に行かない段階で、折り合いをつける決断をすることが肝要です。

 いずれにしても、弁護士が入らなければ解決できない案件といえるのです。