「車の修理代を請求できるか」のご質問については、「請求できる」が結論です。
「車体のドア部分を傷つけられた」とのことですから、相手方(自転車運転手)の過失によって引き起こされた物損、つまり、修理代の発生という損害の賠償責任が認められます。
ただ、ご質問者の心配事は、加害者と思っていた自転車運転手の『父親』から、反対に、損害賠償を求められたことにあるのでしょう。車の修理代を踏み倒すための言掛かりの可能性もありますので、次の点を確認しましょう。
まず、本当に本件事故によって、自転車運転手が怪我をして治療を受けたのだとすると、その治療費の支払いをどうしたのでしょう。
交通事故による治療の場合、保険証は使えず、原則は自費となります。交通事故による受傷が明白なケースでは、病院側も、これを前提に事務処理をし、事実上、保険会社が支払います。
本件では、事故当時、人身事故の認識が双方になかったのですから、後になって「痛い」と感じたのであれば、少なくとも治療にあたり、自転車運転手は、交通事故であることを申告するはずです。
要するに、『父親』が、真実本件交通事故による傷害と考えているのか、このことによって判断されます。
また、ご質問者の事故直後の対応には問題があります。
人身事故との認識がなかったとしても、道路上の交通事故は、たとえ物損であっても、これを警察署に届出する義務があります(道路交通法72条1項)。
事故で負傷した人を、そのまま放置して立ち去る行為は、いわゆる「ひき逃げ」として、懲役5年以下の重罰となる(法117条)ことはよく知られていますが、実は、事故自体を報告しなければ、1年以下の懲役もしくは、10万円以下の罰金に処せられるのです。
物損事故の場合、「その場で示談を」という話が出ますが、これは絶対にやってはいけません。
事故である以上、警察署に報告し、事故証明が発行される前提を作っておくべきです。むしろ、どんな小さな事故であっても、ひとたび警察の目が入っていれば、後日相手方からおかしなことは言われないだろうとの担保となるでしょう。
そして本件については、遅くなったとはいえ、相手方の父親からどのように言われたという点を含め、警察署に届出をしてください。